本来の力
しばらくお休みしていてすみません。
また、再開させていただきます。よろしくお願いします。
「失礼します、飲み物を持って来たのですが...」
「飲み物でしたら、すでに用意しているのでお気になさらずに」
「そう、ですか...」
外からの声にベル様が応えた。これで下がってくれるとありがたいのですが、そうもいかないようですね...。相手はまだ扉のところで、他の人達となにやら話をしているようです。時々声がこちらにも聞こえているのですが。
「あれは、聞こえていないと思っているのでしょうか?」
「ナーラさん、失礼ですよ。聞こえてたらどうするんですか?」
「あら、あちらに聞こえていたみたいよ?」
レイアのの言葉に、二人は静かになった。それと、扉の外の声も聞こえなくなっていた。
しばらくの沈黙ののち、あちらから声をかけてきた。
「聞こえてました?」
との言葉に、みんなで顔を見合わせて返事をしたのはナーラだった。
「少々、こちらにも声が...」
「はぁ...。そうですか」
「えぇ...」
「...」
「...」
これは、どうしたらいいのかな?
「セリーナ、どうするの?」
「どうするもなにも、無理やり押し入ってくるようなことはないから強制的にどこかにいってもらうこともできないし」
「確かにね~」
「あの~」
私とレイアが小さな会議をしている時、恐る恐るといったように扉の外にいた相手が話かけてきた。
それに、ナーラが応える。
「なんでしょうか?」
「ここの扉を開けてはくれませんよね?」
「ヴァイルさんから、けして開けるなと言われていますので」
ヴァイスさんの名前を出すと、相手側がざわざわしているのが雰囲気で分かった。
やっぱりヴァイスさんの影響力はすごいですね、名前を出しただけでこうなるとは...。
「あぁ、分かりました...。では、失礼します」
扉の外にいた気配がなくなったのを確認して、ベル様が。
「ヴァイスさんの名前を出すだけで引くなんて、もう少し骨のある人に来てほしかったわ」
「ベル様...。あまりそういうのは言わないでくださいね」
「でも、そろそろあなた達の本来の力を見せてもいいと思うんだけど」
「そうですかね...」
確かに、そろそろそんな時期かと思いますけど...。
なぜ、こんなことを話しているかというと、最近私たちに嫌がらせをする人がいるからだ。
「夜ご飯がなかったのはさすがにきつかったですね...」
「そうね...」
「地味な嫌がらせだけど、積み重なるときついわよね。なんだったら私からグル王に言ってみるけど?」
「それだと、余計にエスカレートするのでは?」
レイアの言う通り、ここでベル様が出てくれば私たちが何もできずにベル様を頼ってしまったことになり、根本的な解決にはならない。
そして、ナーラとルルが話していた夜ご飯の件は、私たちの仕事が遅くなってしまったことがあり食堂に行くのが遅くなってしまった時のことだが、だいたいそういう時は食堂の人がちゃんと用意して置いてくれていたのだが、それが六日連続でなかったことがあった。最初は、ただ単に忘れただけだと思っていたのだがだんだん、故意に誰かがやっていることが分かったのだがそれを特定するため私たちは何もせずに静観することに決めた。
それで、最近なぜかその当事者の方から私たちに接触してきたのだ。
「まさか、あんなにストレートに意見してくるなんてね」
「それなら最初からそうしてくれたらよかったのに...」
そう、真正面から私たちが犯人だと名乗りでてきたのだ。
その人たちは、この城に勤めている人狼の女性たちだった。ゼイバルの女性は、私たち普通の人の女性よりも力が強く逞しいのだ。それに、女性が少ないこともあり蝶よ花よと育てられ大切にされてきているため、性格がきつめになるらしくプライドが高い人が多いんだそうで...。
ベル様と一緒にやって来た私たちが、ちやほやされるのが腹立たしいのだろう。それも、ベル様のおまけのような私たちが。それに、女の人に人気の高いグル王の側近であるヴァイスさんたちと親しくしているのも彼女たちのプライドを刺激しているのだろう。