初めての浄化
森の奥へと向かったら、益々瘴気が濃くなった。
正直、手を振り払えばあたりの瘴気が傍から消えるのを知らなければ耐えられないのではないかと言った濃さだ。ちなみに適度に王子達の瘴気も振り払っていた。それにしても、これだけ黒いのに王子たちには目では私ほど知覚が出来ないらしい。
瘴気の濃い部分に向かえば、ようやくうっすらと見えるようになったようだが。これだけきちんと見えるのは私が聖女なのだからだろうか。
そういうわけで私が瘴気を手で振り払っているのも王子達は分かっていなかった。
「聖女が傍にいると苦しさがなくなるな」
と笑顔を浮かべられたが、私が近くにいるだけで苦しさがなくなるわけないだろと思ってしまった。瘴気ってそんな簡単なものじゃないし。……本当、微妙に私の思考が瘴気を理解している風なのが本当に気になる。
そんなことを考えながら瘴気がたまっている場所に到着した。
見た瞬間にうわぁ……と思ってならなかった。だってとてつもなく黒い。あと禍々しい。こんな禍々しいの見ているだけで気持ち悪くなりそうだ。特に私は王子達よりもきちんと知覚出来るのもあって本当にうわぁ……って感想しか出てこない。
「……なんと禍々しい」
などと神官が言っているが、神官も私と同じようには見えていないらしい。
真っ黒なものが充満していて、はやくこれは排除しなければと思ってならない。さて、浄化ってなるとお祈りすればいいんだっけ。それで本当にうまくいくんだろうか。
そんな気持ちもないわけではないが、一先ず特に色が濃い場所へと向かう。
王子達もついてこようとしたけれど、瘴気がきつすぎて中心部には近づけないらしい。聖女は近づけるっていうことなのかな。とりあえずお祈りしようかと思っていたら、「ぐるるうる」という獣の鳴き声が聞こえてきた。
瘴気の中心部というのもあって、魔物が湧いているらしい。その魔物達は王子たちがどうにか出来そうなので、私は手出しをしない。そもそも出来るか分からないしね。魔物相手に怯えてはないけど、戦えるかどうかとなると……。なんか出来る感覚になってるけど、戦闘とかした事ない私には無理なはず。
そんなわけで王子達を横目にしながら、私は私の仕事をやる事にする。
膝をつく。座り込んで、祈るように手を合わせた。そして目を瞑る。
――瘴気が消えますように。
何を祈ればいいのかも分からないので、単純な話かもしれないけれどそれだけを祈った。私が本当に聖女であるというのならば効果が出るはずだろうと思ったから。
そして次に目を開けた時には、驚いたことにもう変化は始まっていた。しかも私、何か少し光ってるし。
私の体から何かが抜けて、それがあたりを充満した。これは魔力だろうか。どっと力が抜けるが、負担になるほどではない。魔力があたりを巡って、黒いモヤを徐々になくしていく。なんというか、吸収していっている? こんなもの吸収して大丈夫なのだろうかと思ってしまうが、私の魔力は何の問題もなさそうだ。
寧ろ黒いモヤがあった場所を徐々に作り替えていっているようなイメージだった。
キラキラしている。
というか、普通に私、魔力を知覚しているようだ。不思議だと思う。
それにしてもたった一回祈っただけでこれだけ劇的な変化を与えちゃうって聖女ってすごすぎない? 私は自分がやった事とはいえびっくりだよ。
それにしてもこうして黒いモヤを無くしていけているって、私は本当に聖女なんだろう。……全く自分が聖女だって実感はこうして浄化が出来た事実があってもわかないけれど。それでも私は確かに聖女なのだ。
私が聖女とは信じられないが、本当に聖女なのだとは一応受け入れる。やっぱり実感はないけど。
「流石聖女だ」
「やはり聖女は凄いな」
「聖女様、これだけのことを成し遂げるとは」
「聖女様は本当に神の遣いです。素晴らしい」
次々に王子達が賛美の声をあげている。私が祈ってる間に魔物は退治されたらしい。笑顔で話しかけられてもやっぱり、トキめきはない。
私は何で若いみたいなのにこんなにときめかないのか。確かに王子達って美形なのにと不思議だ。
「無事に浄化が出来て良かったです」
とりあえずそれだけ口にしておく。
もし浄化出来なかったら――と考えていたので浄化が出来て一先ず安心した。それにしても浄化はそれなりに魔力を使うらしい。負担になるほどではないから問題ないけど、これ、魔力が少ない聖女だったら一つ浄化するだけでも大変そうだ。
それにしても聖女の浄化が魔力で行使されるのならば、私は浄化以外の物も使えるのだろうか。使えるなら、浄化以外の魔術も使えるようになりたい。というか、浄化よりも攻撃の魔術の方が私に似合う気がするし。
ただ、
「他の魔術? 聖女様は浄化が出来ればいいんですよ」
魔術師に浄化以外の魔法の話をしたら、ばっさりとそう言われた。
やはり王子達って私に力を持たせたくないという雰囲気をひしひしと醸し出している。
勝手に学ぶかな。
そんなことを考えながら帰路についた。