三話
トウィンカの家には食料といったものが全くなかったので、アリエの持っていた携帯食料を少しわけてもらい、食事をすませた。
申し訳ないから少しでいいと言ったのだが、アリエはたくさんあるからと言って、お腹いっぱいになるまで干し肉やパンをくれた。
「ウィン、今日家を出てしまって本当にいいの?」
アリエなりに気を使ってくれているのだろう。トウィンカはその気遣いに首を横に振る。
「ううん、今日でなくちゃいつまでもずるずると引きずっていきそうな気もするから」
「そう。じゃあ、荷物を準備出来次第、出発しましょう」
トウィンカはそれに頷き、衣服やその他もろもろ必要なものを鞄に詰め込んでいく。幸いトウィンカの持ち物は少なく、数十分もしないうちに作業は終わった。
「本当にそれだけでいいの?」
量はアリエの半分ほどしかなかった。王都に荷物があり、着替えや食料を詰め込んでいるアリエよりも少ないその鞄の中には本当に必要最低限のものしか入っていない。
トウィンカはアリエにいわれるように、もう一度中身をチェックする。アリアからもらった結晶を首にちゃんとかけてあるのを確認し、決して忘れてはいけないもの、マニキュアが入っていることを確かめしてチャックをしめた。マニキュアがなければ、トウィンカはずっと手袋をはめて生活しなければいけない。
トウィンカの爪はピンクではなく真っ白だからだ。
それは人間から見れば、気色の悪いことなのだろう。母は綺麗な色だといっていたが、人とあうときは必ずぬるように、とトウィンカに言い聞かせていた。
手袋はいろんな作業をしているとすぐに破れてしまうが、マニュキュアならば容易にはがれることはないため、小さいころからマニュキュアを愛用していた。
「アリエ、行こう」
「ええ」
トウィンカは今まで住んでいた家に深く頭を下げる。もしかしたら、戻ってくることがあるかもしれないが、これで最後になるかもしれないからだ。トウィンカとアリアの思い出がぎっしりと詰まった家だった。
「今まで、本当にありがとう!」
トウィンカは家に感謝を述べたあと、アリエと出会った森へ、今度は友達のアリエとともに足を踏み入れた。