突然の宣言4
さっそくのブクマありがとうございます!
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
「あちらに着いたら、すぐにマリーベル姫に誤って下さいよ!ただでさえ、俺たちはよく思われていないんですから」
「分かってる!」
さっきからこんな感じの会話を何十回も聞いている気がするな...。
「もう何度目だろうねあの会話」
「俺も今そう考えていた」
「だろうね、そんな感じはしてたよ」
その会話をしているのは、俺たちの仕える主と幼馴染の中でもそういったことに厳しいグイードだ。
ま、この二人のこういった会話には慣れているがさすがにサンマリー国に着くまでとなると、先が思いやられる...。
「二人ともよく飽きもせずにそんな会話してますね」
俺とアレンの思いを代弁するかのようなことを言ったのは、ルークだ。
よくそんな簡単に言い出せるものだ。
「グル様がしっかりなさらないからです」
「グイードが口うるさいんだよ」
「まあまあ、二人とももうサンマリー国ですよ」
アレンの言葉で俺も気が付いた。
サンマリー国は、貿易国ということもありとても賑わっていて色々な国の者たちがいるのが分かる。
指定されていた場所の近くまで行くと、五人の女たちがいた。
「ほら、着きましたよあの真ん中にいるのがマリーベル姫です」
グイードの言葉に、視線をそちらに向けると他の五人よりも上質な素材でできているであろう服を着た少女がいた。しかし、俺の視線はすぐにその隣に吸い寄せられるように向いた。
マリーベル姫とよく似た容姿をしている、金に近いピンクブロンドの髪に澄んだ薄い青の瞳の少女。
ああ、あの子だ...。
「ヴァイル?どうした?」
すぐ隣にいたアレンが俺の異変に素早く気が付き、声をかけてきた。
いや、これは今言っていいことではないと判断した。
「いや、なんでもない」
「ヴァイル、まさか...」
アレンには気がつかれたようだが、言うつもりはない。目でそう訴えると、アレンは渋々と納得してくれたようだ。
それ以上の追及はなかった。
声をかけ遅れたことをあやまり、軽く会話をしている間も俺の意識は目の前で対応している少女、セリーナ嬢に向いている。
すると、まだ降りて来ようとしないグルとグイールが騒いでいるのに気が付いたのか苦笑いを浮かべていた。
「私の旦那様はそこにいらっしゃるの?」
セリーナ嬢によく似たサンマリー国の姫、マリーベル姫が声をかけてきた。それにうなずくと、マリーベル姫はすたすたとそちらに歩いていき、グルと二人きりで話がしたいと言い車に乗り込んで行った。
その後、出て来た時なぜかグルはぐったりしており逆に、マリーベル姫は清々しいほどの笑みを浮かべ出て来た。
「何をしたんですか?」
「何も?ただ楽しい会話をしただけよ?」
「なら、どうしてあんなにあちらの王様...。あんなにぐったりしてるんですか?」
「さあ、どうしてかしらね」
「笑い事じゃないですよ」
「ごめんなさいね」
獣人は、普通の人よりも嗅覚や聴覚がいい。だからこそ、そんな会話が聞き取れてしまった。
「あちらのお姫様、けっこうやるね。あのグル様があんなにすぐにおとなしくなるなんて」
「だろうな」
「それに、あのセリーナって子もね」
「!!」
「...その反応を見ると、当たりかな?」
「...何がだ」
「とぼけなくていいよ...。ヴァイルの”運命の番”、あの子でしょ?」
やはり、分かっていたか...。だが...。
「言うつもりはないぞ」
「どうして?」
「まだ正式にグルとマリーベル姫との婚約が成立したわけじゃない。今、俺が運命の番が見つかったと言えば混乱するだろう」
「まあねえ...。でも、僕はいいと思うけどな」
アレンは、時々軽い発言なのか重い発言なのかよく分からないことをいう。しかし...。今のはけっこう重い方だろう、今までまったく接触していなかった人間の国と婚姻を結ぶ、しかも我らがもっとも崇拝する王との婚姻だ。
人の国ではどうか知らないが、人狼の国では王族だとしても強くなければ国民に認めてもらえずなめられる。弱肉強食、それが人狼の国、ゼイバル国での掟だ。
過去を遡ると、弱いばかりに国民に殺されてしまった王もいる。
今回は、初めて人の国との婚姻ということもありあの宣言以降、こちらに来るまえに慎重に協議をしてきた。なのに、今、俺がそれをダメにするわけにはいかない。
今は特に、近年女児が産まれずこのままではだんだん女が少なくなり人狼という種の存続も危ぶまれる。そんな時、王の婚姻が正式に決まりそうな時に他のものが”運命の番”を見つけたからと、簡単に婚姻の許可などおりるはずもない。
ならば、最初からこの思いは隠しておく方がいい...。
そんな感じで話していると、出発するというグルの合図で俺たちはゼイバル国への帰路についた。