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十六話

そして次の日。

あの後、すぐに就業時間だということで仕事一日目を終えたトウィンカは夕食をとってすぐに眠ってしまった。

環境が変わり、一日で色んなことが起こったせいで体が疲れていたのだろう。アリエが布団をはがしに来るまで爆睡していた。眠たい目をこすりながら、仕事着であるメイド服に着替え、髪を整える。

朝の食事は食堂もあるが、少し距離があるということでトウィンカの部屋で三人集まって食べることになっていた。

トウィンカが全てのしたくを整える頃には、食事の準備も出来ており、少し申し訳なく感じる。


「ごめんなさい、何もかもやってもらっちゃって」


「気にしなくていいのよ。まだここに来て二日目だもの。慣れなくて仕方ないわ」


フラリスは目元を和ませながら、ティーカップに紅茶を注ぎ、トウィンカに座るよう促した。

トウィンカはイスを引いて座ると、フラリスやアリエも席につく。そしておいしそうな匂いにつられて、食事は始まった。もちろん三人は竜騎士メイドなので、話はおのずとそちらへ向いていく。


「今日の仕事の事なんだけどね、トウィンカには少し違うことを頼みたいのよ」


「玄関ホールの掃除じゃなくてですか?」


「ええ。玄関ホールの方は私とアリエで行うわ。二人ペアで仕事をしてもらうっていった次の日にこんなことになってしまってごめんなさい」


申し訳なさそうに謝るフラリスに手を横に振り、大丈夫だということを告げる。


「いえ、それは問題ないんですけど」


どうして、という疑問がトウィンカの頭の中に浮かぶ。

玄関ホールの掃除はまだ少ししか終わっていない。新人とはいえ、トウィンカが抜けたら負担が余計に増えるだろう。

トウィンカの浮かべた疑問が分かったのか、フラリスはすぐに理由を教えてくれた。


「それが、竜騎士の建物の後ろに昨日たまたま用事があって行ったのだけれど、草がすごくてね……。誰も日頃行かないとはいえ、このままじゃ少し駄目かなあと思って」


フラリスの表情が困った笑みに変わり、苦笑をこぼす。

竜騎士の建物の後ろで、誰も見ないからといって放置していい場所ではない。それに、アリエやフラリスがやるより、力のあるトウィンカの方が向いているだろう。


「玄関ホールの掃除が終わり次第手伝いに行くから、それまでは一人でお願い出来るかしら?」


「大丈夫です、任せて下さい!」


「頑張ってね、ウィン」


「うん」


ウィンカたちは朝食を済ませ、竜騎士の建物前まで辿りつくと、二手に分かれた。

来る途中、草を入れるためにもらった袋を手に建物をぐるっと回ると目に入ったのは背丈を超えるような大きな草、ではなく土が見えないほどに生い茂ったひざ下ぐらいまで生い茂った草だった。


「これはすごい」


風が少しでも吹けば、絨毯のようになびき、枯れた葉などは一つもなく、抜くのに少し苦労しそうだ。

しかしそこで途方にくれるトウィンカではない。相手が強大であればあるこそ燃えるのだ。


「よし、やるぞ!」


トウィンカは普段より少しだけ大き目の声で自身に喝を入れ、作業に取りかかった。

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