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スライム事情



 地狐を思いっきり抱き締めてよしよしした優信としては、不甲斐無いの一言に尽きた。


 ……最年長であり先生でもあるの僕なんだよ!忘れてるかもしれないけど!


 こういう時率先するのは自分だろうに申し訳ない。

 しかし、そう言ったら、


「いいえ、そっちの方が良くないわ。それをすると最年長がやるという事になり、最悪押し付けになってしまうもの。指示を出した僕が代表で仕留めるのが一番良い。これなら僕は指示に徹する事になったとしても、命の重みを忘れずに済む。勿論、見ていた皆にとっての命の重みも、これでしっかり刻まれたでしょう?」


 と返された。

 流石成績優秀者という感じだが、成績優秀者にしたって色々悟り過ぎじゃないだろうか。

 悟り世代とはよく言ったものだ。


 ……でも本当僕って不甲斐無いなあ。


 指示出しも下手に口出しする方がマイナスになるかもしれないと地狐に任せっきりであり、能力も通信だから戦闘力皆無。

 勿論適材適所があるのだし、年長だの何だの関係無く足手纏いが前に出たら邪魔でしかないのはわかっているが、それはそれとしてこの不甲斐なさはどうしたものか。


「心声が思うに、ショージキ言って色々こっちの世界の事学び終わったらそれぞれ分類別に組み分けされて別々でシェアハウス状態になるだろうから、連絡を取る事が出来る優信の能力はサイコーに有益だと思うよん」

「うわっ、心声!?」


 振り返れば、背伸びしてこちらの耳元に囁いていた心声はにししと笑う。


「今は心読めちゃってるから、そんな気にしなくても良いってわかってるんだよね、心声。皆真面目に今の現実と向き合ってるだけだから、そして出来る事を最大限やり遂げようとしてるだけだから、優信は優信のやれる事をやれば良いんじゃないかな、ってね」

