1/24
帰還…できませんでした
異世界で恋をした。好きになってはいけない人だった。
逃げたかった。かなわない恋から。
彼と婚約者の幸せそうな姿を見たくなかった。
私には帰るべき場所がある。
大丈夫。いつもの日常に戻れば、恋なんてすぐ忘れてしまうはずだ。
神殿の奥の祈りの間で、祈りの歌声が響く。
周囲を神官に囲まれて、手をつないで真ん中に立つ私と清良。
祈りの歌声の高ぶりとともに私たちの頭上に眩い光が立ち込め…
「ま…り…」
「きよら!!」
驚愕の表情を浮かべる清良だけが光とともに消えた。
「どうして・・・」
呆然として背後を振り返ると神官たちが途方にくれていた。
元の部屋に案内される。
休むよう言われ、そのままの恰好でベッドに横たわる。
横になると、眠気に襲われてうとうとしてきた。
昨夜、気が張って眠れなかったからだろうか。
休めというからにはすぐに追い出される事もないだろう。
ひと眠りすることにした。