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旅立ちの準備

 旅立ちの準備、とはいっても私にできる事はほとんどない。

 自分の荷物などというものはないし、荷造りは城の方でしてくれている。瘴気を浄化するための練習というのも特に言われていない。それでいいのだろうか。

 瘴気の浄化をするために呼ばれたらしい私が、例えば瘴気の浄化を出来なかったらこの人たちはどうするのだろうか。などと考えながらも、私がやっていることと言えばやはり自分について考える事だった。ここの人達は私の名前とかを一切気にしていない。ただ私が聖女であれば構わない、というのはよく分かる。

 一応、もう体が回復している事は報告している。とはいえ、準備もあるのですぐに明日にでも出発するという事はないらしい。

 目覚めてからというものの、私は甲斐甲斐しく侍女達に世話をされている。その中でペンダントを外したらどうかと言われたこともあったがなんとなく外したくなくてそれは拒否した。

 お風呂にも一人で入らせてもらえないって、何だか落ち着かない。大体、この世界ではお風呂なんて王侯貴族ぐらいしか入らないはず……。こんな甲斐甲斐しく世話をしといて、瘴気を浄化するための旅に出たら風呂は入れないだろうから、聖女が私ではなかったら大変だったかもしれない。

 ……それにしても謎なのは、時々この世界の常識か何かを私が知っている事。

 忘れているだけで知っている事実なのか、それとも異世界転移するにあたって情報を誰かが入れてくれたのか。

 分からない事ばかりだ。

 旅に出て見れば、何かしら分かったりするだろうか。

 聖女と言う存在についても王城にいる人達からの情報だけだとそれが正しいものなのかどうかも分からない。

 もっと違う立場の人とも私は話してみたい。

 そうする事で、これからどうするべきかも判断がつくのではないかと思った。

 私は無垢な様子を装って、傍に控える侍女にこの世界の情報をねだった。 

 この国について。そしてこの大陸について。聖女について。

 このディル王国は、瘴気に侵されて大変な状況であるらしい。そのため、聖女が呼ばれたという事で王国内は歓喜にあふれているそうだ。

 この大陸には十数個の国々が存在していて、このディル王国は大国のようだ。それでいて侍女が他国を下に見ているような発言をしていた。この国の王族は神にも等しい存在なのだと崇拝するような言葉にはうわぁと思った。

 それで聖女は数百年に一度、瘴気が世界を覆いつくすその時に、異世界より呼ばれる少女なのだそうだ。異世界から呼ばれた聖女は、正しく世界の救世主なのだと言われた。

 ちなみに昔呼ばれた聖女は王子と結婚したのだとか。……やっぱり帰れないパターン? 聖女という特別な立場の少女と言うのが今の私だ。恐らく私を国に取り込みたいとは思ってはいると思う。

 取り込まれる気はないけれど、取り込まれないためにどんなふうに行動すべきか。それも考えないといけない。

 旅立ちまでに私が出来る事は、情報収集ぐらいだった。


 それと、旅立ちまでの間も忙しいだろうに最初に見た男たちはよくやってきた。

「聖女、元気にしているかい? あまりこちらにこれなくて済まない」

 そう口にする王子に対して、私は別に来なくてもいいのになと思いながらも笑みを張り付けた。

「聖女、旅には我らも同行する。安心してもらってかまわない。何があっても聖女は我らが守る」

 そう口にする騎士団長に対しては、特にトキめきも何も感じない。

「聖女様、本当に美しいです」

 にこにこと笑いながら私を美しいという魔術師にもやっぱり何もとくには感じない。

「聖女様、聖女様の浄化の旅に共に行ける事を私は心から幸栄に感じられます」

 キラキラした目でこちらを見つめる神官に関しても、へぇーとしか思えない。

 やはり、何処か私はおかしいのだろうか。こんな美形達に近づかれて何も感じないとか。まぁ、警戒しなければならない場だからというのもあるだろうけれども、それとも記憶を失う前の私には好きな相手でもいたのだろうか。

 だとしたら思い出したら悲しいかもしれない。だって召喚されたとしたらそのおもい人は地球にいる事になる。……まぁ、思い出してみないと実際に私に好きな人がいたのかどうか分からないけれど。

 私は記憶はなくしているけれど、本能的にすべてを忘れているわけではないのだとおもう。何だかんだで、基本的な自分としての軸は記憶を失っても残っているというか、そんなイメージ。

 というか、旅立ったら毎日こんな感じで傍にいられたりするんだろうか。そう思うと少し面倒だなと思う。……記憶を失う前の私がどういう人間だったのかも分からないけど、逆ハーレムという状況に喜ぶような人間ではなかったらしい。

 浄化の旅は瘴気のあふれる地に行き、浄化をする旅だ。その瘴気にあふれる地では魔物が出る事も多くある。不思議と恐怖など湧いていない。

 

 周りの侍女達や王子達から情報を聞き出していれば、旅立ちの日になった。

 集められた情報はそう多くはない。





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