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人狼と魔術師の恋愛模様  作者: フミカ
17/23

本来の力3

「あら、誰かと思ったら軟弱な人の国の侍女様方じゃないですか~どうなさったんです?」

「お腹でも空いたのかしら?」


 厨房に行くと、先に午後のお茶の支度をしていたようで私たちが厨房に入った途端こんな感じだ。

 そこまで敵対心剥き出しにしなくてもいいと思うんだけどな...。


「午後からグル王様とベル様がお茶をしますのでその準備です」

「ならば、私達がしますわ。グル王様の好みなど、分からないでしょう?」

「いいえ、せっかくの申し出ですがベル様がグル王様にこちらで準備をすると言って下さったので、準備はこちらでいたします」

「それなら私達はもういきますわね」


 そういって人狼の侍女達は厨房から出て行った。


「なんだか、あっさり引いていきましたね」

「特に何も変わったことはないみたいだけど...」


 確かに何もない、でもいつもなら何かしらしてくるのに。


「どう思う、セリーナ?」

「さぁ、とりあえずは材料が無事か確認して作り始めましょう」

「そうね」

「はい」


 確認したところ、冷蔵庫に残してあった材料は見た感じは大丈夫だった。

 見た目も、匂いも特には変わりはない。でも、なんとなく違和感はあるんだけどなぁ~。


「どうかした?」

「違和感があるんだけど、なにがおかしいとか分かんないんだよね」

「珍しいわね、セリーナがそんな難しい顔をするなんて」

「そう?レイアこそ、何かないの?」

「私はないわね、ただあんなにあっさり私達に何もせずに去っていったのには少し気味が悪いわね」

「そうねぇ、とりあえず悩んでても答えはでないからさっさと準備しましょうか」

「えぇ」


 それから本格的に作業に取り掛かり、あっという間に時間が来てギリギリ間に合ったスコーンや焼き菓子、お茶を運びグル王から指定された場所へと向かった。





「もういらしてたんですね、ベル様」

「えぇ、予想してたより早く終わってね。とってもいいにおいね」

「あちらから持って来たものですよ」

「通りで、落ち着くわ」

「お、もう来てたのか」


 ベル様や私たちがサンマリー国の特産であるお茶になごんでいると、グル王がヴァイスさんたちを連れてやってきた。


「ほんとにいい香りですね~」

「癒されますね」

「サンマリーの特産である風香茶ですね、爽やかな味わいと季節の花の香をブレンドしているお茶だとか」


 アレンさんはさすがとしか言えないな、本当に色々よく知ってるよね。ルーク君とグイードさんにも好評みたいでよかった。


「いつまでも立たせておくのもなんだし、座ったらどうだ?」

「ありがとうございます、グル様」


 グル様は、初日に会った時とはまるで別人のようにスマートにベル様をエスコートしている。

 あの時のことについてベル様は少しだけ話してくれた。あの時、約束をしたそうだ情けない姿はもう見せないと。


 二人が席に着き、私たちは給仕をしてヴァイスさんたちは端の方に一列で立っている。


 お茶を入れ、グル王とベル様にそれぞれ給仕をしていた時だった、その変化が現れた。


 それは、ベル様にケーキを渡した時だった。

 お茶の匂いが、変わった?


「ベル様お待ちください!」


 私が変化に気が付いた時、ベル様はそのお茶を飲もうとしていた。


「何かあった?セリーナ」

「どうした?」


 私の声を聞き、ベル様を始めそこにいた者たちの目が私に向いている。


「グル王様も、まだお茶には口をつけていませんね?」

「あぁ、どうしたというんだ?」

「お茶の匂いが変わりました」

「茶の匂いが?俺達には分からないが、どうだヴァイス」

「いえ、私も特には...」


 そんな会話をしていると、ベル様が自分のカップに注がれたお茶の匂いを嗅いでいた。


「確かに、匂いが変わってますわ。人狼には分かりませんよ、風香茶の匂いの変化が分かるのはサンマリー国の者の方が優れていますからね。それにしても犯人は、大胆な行動に出たものですね。ナーラ」

「はい、ベル様」

「報告を」

「はい、先ほどセリーナが異変を感じた時、二階のバルコニーのところに人影が二つ。異変に気が付き、セリーナが止めた後に中へ戻っていきました」

「そう、レイアどうかしら?」


 ナーラが報告をしている間、レイアは匂いが変わったお茶を少しだけ飲んでいた。

 女神も照れてしまいそうなほどの綺麗な微笑みで、レイアは言い放った。


「これは、カップの方に仕込まれていた毒ですね。お茶を入れ時間が経つと、だんだんお茶に毒が混ざっていくものです」

「珍しい毒のようね、直ちに解析と出所を探って報告してちょうだい」

「かしこまりました。お部屋に戻りますか?」

「えぇ、ルル次は部屋の備え付けのキッチンでお茶の準備を改めてやってくれる?」

「はい」

「では、グル様。参りましょうか?」

「なぁ、一つ聞いていいか?」

「ちょっと特殊な事情がありますので、部屋に戻ってからにしましょうか」


 それで、私たちはベル様の部屋へ向かって移動することになった。

 ヴァイスさんたちも、さっきの私達とベル様のやり取りを疑問に思っただろうがベル様のさっきの言葉で何も聞かずにいてくれている。








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