魔族とは何ぞや?
この世界には人以外に多くの種族が存在します。その一つが私たち魔を帯びた者、通称『魔族』です。
魔族は他の種族と違い好戦的で邪悪な者が多いです、そのため他の種族からは敵対視されました。しかし全ての魔族が好戦的と言うわけではなく時には穏やかな者たちもいます。その者たちが身を寄せ合い、住み始めた地が魔界の始まりと言われています。
そして長い時が立ち魔族にも多くの種類が生まれました。
【竜種】
空を支配する古くから存在する種、体は鱗で覆われ鋭い爪に口に収まりきらない大きな牙。長寿でありながら気性が激しく、たびたび魔族の代表を名乗り多種族に虐げていました。ですが一匹が人間に倒されたことで事態は変わりました。竜から採取した素材は人間世界では非常に役立ち、高値で売買されました。そのため人間による乱獲が多発し全盛期の半分も数が減りました。そして今では種の存続のため、人が踏み込められない秘境でひっそり身を隠して暮らしているのです。そしていつの日か再び魔族の頂点に立てることを夢みるのです。
タラスク、ファフニール、ワイバーンなどが該当。
【幻獣】
魔族で一番少ない種、文字のごとく幻の獣とされ中々姿を見かけません。人間ですら幻獣について忘れている者が殆どです。しかしあまりの希少さにより人間に見つかると場合によっては神聖視されます。その姿は多種多様で生息地域によって変わります、そのせいで自分と同じ個体に出会えず生涯を終える個体が続出してます。出会えたとしても発情期が個体によってにバラつきがあるため今度は繁殖に悩まされることになるのです。魔族の中で一番個体数を増やせない悲しい種なのです。もし見かけたらそれとなく同じ個体を探してそっと教えてあげてください。
バイコーン、ユニコーン、フェニックスなど該当。
【合成獣】
他生物の交配の結果生まれた種であり、体に動物の要素を部分的に持つ物が多いです。例えばキメラなどはライオンの頭にヤギの胴体、蛇の尻尾を持っています。余談ですが頭と尻尾にはそれぞれ意思が宿っていて意見の食い違いで度々喧嘩するのです。そしてその姿を多くの種に目撃され微笑まれるのが日常です。現在では番えなかった幻獣が別個体と交配し新たな合成獣を増やすことが増えています。なるべくは同じ個体を紹介してください。
キメラ、グリフォン、ケルベロスなど該当。
【獣人】
魔が宿った獣に知性が芽生え人のように二足歩行を始めたのが獣人の始まりです。魔物と混同されがちですが彼らには彼らなりの誇りがありますので、尊厳を踏みにじられると激怒します。正しく認識しましょう。昔は狼型の獣人しかいませんでしたが昨今では猫、犬、狐など種類が増えつつあります。しかし動物としての本能が強いため獣人同士による縄張り争いが絶えません。さらに発情の周期が早く一度に多くの子を産むので種族維持に困ったことがありません。逆に増え過ぎる個体によって魔族のパワーバランス崩壊が懸念されています。
ワ―ウルフ、ケンタウロス、ミノタウロスなど該当。
【亜人】
限りなく人間に近いけれど身体的な特徴や能力により人間を上回っている種。そして人間よりも美しい容姿や体格をしている場合が殆どです。しかしそれが仇となり不穏な日々を送っています。何故ならば人間によってはその血肉に不老不死の能力があると信じている者たちが多く存在し、食用として生死を問わず狙われます。捕まった場合は高値で売買され食べられるか、あるいは鑑賞用品扱いされ一生故郷に帰ることが出来ずに終わってしまうのです。幼体は成体の言うことをよく聞き一人で出歩くのはやめましょう。
人魚、ハーピー、ラミアなどが該当。
【アンデッド】
人間の死骸に魔が宿り一人でに動き出す種。その死骸の状態によってさらに細かく分類され肉体がある場合はゾンビ、肉体が腐敗し骸骨しかない場合スケルトン、肉体が消滅し魂に魔が宿った場合ゴーストになります。人間の死骸によって生まれる種であるため思考は生前の人間のままです。そのため人間を嫌悪する種からの迫害が多いです。アンデッド化する際に意思が目覚めない個体がいます、その個体による暴走がアンデッド迫害に拍車をかけているのが現状です。
ゾンビ、スケルトン、ゴーストなどが該当。
【魔人】
人型を模しているがアンデッド以外の種の要素を持ち合わせる種。デーモンなどは巨大な体に哺乳類の羽、爬虫類の尻尾に鋭い角で構成され恐ろしい姿をしています。かと思えば夢魔などは人を惑わす程の美しい姿に哺乳類の羽、鞭のようにしなやかで長い尻尾、さらにはヤギのようにカーブした角で成り立っています。個体によって容姿の差が激しいのが魔人の特徴です。
デーモン、夢魔、エキドナなどが該当。
基本の7種を紹介しましたが魔界にはこの他にも多くの種族が存在します。ちゃんと自分の種類を把握してより良い魔族ライフを送ってください。
――――幼体でもわかる種族の違い、第66ページより――――
*
「子供向けじゃない…」
「?もう少しでお夕飯が出来るので待っててくださいね?」
「うん…」
父さまは帰ってすぐ書斎に籠り、母さまは夕飯の支度、そして私は暇…じゃなくて読書の最中である。いや本当はお夕飯のお手伝いしたかったけどやんわりと断られた。そして夕飯が出来るまでの間にと母さまから幼児向けの本を渡されたのでリビングにある赤いソファーの上で静かに読んでいた。
しかし貰ってすぐに重さと厚みに嫌になったので気になる頁から読んでみたけれど…魔族めっさ奥が深い。しかし読んで気になったのは自分が種族が何なのかである。前世でのハーフと言う概念が魔族では合成獣に該当すると思うのだけど、自分の見た目は魔人に一致する。うむよくわからないので夕飯の時にでも聞こう。
「ニーナ夕飯がそろそろ出来そうなので、ヴィルを呼んできてくださいな」
「はーい」
魔族の設定が何だか違うよ!って思っても、この小説ではこうなんだってことで目をつぶってください。
あと鵜呑みにしちゃだめ。