突然の宣言2
ゼイバル国からの迎えが来る日
「早いものですね、もうこんな日になるなんて」
「本当に、ナーラに怒られてたらすぐに過ぎたわ~」
「ベル様がちゃんとしていないからです!まったく...」
私たちは今、ゼイバル国の迎えを待っている状況だ。私たちがいるのは、サンマリー国の北に位置する関門所。サンマリー国には東西南北にそれぞれ港と関門所があり、北と西には関門所、東と南には港がある。サンマリー国は、貿易も盛んに行っている。
ゼイバル国へは、陸路で一週間はかかる。かなりの長旅だ。
そして、ベル様について行くのはもちろん私たち四人だ。他の人たちにも声がかかったらしいけど、”化け物のところには行きたくない”とかでみんな辞退したとか、まだ会ったこともないのに。
今も、普通なら見送りに来るはずが国王様も王妃様も、ベル様の兄にあたる王太子様も見送りを大臣達に止められていて、今いるのは私たちとベル様のみだ。ちなみに、ベル様の姉の第一王女様はすでに隣国の王子とご結婚されている。
「実際どのような人たちなんでしょうね?」
「野蛮な人たちだとか、毛むくじゃらだとかいう話は聞いてるけど...」
「え!?それベル様大丈夫何ですか?」
「大丈夫だよルル、レイアも怖がらせるような話しないで」
「ごめんなさい、セリーナ」
「皆さん、もう来ますよ。シャキッとしてください」
ナーラの声に、前方を見ると私たちが見たこともないような大きな生き物がゼイバル国の人たちが乗っているであろう馬車みたいなのを引いて来ていた。
「さあ、レイアの言う通り野蛮な毛むくじゃらなのかしらね?」
「ベル様...」
そうこうしているうちに、その乗り物は私たちの前に止まった。
一番最初に出て来たのは、青銀の髪にシルバーの瞳の濃紺の騎士服の上からでも日々鍛えているのだろう体のいかつい人だった。
凄く強そうな人...。
というのが最初の感想だった。その後からも、三人出てきた。
「お待たせして申し訳ありません、少しあちらを出るのが遅くなってしまって」
「大丈夫です。一応連絡も頂いてましたし」
実は、昨日の昼頃ゼイバル国から手紙が届き少しこちらに来るのが遅くなると知り、私たちも少し余裕が出来た。これは、ありがたかった。
「何してんですか!もう着いたんですから腹くくって下さいよ!」
「もう少し待って!まだ、心の準備が」
馬車?のドアのところで何か揉めている?
「あの?」
「本当に申し訳ありません」
こんないかつい人が、物凄く申し訳なさそうにしているのが少しおかしくてちょっとだけ笑っていると、その人がとても驚いたように目を見開いていた。何か驚くようなことがあっただろうか?
私が不思議に思っていると...。
「私の旦那様はそこにいらっしゃるの?」
「ベル様」
「マリーベル姫ですね?お迎えに上がるのが遅くなり申し訳ございませんでした」
「それはもういいですわ、さ、案内を」
さっきの驚いた顔は何だったんだろう?
とりあえず、私もついて行くことにした。