働き始めました
「隊長さん!私、仕事がしたいです」
「アレックスだ、隊長さんじゃなくて名前で呼ぶように」
妊娠5か月目、安定期に入り動けるようになった。
家事をするにも、女手は既に二人もいる上に使用人までいる。
というわけで、本日はアレックスたちと一緒に出勤する事になった。
薬師の見習い兼小間使いのお仕事を準備してくれた。
軍隊の演習場の隣の、薬草畑の中の建物が私の職場だ。
「たいちょー、あっ恐怖のオカン!」
「来たな!恐怖のオカンよ」
「本当のオカンになるなんてなあ」
「ふっふっふ、恐怖のオカンは四天王の中では最弱…」
久々に会う兵士たちは、まあ歓迎してくれているようだ。
薬草の栽培、採取、調合まで、習いながら作業していく。
時々怪我をした兵士たちがやってくるので対応する。
「オカン、またお前か!」
「嫌ならほかの人に代わりましょうか?」
「いや、オカンが良い!」
結局のところ、私が一番優しい事を彼らは知っているのだ。
手順は旅の時と同じ。
微温湯で傷口を洗浄して薬を塗ってガーゼと包帯を巻く。
傷が回復するまでは毎日来るように指導する。
手に負えない骨折や止まらない出血は、闇魔法で本人を眠らせた後に医者が対応する。
医者に指定された範囲に向け、限定的に強めの闇魔法をかけて痛みの感覚を遮断する。
「よし、じゃあ嬢ちゃんは危ないから離れとけ」と医者に言われる。
兵士に抑えさせて縫合やら整復やらやっているのを、離れているところから観察する。
処置が終わった後に、光魔法をかけて闇魔法の効果を和らげる。
後は本人の目が覚めるまで休ませて、起きたら温かい食事を与え、
迎えの兵士を呼んで家に連れて帰ってもらう。
帰りはアレックスが迎えに来て二人で帰る。
「マリちゃんがいると仕事が楽だよ」とイケメン薬師さんが言うのを聞いて、
彼は嬉しい半分、困った半分という顔をしていた。