第7話 悪役では無い!
人とドラゴンは違う生き物である。しかし自分は人間の魂を持ち、人間の心を一部残していた。だから人里の近くに住み、町の人間と交流してきた。
しかしそれはこの世界の常識から見て異端だった。今日、自分はその事を知った。
「幼女の生贄を要求し、口の中でしゃぶる変態ドラゴンめ!大人しく成敗されろ!」
こんな事を言ってくる人間が押しかけてきたからである。
どうしてこうなったのかと言うと、事の始まりは自分が女神(偽)の像を破壊した事に始まる。
自分が像を破壊した時、けが人が出ないように周りに人がいない時を狙って吹き矢を撃った。しかし白昼堂々と破壊を行ったため自分が像を破壊した所は多くの住人に目撃された。
……もっとも巨体と黄金に輝く鱗があるので夜中でもすぐに気づかれたとは思うが。
神の使いのはずの自分が像を破壊したので町の住人は混乱に陥りかけたのだが、巫女ちゃんが神の神託を受けて偶像崇拝は駄目だと言ってくれたので騒ぎは起こらなかった。
その代わり町の住人は自分が起こした破壊の後を記念に保存し、大蛇の尾骨を御神体として残すなどの逞しさを町の住人は見せた。
そしてもう1つ残ったのが妹ちゃんである。そもそも神様の像を建てる事になったのは妹ちゃんが人間の姿を取り、その姿が神様に似ていると認知されたからだ。
その神様に似ている妹ちゃんの像や絵を残す事は偶像崇拝に繋がらないと像や絵はたくさん作られた。もっともそれらをあがめる事は禁止されたのだが。
そして作られた像や絵は他の弟妹たちのパワースポットの住人を通じて多くの人の手に渡った。
その過程の中でモデルとなった妹ちゃんの話が伝言ゲームのようにおかしくなって行った。
神の神子と呼ばれた妹ちゃんと黄金竜の巫女である巫女ちゃんの話が神子と巫女……つまりミコとミコで混ざり合い、さらに八首の大蛇と自分が混同された。
そしておかしくなった話が広まった結果、目の前の自称正義の戦士である。
相手との実力差が分からない困ったちゃんを吊るすと自分はため息をついた。何しろ今月に入って5人目なのだ。
どいつもこいつも女の裸を嘗め回す変態だとか、女性に体中を拭かせて悦に入る変態だとか、少女を調教する変態だとか人を変態呼ばわりする。そして今回は幼女を嘗め回す変態である。
まだ人食いドラゴンと呼ばれたほうがましである。
正直に言って疲れた。だから思い切って決心した。
人里はなれた場所に引っ越して引きこもろうと。
次回も外伝。巫女ちゃんの話になります。