セリーナ達の力4
「魔術以外にもあんなことができるとは...」
「確かに、それにまだ何かあるみたいでしたね」
さっきのお茶会の前の事件といい、魔術のことといい本当に驚くことばかりだ。老院たちが今回の婚姻を突然、グルに言ってそのまま強制的に婚姻を押し切ったのも納得がいくが...。
「俺達には、メリットがあるがあちらには何かメリットがあるのか、だろ?」
考え込んでいた俺に声をかけたのはグルだ。こいつは昔から、鋭い。戦の時などは頭が相当キレるやつだが、他の時はまったくなんだが悩みがある者とかをすぐに見抜いたりするから良くわからんやつだ。
「あぁ、特に争っている国もない平和な国だろ。それで、なぜいきなりゼイバルとの婚姻を受けたんだ?」
「ヴァイスとグル様の疑問はもっともですね。他の人の国にも交渉をしていたんでしょ?」
「そうらしいが、俺にもまったく教えてくれないんだ。その質問も当然したが、婚姻してくれるというだけでもありがたく思いなされ!、て言われてさ...」
あの老院の一癖も二癖もある爺様たち相手じゃ、そうなるのも無理はないが...。
「あのさ」
「どうした、ルーク?」
「それってさ、さっき聞いた話が関係あるんじゃない?」
「さっきの話?」
「マリーベル姫は昔からよく狙われてたって言ってたじゃん?それが関係するのかなぁ、と思ってさ」
確かに、それもあるか。
「では、マリーベル姫を守るためってことですか?」
「そうか...」
「でなければ、あんな有能な侍女たちと聡明で美しい姫を手放したりはしないでしょう」
「警備を少し改めた方がよさそうだな」
「明日にでも時間を割きましょうか、結婚式もありますし」
「そうだな、セリーナ嬢たちにも同席してもらおう」
マリーベル姫のことだし、なにより彼女たち自身も狙われてもおかしくないしな。彼女たちにも必要か?
「彼女たちに護衛を付けるなら、彼女たち自身に言っておいた方がいいと思うぞ」
「どうしてでしょうか、グル様」
「つけてもどうせバレるだろ?あんなに凄腕の侍女さんたち」
グルは、椅子に座って伸びをしながら言っている。
まぁ、あれだけの力があれば問題はないだろうが...。
「明日はとりあえずその話をセリーナ嬢たちに言ってみましょうか」
「そうだな。さ、グルはもう少し執務が残っているからそれをやってくださいね」
「分かってる、急がないと夕食に間に合わないからな」
グルは、何か緊急事態がない限りは夕食はマリーベル姫と一緒に食べると決めていたらしい。
マリーベル姫との約束は、本当にちゃんと守っているんだな...。さっそく尻に敷かれてるが、あの姫様は結構なやりてみたいだったしな。
「さっそく尻に敷かれてますね、グル様」
「適う気しないもんなぁ、ベルには」
「確かに、マリーベル姫にグル様が勝ってる姿が想像できないもんな」
「なんだと、ルーク」
グル様とルークが言い合いをし始めて、それを止めようとグイードが二人の間に入っていっている。
「もう少し、グル王は精神的に大人にならないと一生マリーベル姫には敵いそうもないよな」
「まぁ、それぐらいがいいんじゃないか?」
「確かにね、さ、俺たちも仕事に移ろうか。あっちも落ち着いたようだし」
グルとルークの方を見ると、グイードがうまく落ち着かせたようで静かになっていた。
もうひと頑張りするかと、気合を入れ直し残りの仕事を始めた。




