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十四話

城の門の前にある橋を渡ると、業者が本の受け渡しにきていることに気がついた。

まだ夕方より少し前だが、無事に届いたらしい。本を受け取った警備の人に頭を下げ、本を受け取る。一冊一冊結構な重さがあるが、持てないことはない。途中まで運ぶのを手伝うと申し出てくれた警備の人に礼を言って断り、アリエとともに竜騎士の建物へ運ぶことになった。


「ねぇ、ウィン。私ももう少し持つわよ?」


アリエが持っているのは街で大量に買ったマカロンの入った紙袋と、本が二冊。それに対してトウィンカは七冊持っているから、アリエが申し訳なさそうな視線を送ってきたのだろう。


「大丈夫だって。これくらい重くないし、アリエだってマカロンの入った大きな紙袋持ってるからそれ以上持ったら大変じゃない」


「でも」


「これくらいどうってことないよ。まだ余裕あるくらいだし」


両手に抱えて持つ本を立ち止まって、片手で持って見せる。両手で持っていたのはバランスがとりにくかったからで、実際は片手で持てるくらいの重さだ。


「……ウィン、あなたそれどれくらい重いか知ってる?」


目を丸くしてトウィンカの手元を凝視するアリエに、トウィンカは苦笑するしかなかった。


「力だけは人一倍あるからね」


片手で持っていた本を両手に持ち直し、歩き出す。


「どうやったらそんなに力持ちになれるのよ」


「うーん、気付いたら結構な重さのものも持てるようになってたからなあ」


「うらやましいわ」


「そう?」


トウィンカは物心ついたころからすでに力持ちだった。この髪や目を恐れ、トウィンカは集落で仕事を任せてもらうことができず、日々の糧となる食材を得るための食費や生活に必要なものを買うお金はすべてアリアが稼いでいた。父がトウィンカが産まれてすぐに他界してしまったからだ。他界してしまった理由は、アリアは最期まで教えてくれなかったが、そのこともあってアリアは、トウィンカを産んだ後から病弱になってしまった体を酷使して、二人分の生活費を稼がなくてはならなくなったのだ。

健康で比較的力もあるトウィンカが稼げず、病弱なアリアが稼ぐ。そのことに小さいながら心を痛め、どうにかアリアの負担を少しでも減らしたいと思って家事や力を要する薪割りなど、家のことは全て引き受けたのだ。


「でも、アリエはそのままでいいよ。これから一緒の仕事だし、力仕事は私が引き受けるから!」


アリエは自分の腕とトウィンカの腕を交互に見つめながらため息をついた。


「生まれつきなのかしら」


「あはは……」


羨ましそうにトウィンカの腕を睨みつけるアリエの視線に苦笑いをこぼす。


「とりあえずは力仕事はトウィンカに任せるわ。とりあえずは、だけどね!」


「了解です」


話しているうちに竜騎士の建物前に着いたようだ。

竜騎士が見せる幻の山がある方向に進んで行けば、柔らかな風がトウィンカを包んで放すと同時に建物が現れた。


「あれ?」


「どうしたの?」


建物を前に足を止めたトウィンカにアリエが首を傾げていた。


「いや、初めて入ったときはピリって静電気が走る感触と強い風が吹いていたのに、今回はそれがないなぁと思って」


建物から出るときは何の感覚もないまま普通に出てこられたが、入るときは何かしら感触があるのだろう。初めての時と今回に差はあるもののそれを肌で感じ取ることができる。竜騎士の魔法とアリエは言っていたから、これは建物を守ったりする類の魔法なのかもしれない。


「そう? 私は毎回その感覚味わってるわよ。最初は入るたびに嫌だったけど、今はもう慣れたわ」


(毎回? あれ、でも……)


今トウィンカを包んだのは優しい風で、ピリっとした感覚もなかった。


「ほら、そんなこと気にしてないで行きましょう?」


「あ、うん」


トウィンカはアリエに急かされて、歩みを進める。しかしどうしても気になって建物に入る前に一度振り返り、魔法が使用されているであろう場所を見つめる。


(うーん?)


なぜなのか納得は出来ないが、説明できる人もこの場にはいないし、聞ける人物に心当たりがある訳でもない。


(まぁ、いっか)


 体に害があるわけでもないし、とトウィンカは心の中で結論づけ、アリエの後を追った。

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