本来の力5
「さて、今回のこと...。説明してもらえるかしら?」
ナーラとルルが連れて来た人に対して、ベル様が言った。
二人が連れて来たのは、やはり、これまで私達に嫌がらせをしていた人達だった。
「なんのことかしら?」
「なにもしていない私達に、なにを説明しろと言うのですか?マリーベル姫様」
「あら、私はすぐにでもあなた達を捕らえてもよろしいんですのよ?でも、あなた達にも釈明の余地を与えているのですけど...。いらないのかしら?」
ベル様は、本当のことを言ってるけど今回のことを引き起こした彼女たちはまるで分かっていないようで、まだ白を切っている。
もう証拠も掴んでいるのに...。でも、証拠を掴んでいるのにこんなに泳がすベル様の性格の悪さは凄いな。
彼女たちはもう白状しないと理解したベル様は、私に視線を送ってきた。
「今回、ベル様とグル王様のお茶会でお出ししたお茶には毒が仕込んでありました。その毒は、ティーポットに仕込まれており時間の経過とともにお茶に混ざるようになっていました」
「まぁ、そんな恐れ多いことをする方がいらっしゃるんですのね?グル国王様が飲まれるお茶にそのようなことをしたのは、いったいどなたなんでしょうね?」
これだけ言ってまだ白を切るんだなぁ、その根性は凄いな...。別のところで使えなかったものかな?
「そして、その毒を調べたところゼイバル国の特定の地域でしかとれない植物から作られておりました」
「も、もう調べたのですか?」
「えぇ、大切なゼイバル国王に仕込まれたものですし、近く私の旦那様になる方のためですものこれくらいはすぐに調べますわ」
「そ、そうですわね...」
明らかに分かりやすく動揺してるけどまだやるんですね...。
そう思いベル様を見ると、凄い綺麗な笑顔をもらいました。レイアと同じで、怒ると凄い綺麗な笑顔になるんだよなぁ~。
お気の毒に...。
「深くその毒の経路を調べました」
「待ちなさい!こんな短い時間で調べられるというの!?」
「あら、急に大きな声を出してどうかなさいました?」
「リル様!」
そう、毒はこの二人のうちの一人リル様と呼ばれた、リル・ヘルブームの一族が管理している温室でしか作られておらず。現在では、まったく出回ってなかったはずが今回のことでまたゼイバルに送られていたため、すぐに分かった。
蝶よ花よと育てられ、世間のことなどまるで分かっていないお嬢様だからね。送った方も何に使うかまでは全く聞かなかったんだな。
一緒にいる子は、領地が近く仲良くなった子らしい。幼馴染だね。
「そんな、そんな...」
「リル様...」
もう認めた感じかな?あれ?ベル様はまだ私に、綺麗な笑顔を向けていらっしゃるけど...。
ま、ベル様はそんな人ですもんね。
「その毒は、ヘルブーム領つまりリル様のご実家でしか作られていないものですね?」
「そこまで、調べていたて...」
「なぜ、泳がしたか、ですか?もちろん、あなた達に最後の機会を与えたのです。今回は、私が連れて来た優秀な侍女のおかげで、私はもちろんグル王にも何も害はなかった。であれば、あなた達が来た時に素直に謝罪をしてくれれば、今回のことは不問にするつもりでした。しかし、まったくそんな様子もなかったので仕方ありません。今回のことは、私の母国であるサンマリー国に喧嘩を売ったも同然。国際問題になります」
「そんな...」
そこまで考えてなかったんだよね、考えられるならこんなことは絶対にしないし。
「さて、グル王様?今回のことどうするのかしら?」
「そうだなぁ、ベルは?もういいのか?」
「グル王様に従いますわ」
ベル様の言葉に少し考えて、グル王は口を開いた。
「では、このことは現ヘルブーム伯爵に伝えさせていただく。そして、領地を返還してもらい伯爵位から子爵に降格にして、リル・ヘルブームにも暇を出す。ベルには悪いが、このことは」
「分かっております、サンマリーには伝えません」
「ありがとう、では以上だ。下がれ」
「申し訳ございませんでした...」
そういってヴァイスさんたちが呼んだのだろう、騎士たちと部屋から出て行った。