ゼイバルの日々~セリーナ~2
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サンマリーの国にも訓練場があったけど、だいたい使用するのは魔術の力があまりなく剣の腕の方を鍛える目的で使用され、魔術がある者たちは防御壁を張っている特別な訓練場で訓練が行われる。
歩いていくと、訓練場が見えて来た。
「なかなかに頑丈な作りみたいですね」
「人狼が訓練するところだもの、普通の人の国の訓練場よりは頑丈なはずよ」
ルルが訓練場を見て、素直な感想を言い。ベル様がそれに私たちが納得できる理由を言った。
確かに、ベル様が言う通り普通の建物では人狼の力には耐えきれないだろう。
「あら?」
一番前を歩いていたレイアが何かに気付き、声を出した。
私たちもレイアの視線の先を見ると、訓練場の出入口にヴァイルさんが立っていた。
「ヴァイルさん、待っていて下さっていたんですか?」
「は、グル王より皆様をご案内するよう言われ待っておりました」
「それは、ありがとうございます。グル王にも感謝しなくては」
「王に伝えましょう。さ、こちらです」
ヴァイルさんに案内され、私たちは見学用の席に案内された。
案内されている間、訓練場を歩いている間も他の人狼からの視線が凄かったけどヴァイルさんの一睨みですぐに訓練に戻っていた。
さすが、ヴァイルさん。
「ヴァイルさんは訓練には戻らないんですか?」
「私は、皆さんの護衛も兼ねていますので」
「あら、それはありがたい申し出ですが私たちなら大丈夫です。訓練をしている間はここにいますし、もし誰か来てもセリーナ達がいますから」
「それは、そうですが...」
ヴァイルさんは、主に言われた指示と私たちの力を知っているから戸惑っているようだ。
「大丈夫ですよヴァイルさん、常にここにいればヴァイルさんたちに見えるでしょうし」
「確かに、では私はそのことも含めグル王に報告してきます。なるべく、サンマリーまで行ったメンバーが来ても返事をしないようにお願いします。では」
そういって私たちのところから去って行った。
私たちがいるのは、たぶん王家の者の見物席で個室みたいになっている。
「どこもこんな席があるんですね」
「ゼイバルは何といっても実力主義、強い者が優遇されるとか...。だからこそ、昔は人狼を戦争のためだけに雇う国が多く、それを見かねて当時のゼイバル国王がゼイバルを鎖国にしたんだとか」
「そんな歴史があったんですね、なんだか悲しい歴史ですね」
ルルはナーラが言う歴史を、とても悲しんでいる。
「ナーラ、そこまでにして。ルルが泣いてしまうわ」
「え!ごめんなさい、ルル。そんなつもりでは...」
「大丈夫ですよ、ナーラさん」
涙目のルルを、オロオロしながら宥めるナーラがおかしくて私は、レイアとベル様と顔を見合わせて笑った。
しばらくすると、訓練場にいるグル王の元にヴァイルさんが戻ったのが分かりたぶん私たちのことを伝えたのだろう。グル王がこちらを見て、ベル様に手を振っていてそれにベル様も応えて手を振り返していた。
その後しばらくはグル王や、ヴァイルさんが訓練をしているのを眺めていたのだが...。
「あら、お客様ね」
「そのようですね」
私たちの席の扉付近に何人かの気配を感じた。