旅立ち4
「さて、何から話をしましょうか」
今、私たちはゼイバルに向かって出発していた。
「昨夜のことを、あの者たちは人狼でした。なのに、セリーナ嬢たちは易々と捕らえていた...」
「では、私たちのくに...サンマリーについてはどれぐらい知っていますか?」
「大国であり、サンマリーの王家は人気があるとしか」
「とりあえず、ざっくりとしか知らないんですね」
そういったベル様の言葉に、ゼイバル国の人たちはバツが悪そうにしていた。
「では、サンマリーについてから話しましょうか」
そして、ベル様はサンマリーについて話し始めた。
「サンマリー国は、皆さんが知っている通り人の国でも大きな国です。そして、私たちの先祖の歴代の王家の人たちのおかげで国民にとても人気があります。ここまでは、表の話です」
「表?では裏があるということですね」
「えぇ、その裏の話とはサンマリーが魔術の大国としても知られているということです」
「魔術?」
ベル様が言った言葉に、グル王はじめヴァイルさんたちも驚いた表情をしている。
ということは...。
「ゼイバルには、そういうのはないんですね」
レイアの言葉に、ヴァイルさんたちが頷く。
「じゃあ、何か見せた方がいいかしらねぇ。ルル、お願いできる?」
「はい、ベル様」
ベル様から言われたルルは、少し私たちから離れて掌のうえに火の玉を出した。
「こんな感じかしら、サンマリーの国民はみななにかしら魔術が使えてその人がどんな魔術に秀でているかは、その人の髪の色や瞳の色に出るの。さっきのルルは、炎の魔術が得意なの。他の子たちのは、その時のお楽しみにしておきましょう」
「はぁ、それは分かったんですが昨日の男たちを捕まえていた時の力は?」
「基本的に、魔術が使える私たちは力は強いの」
ベル様の言う通り、サンマリーの女の人は基本的に力が強く男の人にも引けは取らない。男の人と女の人が同等の評価を受けることができ、働きやすいのもサンマリーの特徴だ。
「そうだったのか、だからやけに老院たちがこの国を勧めるわけだ」
なるほど、ゼイバル国は女の人がだんだん弱くなっていて少なくなっていたこともあり、比較的女性の生命力が強そうなサンマリー国に目を付けたんだ。
「老院の偏屈爺さんたちが、すごい食いつきだったもんな」
「あの勢いの理由が今わかるとは...」
「あの爺さんたちにうまい具合にやられたな」
老院って確か、ゼイバルの政治の決定権を握ってるっていう人たちかな?
「そういうこともあり、私たちの国はとても有名で周辺の国はこの力を欲しがっているところが多く、実際に他の国に兵を派遣したりしてその力を見せることで、他の国に恩を売ってきたんです」
「なるほど、そんなこともやっていたのか」
「これがサンマリーの大国たる所以です」
「俺たちがいかに下調べもなしに、マリーベル姫たちを迎えに来たかが分かるよな」
ルークさんの言葉に、私はゼイバル国の人たちも突然この結婚話を聞かされたのかと思った。
「もしかして、ゼイバル国の人たちも突然聞いたのかな?この話」
「たぶんそうかも、その老院っていう人たちが決めてグル王から聞かされたとか?」
「その通りです」
なるほど、ヴァイルさんたちもなかなかに苦労人なんだろうな。ヴァイルさんたちに親近感が芽生えた瞬間だった。
人狼は、野蛮で毛むくじゃらっていうのは違って本当に普通の人と変わらない。一緒に行動している中で、理解したことだ。
そして、その後は何もなくゼイバル国の城に着いたのだった。