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街に到着。

「ここが最初の街、サブラだ」

 騎士団長がそう言って、私に手を差し伸べてくれる。その手を取って馬車から降りたら、豪邸の前だった。

 領主の館に滞在して、街の南にある森の瘴気を浄化するという日程らしい。それにしても、街を見に行ったりは出来ないものだろうか。聖女に関する情報を集めたりもしたい。でも、私の白銀の髪が聖女の証だというのならば、下手に動けば目立ってしまうかもしれない。

 うまくお願いをすれば、街に出ることが可能だろうか。頃合いを見て、街を見たいと言ってみようと思う。

「これはこれは、聖女様がこうして我が街に来てくださるとは幸栄です。ご滞在中、どうぞ、ごゆっくりとしてください」

 領主は、四十代ほどの細身の男性だった。髪の色は青い。彼はにこやかな笑みを浮かべて、私を歓迎しているといった態度をとっている。聖女を特別視している様子だ。

 街についてすぐに出発することはなく、翌日から浄化に出かけるという日程のようだ。

 領主の館の客室に案内された私は、ソファに腰かけ一息をつく。

 王宮ほどではないけれど、領主の館はやはり家具などが高価なものが多いように見受けられた。

 明日、聖女として私は初めての浄化に向かう。王子たちは疑ってないようだが、浄化は出来るのだろうかとも思う。……もし出来なかったらお役目ごめんになるんだろうか。それで放り出されるなら、それはそれでいいかもしれない。処分されなければなんとかなる気がする。

 侍女として王宮からついてきたノイノは、基本的に私の傍に控えているのが使命なようだ。ただ、24時間働くことは出来ないので、領主の家に仕える侍女たちも身の回りの世話をしてくれるらしい。ほぼ傍にいるノイノは中々私の傍を離れなかったが、離れるタイミングが出来た。ノイノが席を外したタイミングで部屋にやってきた侍女に声をかけた。

「聖女について、一般的にはどんなふうに伝わっているかなど教えてもらえますか? 自分のことも分からないので情報が欲しいんです」

 ノイノがどういう役割で私の侍女としてついてきているのかも分からない。私が情報を知ることをよしとしないかもしれない。一般的に聖女とは何なのかというのも聞きたかった。片方だけの意見を聞いて鵜呑みにするわけにもいかない。

「聖女様についてですか。聖女様はこの世界にとって特別な存在です。瘴気を浄化する力を持っていて、神が人々の嘆きを聞いて遣わせてくれる存在だと聞いておりますわ。だから、こうして聖女様のお世話をすることが出来て、とても光栄なのです」

 目をキラキラさせて、その侍女はそう言った。

「そうなんですね」

「はい。それに森の南に数年前から発生した瘴気により、魔物が多く出るようになってしまっているのです。ですから、聖女様がこうしてこの地に訪れて、浄化をしてくれるということがとても嬉しいんです」

 数年前って……、何で数年間も聖女の召喚をしなかったのだろうか。瘴気は月日が経つにつれ、濃くなっていき、危険度が増していくはずだ。だからこそ、聖女の召喚は即急にしなければならないことのはず……。

 この情報、どこ情報なんだろうか。私は、当たり前みたいに瘴気を理解している感覚になっているのだろうか。本当に、色々謎過ぎる。

 数年前から瘴気が現れている事に関して聞こうと思ったタイミングでノイノが戻ってきてしまった。そのまま、詳しい話を聞く事は出来なかった。

「聖女様、明日向かう森では――」

「ゲリー殿下たちが――」

 と、ノイノが明日のことの説明などをずっとしてくれていたからだ。

 ノイノも私が浄化を失敗するなんて欠片も考えていない様子だった。そこまで信じ切る要因って本当になんなんだろうか。やっぱり、この髪? 相変わらず違和感しかない聖女という呼び名と髪の色。聖女が自分の呼び名という感じもしないし、髪の色は鏡を見るたびに驚くものだ。

 やはり、情報が欲しい。

 どんな些細な情報でもいいから、何かにつながるかもしれないから――、情報が欲しい。

 そのため、屋敷の中を歩く許可をもらった。もちろん、ノイノは一緒だけど。

 退屈しているなんて理由をつけて、屋敷を歩く。

「――……の鎧が出品されていたって話があって」

「えー!? 亡くなれたのかしら?」

 仕事中だろうに世間話をしている侍女たちの声が聞こえてきた。誰かの鎧が出品されているという話題だ。何の話だろうと気になったけれど、「聖女様の前ですよ! お仕事を真面目になさい!」というノイノの叱咤に、彼女たちは話をやめてしまった。

 私の前だろうと話をしてくれて構わないのに。寧ろ、何でも聞きたいぐらいなんだけど。

 役に立つか分からないけど、脳内メモに有名人っぽい誰かの鎧が出品されていたことをとどめておこう。もちろん、数年前から瘴気が発生していることも。

 ノイノと会話をしながら屋敷を歩く中で、少しずつ周りが話す声を拾った。この屋敷で働くものたちは領主同様、私に良い感情を抱いているものたちばかりのようだった。もっと違う観点から私を見てくれる人が欲しいんだけど……、やっぱり街に出たいと言ってみるべきかと私は考えるのだった。

 


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