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しぐれ。  作者: 色
1/1

〜いい天気とは〜

 皆様は「いい天気」と言われたら晴れを想像しませんか?

 私は晴れを想像しました。

 この作品はそんな「いい天気」=「晴れ」と言う私自身の固定概念を壊すために書いた作品です。


外は桜の花びらが舞い、暖かい春の始まりを伝えてくるような心地よい風が吹いていた。


 僕は今年から大学生になった。高校の時の知り合いも少なく、新しい出会いはあるものの人と会話をするのが苦手だった。話をかけられても上手く返すことが出来ない、いわゆる「コミュ障」というやつだ。


 6月半ば、梅雨入りしたというのにも関わらず空気は乾燥し日差しが照り続ける暑い日が続く中、やっと梅雨らしい雨が降った日だった。朝方は雨が降っていなかったため僕は学校へ傘を持って行かなかった。


 しばらく雨は続いていたが、4校時の時は雨が止んでいた。これはすんなり帰れそうだ。学校が終わり帰ろうと靴を履いた途端、急に雨が降り始めた。その時、たまに同じ授業では見かけるが話した事は一度としてない女性が声をかけてきた。


「良かったら入りますか?」


 僕は突然の事で理解が追いつかなかった。


 普段他人に声をかけられるだけでも焦る自分はまさか話した事もない、名前も知らない女性から「傘を貸してもらう」ではなく同じ傘に「入れてもらう」なんて事を言われたのだ。そりゃ焦るに違いない。

突然の事で僕は咄嗟に


「はい。」


と答えてしまった。やってしまった。返事をしてしまった以上、断る事は出来ない。そして名前も知らない彼女と同じ傘に入って駅まで歩いて帰ることになった。何を話せば良いのか、自分から話題を出すべきなのか、色々なことを考えていると彼女から「今日はいい天気ですね。」と言われた。今日は雨、それも豪雨だ。それなのに何故彼女は「いい天気」と言ったのか僕は不思議に思った。


 いつもなら会話を早く終わらせようと適当に相槌を打つ事が多かったが、今回は違う。何故彼女は「いい天気」と言ったのかが気掛かりになり「どういう事…?」

と尋ねた。すると彼女は話をそらして少し足早で歩いた。触れてはいけなかったのだろうか、と色々考えながら駅に向かって歩いた。


 そうこうしていると駅に着いた。どうやら彼女と僕は違う路線の電車に乗るみたいだ。ホームに降りる時、彼女は僕に


「また明日になれば分かるよ」


そう言ってホームに降りていった。


 次の日、外は快晴だった。僕は始業のギリギリで教室に駆け込んだ。教室に入ると昨日傘に入れてくれた彼女の席は空席でした。今日はたまたま具合でも悪いのだろうと思ってあまり気にしていなかった。


 学校が終わり、帰って晩飯を食べている時だった。テレビを垂れ流しにしていると事故のニュースが報道されていた。それは親に虐待され悲しくも亡くなったというニュースだった。亡くなったのは大学1年の女性との事だった。僕は嫌な予感がした。その嫌な予感は的中した。虐待により亡くなった大学生は昨日、傘に入れてくれた彼女だった。彼女は清水幸雨しみずしぐれという名前だった。

 僕はものすごい動悸がした。

 昨日初めて話した相手とはいえ、傘に入れてくれた上にまた明日になれば分かる、と捨て台詞を吐かれた次の日に亡くなるとは思ってもなかったからだ。現場には野次馬だらけで行ったとしても何もできない事を諭し、家でただニュースを黙々と観ているだけだった。

 次の日の朝、正門の前にはテレビ局やマスコミが殺到していた。学内ではニュースの話題が飛び交っていた。彼女と仲の良かった友人達は泣いていた。


僕は地に足がつかない感覚がしばらく続いた。


 学校は午前中で終わり、僕はまっすぐ家には帰らず少し公園で寄り道をした。

 僕は公園のベンチに座り、真っ青な空に浮かぶ白い雲をしばらく眺めていた。その時ふと思い出した。彼女の中で雨の日はなぜいい天気なのだろうか。事件の報道を見てから意識しない様にしていたが、やはり気になって仕方がなかった。もし彼女に明日会えていたのなら、答えがわかっていたのだろうか、もう誰もこの答えを知らないのだろうか。謎は深まるばかりだ。


 しかし僕はある事に気がついた。それは彼女の名前、「幸雨」という名前だ。一般的に、しぐれは時雨と書いてしぐれと読むが彼女の名前は少し変わっている。幸せの雨で「しぐれ」と言う名前と昨日の雨は何か関係があるのだろうか。考えてもこれ以上何も思い浮かばない僕は彼女の家を訪れることを決心した。


 この度は拙著「しぐれ。」をお読みいただきありがとうございます。

 この作品は私は中学生の頃、なんとなくで書いてあったものを掘り出し、誰かに読んで頂くためだけに文を書き直して投稿致しました。

 今まで、小説は読む側だった者なのでいざ書いてみると自分の文章力の無さや想像力の欠如には何度もため息をつきましたが、少しでも中学生時の私が「書いて良かった」と思えるよう、何度も考え直して書きました。

 当時の私がこの作品の結末をどうしたいかは覚えていません。現段階でもエンドロールが見えていませんのでこの作品が完結する事すら怪しいですが、無事完結させる事が出来れば幸いと思っています。

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