「……それで良いと思う?」

「心声としては積極的に前に立ってくれるのとか助かってるよん。絆愛も前には出てくれるけど、絆愛の場合は敵対心も警戒心もゼロだから安心は出来ないしねん」


 それは確かに。


「でも、どうしても不甲斐無いーって心配なら、その絆愛に相談したら?絆愛なら全てを聞いた上で愛を囁いてくれるから多少の悩みなんて甘い言葉に上書きされると思うし」

「それは最終手段」

「最終手段にはあるんだ」


 あはは、と心声が笑った。


「ん、何の話だ?」

「楽しい話でもしてたんですか?」


 笑い声に反応し、掃潔と不崩が振り向いた。

 他の皆はまだ猛毒オオカミの解体に疲れて座り込んでいる。


 ……うん、まあ、解体作業って結構重労働だったもんね……。


 獣生が服に血がつかないよう因果を狂わせてくれたから良かったが、そうじゃなかったら血塗れで大変な事になっていたところだ。

 赤白セーラーワンピや学ランならまだしも、白シャツネクタイの自分は完全に殺人鬼ビジュアルになってしまう。


 ……顔がどっちかというと穏和寄りの顔立ちって自覚がある分、サイコパス感ヤバそうな仕上がりになるだろうなあ……。


 本当に回避出来て良かったが、それはそれ。

 猛毒オオカミを、仲間に噛まれていた一匹を除いた六匹分慣れない手で交代交代しながら解体した為、めちゃくちゃ疲れた。

 これは恐らく魔王の呪いによる疲労度倍増デバフのせいもあるのだろう。


「楽しい話はしていないかな」

「優信が、何も出来なくて不甲斐無いなーって落ち込んでたって話だよん」


 ……言っちゃうのかー。


 まあクラスの皆が相手なら隠し事など無いようなものなので、別に良いが。


「……優信」

「ちょっと良いですか?」

「え、あ、うん?」


 何故か真顔の二人に距離を詰められた。

 肩を掴まれて顔を覗き込まれているが、この距離油断すると顔のパーツが接触しそうで心配になる。

 先生生徒だの以前に家族感が強い為あわわわ感は無いが、外だと思うと外野に色々言われるんじゃないかという懸念が背を這うのだ。


 ……そういう色気が無いの、見ててわかんないのかなあ。


 まあ異世界だから気にしなくても良いかと思っていると、まず掃潔が口を開いた。


「俺は確かに解体の時、変な病気を持っていないかという確認をし、病持ちの猛毒オオカミの病を治して食べても問題無い肉にした」

「ああうん、とても助かったよ。流石に病気の肉は食べられないからね。美味しい不味い以前の問題として」


 潔癖症のケがある掃潔だと思うと、猛毒オオカミの死体の病を治すというのは大変だっただろう。

 クラスの誰かがそばに居れば精神的に安定する為問題無いという心因性のものだが、それでも近付くのは厳しかったはずだ。


「だが正直戦闘面ではクソ程役に立たん」


 掃潔は眉間にシワを寄せてそう言う。


「仮に病にさせるにしろ、即死させる級の高熱は不可能。病人を治すならともかく、戦闘面では戦闘終了後、肉を回収する際に食える肉にするくらいしか出来ない」

「私なんてもっと酷いですよ」


 今度は不崩が不満げな顔で言った。


「金を出すとかどうしろって言うんですか。金の剣を出すにしたって金だから曲がりやすいだろうし、そもそも重さを考えると戦闘とか無理ですよ。塊を出してぶん投げる以外出来ませんし。そもそも他にも使えるタイミングありませんし!」

「痛い痛い痛い不崩指!肩に指が食い込んでるよ!」

「通信能力良いじゃないですか日常使用可能で!全力で頼りますから全員分のチャット画面表示したらその日終了ってならないよう、何度でも表示出来るくらいに練り上げてください!」

「わかった!勝手に不甲斐なさ感じて落ち込んでてごめん!適材適所だねこういうのは!通信能力頑張ります!」

「「よし!」」

「あはははは」


 色々キッカケを作った心声が楽しそうに笑ってるのはどうなのかとも思うが、解決してくれたのも心声なので良いと思おう。

 多分これも読まれている気がするし。





 心声は優信の内心を聞きつつ思う。


 ……心が読めるからこそ、問題はソッコで解決するに限るよね!


 もだもだ悩まれているとその声がめちゃくちゃ聞こえてしまいこっちの気まで滅入ってしまう為、聞こえるという利点を活かしてこれからは迅速に悩みを解決していこうと思う。

 いざとなったら絆愛を投入すれば良い。


 ……絆愛の口説き、甘すぎて記憶が上書きされるかんね。


 再び同じ内容で思い悩もうとするとそれに関しての口説かれた記憶もフラッシュバックする為、とりあえず絆愛に頼めば一番早いんじゃないだろうか。





 少しの休憩で多少回復した為、絆愛達は再び歩き始めた。

 解体した猛毒オオカミの毛皮や肉、そして武器の材料になる牙や爪などは群光が出す群の兵に頼んで王城へと輸送してもらった。

 衛琉によって防腐処理を施したので問題は無いだろう。


 ……腐らせたり、腐りを取り除いたり出来るからこそ、防腐処理も出来るとは……。


 やはり素晴らしい能力だと思う。

 自分の能力はブナ王に素晴らしいと言われた為、そこを疑いはしないが、しかしそれはそれとして戦闘力の皆無さが気になるところだ。

 こういう時に役立てないのが歯痒いが、歯痒い気持ちをしているのは自分だけでは無いので良いと思おう。

 ある種お揃いのような感じもするし。


「ん」


 戦闘を歩いていた騎士イチョウが立ち止まる。


「スライムが居るが、どうする?」

「振り向いたその立ち姿もまた私の胸をときめかせるものがあるが、どうする、とは?」

「待った」


 普通に返事をしただけのはずが何故か手の平を向けられ顔を背けられた。





 イチョウとしてはとんでもない不意打ちだった。


 ……息をするように好意を向けるな!


