突然の宣言3
時は戻って、セリーナ達が主からの突然の宣言に驚いていたころ...。
ゼイバル国でも、同じような宣言で賑やかになっていた。
「グル様...今、なんと?」
「だから、結婚するんだよ。人間の国の姫と」
「で?明後日には迎えに行くと?何を考えてるんですか?」
本当に、我らが王は何を考えているのか...。
「ヴァイル、どうするんだ?」
「...ふう、もう決まってしまったのならしょうがないだろう」
「ヴァイル、しかし...」
「グイード、グル様が一度決めたことを覆したことがあったか?」
「いいえ...。では、どちらの国の方ですか?」
これまでのグル様の行動を見てきたから、グイードも諦めたらしい。
俺たちは幼馴染というやつで、グル様が小さな頃からずっと一緒にいる。
だからこそ、グルの突然の宣言にも慣れてはいたが今回は驚きを隠せない、なぜなら”結婚する”と言ったからだ。
人狼の国である、ゼイバル国は最近ある問題に直面していた。
それは、女児の出生率が急に低くなってきたことだ。だから、人間の国と何かやっているとは聞いていたが...。
「まさか、結婚になるとはな」
「それが一番手っ取り早いがな」
「あのあの、俺たちも向こうで相手を見つけられますかね?」
そう声をかけてきたのは、今集まっているメンバーの中でも一番若いルークだ。茶色の髪に金茶の瞳の飄々としてるやつだ、だがその見た目からか情報収集を得意としている。
「全く、グル様にも困ったものですね」
「グイード、もういいのか?」
グルの方を見ると、ぐったりとソファーに寝ころんでいた。
グイードは、青みがかった黒髪に濃紺の瞳でメガネをかけたやつだ。ルールとかにけっこう厳しいやつだ。
「とりあえず、あちらに行く際の警備とかを確認しとかないとな」
俺がずっと話しているのは、アレン。薄紫の髪に同じ色の瞳の、女と言われても遜色ないほどの綺麗な中性的な感じの男だ。だが、戦いになると物凄く頼りになるやつだ。
「で、どこの国だ?」
「サンマリー国らしいですよ」
「おおーサンマリー国の王家といえば、とても人気のあるところですね。大国ですし」
「そうなのか?」
「はい、それにそこの姫ならマリーベル姫ですかねえ」
本当によく知ってるな、人間の国のことまで知ってるのか。
「マリーベル姫っていったら、”四華”も有名ですよ」
「四華?なんだそれは?」
復活したグルが聞いていた。グルは銀髪に青い瞳の綺麗なやつだ。だが、戦闘以外ではからっきしなのだが...。
「四華とは、マリーベル姫に仕えている四人の女の子のことらしいっていう情報しかまだ分かってないですけど」
「そんなに有名なのか」
「妙に容姿がいいとしか...」
ルークでも情報が掴めないのか...。
「故意に隠されているのか、ただ情報が出てないだけか...。どっちだろうね」
「ま、会えば分かるだろ。準備を始めよう」
それから慌ただしく時間は流れ、当日になる。
「絶対に行かない!」
こちらから日を決めていたにも関わらず、急に行かないと言い出したグルを宥めるのに時間がかかり、サンマリー国に時間に遅れる旨をしたためた手紙を書くことになるのは、その数時間後であった。