十話
今日掃除する場所は玄関ホールらしい。
トウィンカはまだ二階には上がることができないことへの配慮だ。二階の窓ふきや廊下掃除はフラリスが行い、玄関ホールはトウィンカたちの担当になった。玄関ホールの掃除が終わり次第頼まれごとがなかった場合は業務終了らしい。やることが少ないといえばそうだが、これだけの広さを一人で掃除するのは中々大変だろう。
「まずは床をはきましょう」
竜騎士以外あまり訪れない場所だと言っても、玄関は家の顔だ。中途半端な仕事は許されない。
絨毯が傷つきにくい、とアリエから手渡されたタワシを使って撫でるように埃をとっていく。地道な作業の上に、絨毯が敷いてある面積はとても広い。時間がかかる作業ではあるが、綺麗になっていくのを感じると面倒くささよりもやる気の方が勝った。
どれくらい集中してきたのか、全てが終わるころは昼をすでにすぎていた。
絨毯のごみは綺麗に取り去ったが、まだ壁や窓、上って大丈夫なところまでの階段の掃除がまだだ。
「まあ、でも毎日やってるから地道に綺麗にしていけばいいのよ」
「そうなの?」
「だってこんな人数で全部できるわけないじゃない。竜騎士たちもそれがわかってるから、出来る範囲でいいって言われているの」
三日間ほどかけて一通りの掃除を終わらすらしい。それを繰り返しながら、竜騎士の頼まれ事をこなすのが竜騎士メイドであるトウィンカの仕事だ。
「とりあえず、昼食をとってから掃除を再開しましょう」
「うん」
アリエはフラリスを呼んでくると言って、二階へ続く階段を上がっていった、
トウィンカは掃除道具を部屋の中に片付け、アリエたちが戻ってくるまで、部屋の備え付けのイスに座って待つことにした。




