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地上に戻ってからのこと。

「『聖女』様、ありがとうございます」

 地上に戻ったら領主にお礼を言われた。疲れているからということで、食事を取った後に私はすぐに部屋に戻った。

 流石に地下であれだけ奥深くに入って、戦いまでして少しだけ疲れた。なんというか、肉体的にはそこまで疲れていない。なんだろう、私には思ったよりも体力がある。だから疲れているのはどちらかというと精神的にと言えるだろう。

 ……というか、改めて考えていても私って存在が不思議だ。

 私は何処の誰なのか。それがいまいちチグハグで、分からない。

 ベッドに横になって、自分のことを考える。

 地下は思ったよりも深刻だった。私が浄化しなかったら、もっとネズミの魔物は増えていただろうし、あの巨大な魔物ももっと力をつけていただろう。そうなったらどうなっていたんだろうか。

 もっと人が死んでいただろう。

 ――やはり、これだけ深刻な状況に陥っているというのに、『聖女』しか瘴気を浄化出来ないっていうのは効率が悪い。

 瘴気が現れてからすぐに『聖女』が瘴気を浄化出来なかったからこそ、この事態に陥っている。

 っていうかそもそも瘴気があるのってこの国だけなのだろうか。前に他の国は浄化されてたっていう話も聞いたし、いまいち分からないことが多すぎる。

 あとマイケルのことも。

 地下に居た間、魔物の脅威もあったから深く考えることは出来なかった。地上に戻って、ようやく落ち着いて、考えることが出来るようになった。

 マイケルは……、わざと私の元へと魔物をやった可能性がある。

 焦った私に焦らなくていいとアドバイスをくれた。

 私は気づいたらマイケルの名を呼んだ。マイケルは当たり前みたいに、私の隣に並んでくれた。

 私に対して剣を貸してくれた。

 そして秘密ばかりなのに、なぜか剣について私に対して語ってくれた。

 ……なんだろう。よく分からない。魔物を私の方にやるのは、私を殺そうとしているかもしれないって可能性も感じられる。けど、私は彼の行為に悪意があるようには思えなかった。いや、もう何でなのか分からないけれどこう……マイケルって顔とか色々見えなくて怪しいんだけど、そういう風な嫌な感情ないんだよね。

 とはいえ、そうマイケルが思わせているだけかもしれないし、警戒心を怠る事は出来ないけれども……。

 あと、マイケルって剣使うの慣れてるのよね。本当に。あと、並んで戦うのに慣れてる様子だった。そういう誰かと一緒に戦うような立場にあったのだろうか。

 一番謎なのは、私自身の事だけど。

 剣が使えたってことは、剣道でもしていたの? いえ、でもそれだとおかしいもの。命を奪うことにためらいがないのはおかしい。もしかして、生き物を殺すのを地球でもしていたのだろうか。いえ、そういう興奮はない。中には生き物を殺すことに喜びを感じる人もいるかもしれないけれど、そういうのは感じない。

 マイケルは楽しそうだった。

 私が剣を扱う状況に驚きもせず、当たり前みたいに剣を差し出してきた。そしてただ面白そうにしていた。

 ……剣の話をあえてその場でしたのは何故だろうか。預かりものの剣。その元の持ち主が大切だからこそ出た言葉だろうか。なら、何故私に貸したのか。

「あー……もう分からない」

 本当に分からない。

 分からないことばかりで、少しだけ頭がいっぱいいっぱいになる。

 地下の瘴気の浄化を終えた後に王子がマイケルと話す許可をくれるかもって話だったけれど、本当に許可をくれるだろうか。

 ……私は私を知るためにも、マイケルと話をしたい。

 駄目だって言われたら無理にでも話そう。きっと私の知りたい情報をマイケルは聞いたら教えてくれるはずだから。

 ああ、そうだ。あとは武器を王子にねだろう。

 『聖女』にはそんなものいらないとか言われそうだけど、それでも私は武器が居ると思う。今回のように王子達が私を守れないことはあるだろう。王子たちが強いとはいえ、万能では決してないのだから。うん、そういう方向で話を進めてどうにか手に入れよう。

 あとどうしてもだめならマイケルからもらう事も出来るだろうか。……はぁ、考える事が沢山だ。

 瘴気の浄化、今回は地下で結構大変な状況だったけれど他の所もこんな風な場所があるかもしれないし。なるべくはやく浄化しないとならない。

 ……異世界人の『聖女』にこういう危険なことを全て任せるってどうなんだろうって思っちゃうけど、まぁ、この世界はそういう有り方なのだろう。

 歴代の『聖女』たちはこういう状況にいきなり放り込まれてどんなふうに生きたんだろうか。中には拒否した人もいたのだろうか……。うーん、そのあたりも知った方がいいかもしれない。



 私はそんなことを考えながら、眠りについた。

 今日は疲れたから、明日になったら王子達に話をつけよう。



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