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―――プロローグ―――
プロローグ
―小笠原沖海上―
戦時高速型輸送船十隻とそれを囲む様に護衛する第五十一艦隊は、南洋の一大拠点トラック環礁に向けて波静かな海上を航行していた。
駆逐艦「松」の航海長、大谷大尉は横に見える輸送船「日進丸」を眺めていた。
輸送船「日進丸」は船籍こそ日本郵船であるが、運用は陸軍が行っていた。
その船橋に「松」を眺める一人の陸軍軍人がいた。
名前は田口嘉雄、陸軍少佐で「松」の大谷大尉とは従兄弟の関係に当たる。
佐賀県から陸軍幼年学校を経て、士官学校を卒業したエリートである。
彼の物語は、この「日進丸」船上から始まる――――――