突然の宣言
ある日、突然
「私、結婚することに致しました」
突然の宣言に、私を含めその場にいた四人はしばし固まりその後動き出す。
「冗談ですか?」
「いいえ、本当よ?相手はゼイバル国の王様よ」
「うそ~!その国って...」
ゼイバル国。その国は長く人と距離を置いていた人狼の国だ。ベル様からゼイバル国と、国王様が何かしているとは聞いていたがこんなことになるとは...。
「確認してきます。ベル様が言っていることが本当なら、準備しなければならないことがあるでしょうから」
そういって出て行ったのは、ナーラだ。ナーラは若葉のような綺麗なグリーンの髪と、ライトグリーンの瞳を持った子だ。
「あ、なら私も行くよ」
続いて出て行ったのは、ルルだ。綺麗な紅の髪に、それと同じ色の瞳を持った子。見た目のその派手さとは違い、気弱で心優しい子。
「あらあら、これから詳しい話をしようと思っていたのに」
私たちの主であるベル様は、優雅に紅茶を飲んでいる。
「ベル様、いつ決まったんですか?」
「昨日だったかしら?」
「こういうことは早く教えて頂かないと」
「ごめんなさいね、セリーナ」
「こうも見た目が似てるのに性格が違うって面白いわね」
そんなことを言っているのは、レイア。漆黒の髪に、黒曜石のような瞳を持つ神秘的な子。
私とレイア、ナーラ、ルルはアリーベル様に幼い頃から仕えていて、私たち四人とベル様は幼馴染である。
そして、ベル様はここサンマリー国の第二王女でマリーベル様と呼ぶのが普通である。でも、私たち四人は愛称で呼ぶことを許されている。ま、幼馴染ですしね。
サンマリー国は、とても大きな国で有名だ。広い国だけど、どこにも飢えで苦しむ人はおらず色々な設備も整っていて、どんな人でも教育を十分に受けられ職に困る人もいない。
こんなに生活水準が高いのは、歴代のこの国の王様が時間をかけたからだ。だからか、この国の王家の人気は高い。
そんな国の王女様に仕えることができるのは、とても光栄なことだ。しかし、ベル様は時々こういう突然に行動を起こすことがある。でもそれは、私たちを頼ってくれている証でもある。それはとても嬉しいことだ、それに、ベル様はきちんとお礼を言ってくれるし素直な方なのだ。
「ごめんなさいね、セリーナ」
「決まったことはしょうがありません」
「それにね、もう明後日には迎えに来るそうなの」
「...ベル様」
「本当に、似ているのは見た目だけですね」
レイアが笑いながら言う。
そして、レイアの言う通り私とベル様は見た目がすごく似ているのだ。ベル様がピンクブロンドの髪と薄い桃色の瞳に対して、私はベル様よりブロンドに近い髪に薄い青の瞳だ。瞳の色さえ隠せば、ベル様と瓜二つなのだ。
「本当、私もそれは思うわ」
「私はベル様にはなれませんからね」
「それもそうね」
「さて、私たちも準備をしないといけないわね」
「そうね、もうすぐナーラ達も戻って来るだろうしね」
その後、戻って来たナーラ達に事情を話すとナーラはベル様に怒って、それを何とか宥めて荷作りを始めた。
そうやって、この日は荷作りで終わった。