ジャージ また逢う日まで
「明日、仕立て屋に行こう」と夕食の席でアレックスが言った。
朝、何か言いたげにジロジロ見ていたのは洋服の事だったのか。
異世界に来てから、私はジャージと運動靴をこの上なく愛用している。
神官さん達は、悪い人たちでは無いけど、一般社会から隔絶した男子の集団。
女の子の服までは気が回らなかった。
謁見のための王宮入りで、女性の世話係がついた時に下着だけは用意してもらった。
召喚された日が週末で、洗濯の為にジャージと運動靴を持っていた日で良かった。
浄化の旅では四六時中ジャージを着ていた。背中のゼッケンは外した。
マメに浄化しているので綺麗だが色気は皆無だ。
結婚した時に、アレックスがこの世界の服をいくらか用意してくれたけど、
今でも仕事中は動きやすいジャージを愛用している。
おなか周りが余裕がなくなって来たかな~と思っていた。
これからも愛用する為にジャージには少しお休みしてもらおう。
というわけで、仕立て屋にやってきた。
職場にはアレックスが前日の時点で午前休みの連絡をしていた。
結婚当初に用意した外出着はすべてお腹が閊えた為…本日もジャージである。
セーラー服なら入るのだが…アレックスがダメだというのでやめた。
胸周りとおなか周りに余裕のあるデザインで作る。
仕事用のパンツスタイルと、外出着を数点。
織物職人がジャージを興味津々という様子で見ていた。
ポリエステルはこの世界に無い素材なので、見るだけにしておいてほしい。
間に合わせの一着、ウエストに余裕のあるベージュのズボンとシャツを購入する。
裾とウェストを紐でしめるように急ぎでやってもらう。
アレックスの意見で上に茶色のエプロンスカートを合わせる。
可愛い、ちょっとテンションが上がる。冷えない、動きやすい、良いのではないだろうか?
職場の近くの食堂でアレックスと昼ご飯を食べる。
「ちゃんとしたデートするのは初めてだね」と言ったら、
アレックスが行けるうちに色々行こうと約束してくれた。