 息をするように悪意を向けられるならばこの生涯でほぼずっとされてきていたので慣れ切っているが、こういう純度の高い好意というのは、どうにも難しい。

 ダイレクトに胸の奥へと温かみとして伝わってくるのがより反応に困る。

 下心が一切無いとはわかっているが、老体の心拍数を上げないで欲しいものだ。





 深呼吸した騎士イチョウが再びこちらを向いたのを絆愛は見た。


「よし、もう大丈夫だ」

「そうか」


 よくわからんが大丈夫なら良い事だ。


「それで、どうするというのは?」

「……いや、通販の勇者が「最初はスライムから行くもんなんじゃないの!?」と叫んでいたのを思い出してな」


 確かに最初のモンスターといえばスライムというイメージだが、


「わざわざ最初に猛毒オオカミを持ってきて、少し歩いた距離に出るだろうスライムよりもそちらを優先した理由があるんじゃないか?」

「そう思うか、愛の勇者」

「いいや?ただ私が勝手に、あなたは理由ありきでそういった選択をしたんじゃないかと思っただけだ」

「待ってくれ」


 またストップが掛けられた。


「……絆愛、一旦、一旦ね?一旦で良いからちょっとこっち」

「どうした天恵」

「連発は厳しいから一旦下がろう」

「時平?」


 何故下げられるのかよくわからないが、とりあえず下がる。

 そうすると、再無が後ろから圧し掛かるようにして抱き締めて来た。

 騎士イチョウが居るからか、再無は絆愛の耳元で囁く。


「…………絆愛……口説くの……駄目……」

「何故!?」


 ……口説き却下は解禁されたと思っていたのに!


「いや~、普通に却下だと思いますよ?」

「ああ。貴様の口説きは正直言って攻撃力があり過ぎるのだ。私達ならば慣れているから復活もまだ早いが、慣れていない騎士イチョウでは連発など耐えられまい」

「私も同意見だな」


 頬を掻いて苦笑する情陶と腕を組みながら呆れた表情の体刀に、困ったように眉を下げている宝がこちらの肩をポンと叩いて続く。


「……老体の心拍数は大事にしてやれ」

「どういう意味だ、宝」

「いや、まあ、お前が素でそれをやっているのはわかるが、彼らは慣れていないのもあってダメージが大きいんだ。慣れた私達ですら復活が早いだけで耐えられてはいないわけだし」

「よくわからん」

「口説くな、という事だよ」

「何故…………」


 優信の言葉にこちらは遠くを見るしか出来ない。


 ……というか正直、私、今口説いた覚えは無いんだが……。


 無意識とかそういうのでもなく、口説いたつもりのない言葉だったのだが、アウト枠だったんだろうか。


「ナチュラルにあの言葉のチョイスが出るのが凄いよねん、絆愛って」

「そう褒めるな、心声」

「確かに褒めてはいるけど自重してねー」


 心声に笑みでそう返され、首を傾げる。そこまでの事なのかようわからん。


「……よし、よし、よし……問題ない!」


 そう思っていたら騎士イチョウが復活した。

 咳払いした騎士イチョウは、確かに、と口を開く。


「確かに理由ありきで猛毒オオカミを最初に持ってきた」

「やはりか」

「きー、ずー、な」

「むぐっ」

「ちょっとお口チャックタイムだよ。有限だから味わって食べてね?」


 な、の時に従人によって口の中に飴を突っ込まれた。

 これは前に美味しいと言った飴の味。


 ……覚えて居た、というよりは記録していたんだろうな。


 少しでも好きになった相手の情報を片っ端から手に入れようとする従人なので不思議ではない。

 ではないが、物資などが足りていない現状では飴も大事な食糧だろうに、手持ちにあるからとくれたのか。


 ……うん、味わおう。


 従人が持っている分しかこの世に無い飴なのだし。





 宝は優信が前に出たのを見た。


「僕としては生徒を預かる身として、初手であの狂犬病を疑うようなビジュアルの猛毒オオカミをあてがわれたのが結構不満だったわけだけど……理由は何かな?」

「スライムは体内にある核を砕かない限り不死身だからだ」

「あっ、そっちのスライムか!」


 口舌がピンときたように指を弾く。


「そっちのって?」

「有名ゲームでスライムイコール弱モンスターのイメージが定着してるけど、スライムは強いんだよ、飛天。具体的には物理無効。スライムだからね」

「スライムだからってどういう意味だよ」

「獣生には水を切っても意味が無い、って言えばわかるかな?モーゼの海割りが有名なのは、それが普通は不可能だから。水は切ってもすぐに戻る。スライムもまた存在としては粘度のある水だからこそ、物理は無効なんだ」

