出産準備
夕食後、アレックスにこれからどうする?と聞かれた。
家族が増える。
今は屋敷のアレックスの部屋に住んでいるが子供の成長につれ手狭になる。
今のうちに家を出て独立しないか?という提案。
結婚した次男坊がいつまでも家にいるのは社会的に体裁が悪いだろう。
子どもが産まれて、このままここに子供が入ると…アレックスの睡眠まで妨げる。
それは申し訳ないとは思うのだけれども…
「最初は不安なのでお義母さん達と一緒の方が良いです」
ごめんなさい、このサポート体制バッチリのヌクヌク生活から、まだ抜け出したくない!
「というわけだ。アレックス、しばらくは諦めろ」
お義兄さんがゆりかごを持って部屋の中に入ってきた。
「いっその事、隣の空き地に家を立てちゃったら?」
後ろにはクマのぬいぐるみを持ったお義母さんが続く。
「そろそろ子どもの物を準備をしておきなさいよ」
その後にはおくるみを持ったお義姉さん。
「このゆりかご可愛い!」
「次はうちの子どもが使うから大事にしてくれ」とお義兄さんが言う。
「今度、子供用のベッドを注文に行くか」とアレックスが苦笑しつつ言う。
「子供用の服も準備しなくてはね。マリちゃん、頑張るわよ」とお義母さん。
その後、空き時間はお裁縫生活に明け暮れる事になる。
子供用の買い物の為に、アレックスと出歩く時間が増えたのは嬉しかった。
旅の時にも、彼のそばの居心地が良かったり、
好きな人と一緒に居たい気持ちもあって、
何かと理由をつけて彼のそばに居たんだけど…
記憶の中のアレックスの背景が荒地かペンペン草か芋畑の三択なのだ。
大好きな人との記憶がそれだけじゃ、乙女としては悲しすぎる。