ゼイバルの日々~アレン~
明日の訓練はそうとう荒れるなぁ。
一応、おれは近衛騎士団の副隊長をやってるアレン。
今はセリーナ嬢たちの部屋の前で待機してるんだけど、セリーナ嬢たちの部屋を襲いに来てるやつらは張り込みの訓練さぼったのか?ここまでひどいのはなぁ...。
「おい、早くしろよ!」
「分かってるよ、中々開かねぇんだから!」
「訓練で習ったろ!」
「うるせぇ!」
あぁーあ、隣のヴァイルの雰囲気がますます冷えていくな。
「行こうか、ヴァイル」
「あぁ」
おれたちは、わざと気配を消してやつらに近付く。
「あとちょい...」
「何があとちょいなのかな?」
「あぁ?この扉のカギだよ!」
「な、なんで!?」
おれが声をかけたことで、カギに夢中になってるやつ以外はおれとヴァイルの存在に気付き驚いているようだ。そんなまわりの様子に気付かない扉に夢中になっているやつは、間違いなく明日地獄送りだな。
「お前らは余程訓練がしたいらしいな」
「ヴァイル、団長...」
「え?ヴァイル団長なんているわけないだろ?はぁ!?」
やっと気付いたな、顔面蒼白だし固まってるし可哀想に...。とりあえず明日は、救護班を呼んどかないといけないな。何かあったら大変だし。
「お前ら、ここがサンマリーから来た姫の侍女たちの部屋と知っての行動か?」
「そ、れは...」
「お前らは、ゼイバルの...ひいてはグル王の顔に泥を塗るのと同じことをしてるんだぞ」
「!!」
「サンマリー国の姫とお付きの侍女たちは、我らが王が多くの時間をかけて説得しこのゼイバルに来ていただいた方々だ。そんな方たちを守りこそすれ、襲おうとするなど」
「申し訳ありません、ですが...」
まだ何か言おうとしているやつを、右手をあげてヴァイルが止めた。
「分かっている、それを打開するための婚姻なのだ。それを、お前たちは台無しにしようとしている。それだけはやめてくれ」
「分かりました...申し訳ありませんでした」
「分かればよし、ではもう部屋へ帰るんだな」
「はい、失礼いたします」
奴らは暗い雰囲気のまま、帰って行った。
あいつらを見送ったあと、おれはヴァイルに話しかけた。
「さて、今日はどうする?もう帰る?」
「いや、今晩はそのままここで警護する」
「いいのか?明日も忙しいんじゃないの?」
「セリーナ嬢たちの安全には変えられん」
「ま、そうだね」
おれたちはその後もセリーナ嬢たちの部屋を警護し、夜を明かした。