「ついでに言うとぬるい魔法だと吸収し逆に強化される事になる」


 そう言う騎士イチョウの目は死んでいた。

 多分昔そういう事が起きて面倒な事になったのだろう。


「勝利方法は丸焼きにする、あるいは雷撃を全体に染み渡らせるなど、核に致命傷を与えられる攻撃をする事だ。これは物理でも可能で、核は塊になっている為斬撃なども効く」

「なら問題は無いんじゃないの?」

「そう言う耳の勇者の気持ちはわからんでもないが……スライムの体は不透明であり、核の位置がわかりにくいんだ。あと生きているスライムの体は全てが消化液に近い為、初心者が近距離戦闘をするには向いていない」

「……核、ね」


 地狐が呟いてこちらを見たので、一度スライムを見て、確認してから挙手をする。


「どうした、見の勇者」

「えーと……核、目視出来るぞ」

「は」

「目視出来る」


 騎士イチョウは一瞬驚愕に目を見開いたが、すぐに納得した表情で頷いた。


「……そういえば見の勇者なのだからそれは当然か……」

「ならば倒せる、という事か?」

「いや」

「あー、成る程ねん」


 掃潔の言葉に首を横に振った騎士イチョウを見て、心声が笑う。


「旨味が無いんだ」

「その通り」

「旨味?」

「スライムには食う箇所が無い」


 体刀の言葉に、騎士イチョウはそう返した。


「核を潰して倒せばゼリー状になるのだが、材料を適当に引っ掴んで鍋に入れて黒焦げになるまで煮た物に水をぶち込んで三日程放置したみたいな味であり、栄養も無い為食うには適さん」

「食べたのかい?」


 驚く優信に頷きが返される。


「二日ぶりの食糧に見えた飢えた人間からしても無理な味だった。腹も満たされんし」


 ……凄く遠い目だが、そこまでの味なのか……。


 それは確かに文字通り旨味が無い。


「何よりスライムは基本的にそこらをうろついているだけであり、放置していても害は無いんだ。積極的に人を食おうともしない。攻撃すれば迎撃してくるし大量発生すると厄介だが、普段はその辺りの死骸を食べて生きている」

「……つまり、自然界の掃除屋でもあるのね」

「ああ」


 地狐の言葉に頷きが返された。


 ……ダイオウグソクムシみたいな事だろうか。


 死骸を食べる掃除屋というのは、どこにでも居るらしい。


「あれ。て事はスライムは倒さない方が良い魔物?」

「過剰に増殖した際は仕留めるが、基本的には放置だ。魔物を仕留める、あるいは人間が仕留められた際に飛び散った血などが病などの発生源になる事を思うと、スライムが減るのはまずい」

