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十九話

ぶち、ぶち、と一定のリズムで音をたてながら草を抜く作業を続けること数分。それはまたもやアルによって中断することになった。


「だーれだ?」


今度はトウィンカの目を覆い隠して、声をかけてきた。その声の持ち主に、アルでしょ? と言ってやりたかったがそれを止めたのはトウィンカの心の奥に潜んでいた思いだった。

目を覆い隠すどころか、顔を半分以上隠している大きなアルの手。その手は少しひんやりとしていて、ずっと外で草むしりをしていたせいか気持ちがいい。トウィンカと違って、見かけとは裏腹にごつごつしたそれは、剣を握ったりしてできたものなのだろう。

小さい頃の遊び相手はいつもアリアだった。別に嫌だったという訳でもないが、同い年の子どもと一度も遊んだことがなかったトウィンカにとってこのような行動は新鮮さを感じた。妙な感激と嬉しさが心に浮かぶ。


「ウィンちゃん?」


「え、ああごめん。アルの手が冷たくて気持ち良かったからつい」


今思っていたことを全部口に出してしまえば、アルがそれをネタに遊ぶのが目に見えている。思っていたことの一部だけを話せば、アルはその手をトウィンカの首に巻きつけた。いきなり首にきた冷たさに小さな悲鳴を上げれば、アルが肩を震わせて笑う振動が手から伝わってくる。


「もう」


「あはは、ごめんごめん」


頬を膨らませながら、アルを睨みつけようと後ろを振り返れば、その後ろに人が立っていることに気がついた。

真後ろにトウィンカに合わせてしゃがむアルを見ようとしたため、最初に視界に映ったのは城を基調とした軍服だった。視線をゆっくりと上げていって映るのは、その手に嵌める白い手袋、肩にかかった燃えるような赤い髪。端整な顔立ちを少し歪ませ銀色の瞳は敵を見るかのようにトウィンカを射ている。


「ホープ」


思わずその名を呼んでいた。呼んだと同時に、トウィンカに向ける瞳は一層鋭利な刃物のようになった。ホープから目を逸らす訳にもいかず、お互い向けたまま動かない。


(逸らせば負けたような気になるし、何より仲良くするんだったら、逸らすのは良くないよね……)


透き通るような銀色の瞳が綺麗だなあと少し見当外れなことを考えながら、その瞳を見つめ続けること数分。アルがその空気に耐えられなくなったのか、トウィンカとホープの間に立った。


「君たち、俺をいつまで無視し続ける気? それって結構ひどいと思うんだけど」


表情は満面の笑みなのに、目は全く笑っていない顔を向けれてあははと笑って返す。アルの行動に人知れずほっと息をついた。


「すまん」


「ごめんなさい」


気まずそうにアルへ謝るホープに続いて、トウィンカも謝る。


「わかってくれればいいよ」


それより、とアルは先程とは打って変わってきらきらとした笑みをトウィンカに向けた。


「さっきの約束忘れてないよね?」


「草むしりが終わったらアルの相手をするって話?」


「そうそう」


「でもこれだけの量、三人でも一日じゃ無理よ?」


たとえドラゴンのホープと、女性よりは体力があるアルが草むしりを手伝ったとしても、一日では無理だろう。わざわざアルが手伝うより、トウィンカの仕事が終わるのを見計らってアルがトウィンカの元に来る方が早いに決まっている。

首を傾げていると、アルはホープを指さした。


「だからホープ君に焼いてもらおうと思って連れてきたんだ」


「焼いてもらう?」


言っていることを意味が分からず、ホープの方に視線を移せば、またかとでもいうようにホープはため息をついていた。

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