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森へ

「――街になど聖女は行かなくていい。何か欲しいものがあるのならば、私たちがそろえよう」

 街に行きたい、と言う言葉はすぐに却下されてしまった。憂いを帯びた目でこちらを見てくる王子。その表情に心配してくれているのだと少し絆されそうな気分になる。危険なのだからなどと言われて、正直街中でそんなに危険ってどんだけ物騒な街なんだろうかと考える。

 やはり、私を何も知らないままにさせたいのだろうかと思う。何度も言っても街には出さないという強い意志を感じたので、一旦その場では引き下がった。ただし、あきらめてはいない。

 私には何よりも情報が必要だ。自分のことが何も分からないという現状はよろしくない。情報を集めなければどうしようもないのだ。

 よし、ひとまず浄化が終わってからまたどうにか街に出れないか交渉してみよう。そして、どうしても駄目だと言われた場合は、無理やりでも抜け出そうかと考えている。

 それまで大人しくて、王子たちの油断を誘っておかないと。まぁ、もちろん、向こうが折れてくれれば一番いいんだけどね。

 そんなことを考えながら引き下がった数日後、私は森に向かうことになった。もちろん、瘴気の浄化をするためである。

 旅のメンバーだけではなく、領主の館から派遣された数名の騎士も一緒だ。ただし、やはり、こう……なんというか、聖女の護衛としては人数が少ないと思う。何か目的があるのだろうか。

 王子たちは相変わらず私に優しくしている。寧ろ好意を抱いているかのような態度を示している。

「聖女、俺達がいるからそんな風に心配をするな」

 森の中も馬車で移動だ。ただ、舗装されていない道なので、揺れがひどかった。馬車から外を見れば、空気が濁っていた。

 黒いモヤのようなものがそこら中に存在していて、瘴気の傍にいると少しだけ気持ち悪くなる。王子達も少し顔色が悪い。……結構な濃度の瘴気がたまっている。これははやく対処しなければならない問題だろう。獣の声も聞こえてきて、不気味だ。

 昼間なのにこんなにも怪しい雰囲気が醸し出されているのは、明らかに瘴気の影響だろう。

 ぱぱっと瘴気を浄化して、街に戻りたいと思った。そんな考えがまず疑問に思う。私って心の底から瘴気の浄化が出来ると分かっているような思考なのだ。やっぱり、自分が不思議だ。

「聖女、魔物が出た。馬車から出ないように」

「すぐに片づけますからね」

 騎士団長と魔術師が魔物を退治するらしい。馬車から出ないようにとは言われたので、大人しく馬車の中からその様子を見る。

 魔物は狼のような姿をしたものだった。大きくて、噛まれたらひとたまりもないだろう。ただ恐怖心は不思議となかった。魔物とか見るの初めてのはずだけど落ち着いている。

 騎士団長は腰から引き抜いた長剣で魔物に切りかかる。あれだけ素早い魔物相手に、的確に切りつける技術にほぉ……と言う気持ちになる。騎士団長なだけあって、実力は確かなのだと実感した。魔術師が使っているのは、水の魔法だ。水の刃で魔物を絶命させた。良いコンビネーションだと思った。

 魔物は素材をはいで、肉は食料として食べるらしい。解体をしている様を見ようとしたら、聖女である私は見なくていいと言われてしまった。解体をすると聞いても特に怖いとか湧いてこなかった。やはり、私は私自身が不思議だ。

 瘴気のたまっている場所はもう少し先らしいので、食事を取ってから奥に向かうことになった。

 この森は広い。瘴気のたまっているのは、奥の方らしいので浄化したあと街に戻るのは夕方や夜になるだろう。

 焼いた魔物の肉は味付けがされていて美味しかった。外でもこうして美味しいものが食べれるのは良いことだと思う。

「聖女様は落ち着いておられますね」

「皆様が守ってくださるので安心しているのです」

 神官の言葉に、とりあえずそう答えておく。私自身が妙に落ち着いているのは事実だが、一緒に旅ししているものたちが魔物に引けを取らないというのが先ほどの戦闘で分かったので安心しているのも事実だった。

 たとえ、騎士団長たちが弱かったとしても私はこんなに落ち着いているだろうか。うーん、分からない。

 食事を取っている間にも瘴気が充満しているのが分かって、振り払うかのように手を振ったら私から瘴気が離れていった。振り払うだけで効果があるのかとびっくりした。気持ち悪くなったら今度から振り払おう。ただ、振り払っただけなので、森の浄化には瘴気がたまっている場所で正式に浄化しなければならないだろう。

 瘴気の浄化は、祈りをして出来るみたいな話を聞いたけど、振り払っただけで少しの効果があるなら別のやり方でもなんとかなるのではないかとかそんなことを考えてしまった。


 食事をしたあと、奥へと向かう。





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