「成る程」


 答えに納得した時平はうんうんと頷いた。

 宝としてもそれには納得だ。


 ……犬穴が出した穴ワープで仲間に噛み付かれてた猛毒オオカミが居たが、その猛毒オオカミはそのまま放置になった。


 せめて土葬でもした方が良いのかと聞いたが、騎士イチョウには土葬しない方が良いと言われた。

 それはこういう事か。


 ……スライムが食べて消化するから、土葬する方が逆に土ガードが発生してスライムに処理をしてもらえなくなってしまう。


 寧ろその辺に放置しておけばスライムが処理してくれて綺麗になる為、そのままの方が良い、と。


「……ですが、どうしましょうか。近くに魔物は居ないように見えますし……宝は見えますか?」

「結構歩いた位置になら見えるが、それをやると確実に日暮れまでに町へ帰れない。流石にトリップ二日目で野宿は無理だ。移動可能範囲内にはスライムしか居ないぞ、憶水」

「なら、僕達はこの辺りで町に戻るべきかしらね」

「地面の勇者に賛成しよう。日暮れまで外に居ても良い事は無い」


 騎士イチョウがそう断言する。


「夜になるとゴースト系の魔物も出て来るし、何より闇夜に紛れる魔物も賊も活動し始める時間帯だからな」

「ゴースト!?」

「ああ。聖水で足止めが可能という程度だから対峙して良い事は無い。疲労が溜まりやすい時間でもあるからこそ、日暮れ後の外はただの鬼門だ」

「帰る!帰るわよ!ソッコで帰る!幽霊系とか絶対に嫌!」


 霊感がある故に幽霊系が完全に駄目な幽良は涙目でそう叫んだ。





 幽良は幽霊系が見える。

 見えるし聞こえるし話せもするが、それだけで触ったり祓ったりなぞ出来やしない。

 昔は見えるとわかればその辺の幽霊達に寄って来られて成仏させて欲しいと言われて泣き叫んだが、今は見ない振りを徹底する事でどうにかやり過ごす事に成功している。


 ……そりゃ、話を根気良く聞いていれば満足して成仏してくれるのも居るけど……。


 恨み辛み系は勝手に逆ギレしてきて怖いし、地縛霊系はただの地雷でしかない。

 お迎えを待たずにふらふらして浮遊霊になっている幽霊はあの世への扉が開きさえすれば逝けるが、地縛霊系はその場所に縛られているせいで動けず、成仏も出来ない為、他人を殺す事でそのお迎えに便乗しようとするのだ。


 ……本当、怖いったら。


 自殺者などは地縛霊になる典型である。

 自殺者が出た部屋に首を吊った影が云々というのは、その場所でずっと首を吊り続ける事になった地縛霊が居るからだ。

 本人の場合もあれば、取り憑いて首を吊る原因になった地縛霊だったりする場合もある。

 自殺による地縛霊などは殆ど死因を繰り返してその苦しみを延々リピートするという状態に陥っている

為精神的に大分ダメージが入っており、マジで話が通じない。

 なのに救いを求めて他者を手に掛けて、けれどそれは結果的に自殺に追い込んでいる為、結局お迎えが来ないのだ。


 ……で、その場所が自殺の名所になるっていう悪循環。


 見える側としては本当に止めて欲しいヤツだ。

 あと成仏させてくれとよく言われるが、見えるから成仏させれるとは限らない。

 お寺などでお祓いをする人もよく居るが、見える側からすると払ってもまた来るんだけどなあ、という感じだから高値を払って駆け込む気も無いし。


 ……掃除してもまた埃が積もるようなもんよね。


 もしくは座椅子を占領する猫を退けてもちょっと目を逸らした瞬間に再び座椅子を占領する猫のような、ああいう感じのいたちごっこ。

 要するに幽良からすると幽霊系はマジで無理、という事だ。

 迷惑を掛けられた事しか無く、向こうは善意であっても成仏していない幽霊は基本的にマイナス寄りなのかそばに居るだけで具合が悪くなる。なので守護霊気取りの未成仏霊はタチが悪い。


 ……というかファンタジー世界なのにゴーストが居るとかどういう事よ!


 ファンタジー世界なので居ても不思議では無いが、それはそれ。

 寧ろファンタジー世界であるならもうちょっと決定打を持っていて欲しい。

 十字架でぶん殴ればどうにかなるだろうか。いや、でもそれは悪魔に対する方法な気がするし、エクソシスト系も何度も何度も聖水掛けたり十字架向けたりするだけで致命傷は与えられていない気がするので駄目だ。


「……うん、とにかくゴーストは無理!帰るわよ!」

「今の無言タイムにどういう葛藤があった?」

「凄いあったよん、衛琉」


 心が読める心声が苦笑してそう言った。

 内心を読んで苦笑しているのだろうが、こっちからするとマジでこのレベルで無理なのだ。

 トラウマが多い。


「っていうか宝だって見える状態になってるんじゃないの!?」

「あ、いや、昨日の夜に遠くを見たらちょっと見えたりはしたが、昼はそうでもないぞ。何も無いところに魔物が居る反応が見えるなあ、という感じで」

「……そっちの方が怖くないかしら」

「良い事を教えてやろう、幽良。男は女よりもグロ耐性低いのが多いんだ。そして私は昨夜ゴーストはわりとグロい見た目をしているのも一定数居ると知って泣きそうになった」


 真顔で言われた。



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