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十一話

少して扉が小さな音を立てて開く。

扉の方へ顔を向ければ、フラリスが大きなバスケットとティーポットを両手に抱えていた。トウィンカはイスから立ち上がると、フラリスの持っていたバスケットの方をもらい、机の上まで運ぶ。


「ごめんなさいね、気を使わせてしまって」


「いえ、とんでもないです。それに重くなかったですし。あの、ところでアリエは? フラリスを呼びに行くっていって出て行ったんですけど」


「そうなの? もしかしたらすれ違いになったのかもしれないわね。私昼食を取りに行っていたから」


フラリスの視線の先には机に置かれたバスケットがある。大きさからして三人分取りに行ってくれたのだろう。隣にポットを置きながら、困ったような顔をしていた。


「私が今二階に行ってもまたすれ違うと大変だし……」


竜騎士二十七人棲んでいるこの建物は、城の半分ほどの大きさがある。端から端まで歩くのに数十分はかかるだろう。その距離を探しまわるのは、時間がかかるしすれ違う可能性も高くなる。


「じゃあ、ここで昼食の準備をして待ちませんか? アリエなら、見つからければ一旦戻ってくるとかしそうですし」


「そうね」


トウィンカたちはアリエの帰りを昼食の準備をしながら、待つことにした。

しかし準備と言っても、やることはたかが知れている。机をふいて、バスケットの中にある食べ物を出したり、ティーカップを並べたりするだけだ。

バスケットの中には、野菜や肉がたっぷり挟んで、一口ほどの大きさにカットされたサンドウィッチがたくさん入っていた。一つ一つ挟んであるものが微妙に違っていて、どれもおいしそうである。それをテーブルの真ん中に置くと、フラリスとトウィンカは椅子に腰をおろした。

やることも特になくなったトウィンカたちは雑談に入っていく。お腹もすいていたが、互いのことをよく知らなかったから、話す話題は尽きることがなかった。


「フラリスは五年前から働いてるんですよね。それって今は十八歳だから十四歳の頃からってことか。すごいなあ、私その頃は普通に遊んでましたよ」


「でも家事手伝いとか小さな仕事とか請け負っていたでしょ?」


「ええ、……まあ」


実際、家事手伝いはしていたものの、集落の子どもが請け負ってこずかい程度を稼ぐ仕事などは全くしていなかった。外見で気味悪がっていた集落の大人たちが仕事をくれようとはしなかったのだ。別に集落の人たちを責めようとは思わなかったが、そのことで母に迷惑をかけていたことを思い出し、言葉を濁してしまった。


「トウィンカ?」


「え、ああ、なんでもないです! それよりアリエってここに来た時はどんな感じだったんですか?」


話題を無理やりに逸らしてしまったが、フラリスはそれを追求してこなかった。それにほっと胸をなでおろし、フラリスの話に耳を傾ける。


「そうねぇ、今でこそ仕事をきちんとこなしてるけれど、昔は変なところで大雑把だったのよ」


苦笑しながら、当時のことを思い出したのか目元を和ませていた。


「あ、でもそれなんかわかるかもしれないです」


一週間かかるロビリィまでの道を半日に短縮するために森を突っ切ったりしている時点でその性格がよく出ている。それを話せばフラリスは口元を押さえて笑った。


「相変わらずなのね。今でこそこんなことしないけれど昔なんて、少しお茶請けのお菓子を買ってきてほしいっておつかい頼んだら、ホールケーキを買ってきたのよ」


「そうなんですか?」


「私もあれにはびっくりしちゃってね」


その時の様子を想像するだけで、トウィンカも笑ってしまった。お茶請けなんだから、小さなお菓子を数個か、もしくは何等分かにされたケーキを数種類買ってくればいいはずだ。


「さすがアリエ」


「ウィンには負けるわよ」


笑い合っていると、少し頬を赤く染めたアリエが扉を開けて入ってきた。恥ずかしさからなのか、歩く足音も少し荒い。


「アリエっ!」


「もう、私はフラリス探しに行ったのに、二人だけで楽しく会話してるなんてずるいわよ。しかも内容が私の失敗談だなんて」


空いているイスに腰をおろして、ティーポットに手を伸ばしながら、アリエは拗ねた口調でトウィンカたちを睨みつけた。


「ごめんってば」


「もう、しょうがないんだから」


でも本気で拗ねていないことは雰囲気で伝わってくる。アリエはすぐに満面の笑みを浮かべ、それぞれのティーカップに紅茶をついだ。


「それじゃあ、食べましょうか」


フラリスの言葉をきっかけに遅めの昼食を始まった。

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