第6話 偶像崇拝は禁止です
都合により予告とサブタイトルを変えました。
自分は一体何をしているのだろうか……
幼い子供を口の中に入れてペロリと舐めた。妹ちゃんが悲鳴をあげるのも頷ける、まごうことなき変態である。
自分がそう自己嫌悪をしていると、その間に生贄ちゃんからクラスチェンジした巫女ちゃんが自分の口もとまでやって来た。そして恐れることなく自分の口の中に入ると妹ちゃんの足を外して口の外にだした。
そのあと巫女ちゃんは自分の口から出ようとはせずにこう言った。
「ドラゴンさま。どうしてもペロペロしたいのなら私の事をペロペロしてください」
実は巫女ちゃんは変態である。もともとそうだったのか、生贄にされた時に目覚めたのか巫女ちゃんは自分が巨大生物に蹂躙される事を想像して快感を覚える性癖がある。
その所為で適齢期なのに縁談が一つも無い。そして巨大な体を持つ自分の側にいるために自分の巫女を名乗っている。巫女ちゃんの性癖を知らなかった頃、巫女ちゃんが自分の体を拭いて抜け落ちたウロコを持ち帰っていたが自分はその事を黙認した。自分のウロコは黄金に輝いて綺麗だったのでそのままでも加工してお守りにしても売れると思ったからだ。自分の体を拭いてくれたお礼にそれで生計を立てればいいと思っていたのだが、ウロコの大半は巫女ちゃんの家にある。
最初はウロコでドレスを作って持ってきた。黄金のウロコで飾られてドレスはとても綺麗で巫女ちゃんに似合っていた。その後もウロコで身の回りの小物を作っては持ってきたのだが、やがてそれはどんどんエスカレートしていった。最近はウロコをベッドの下に敷き詰めたりしているらしい。
その事を巫女ちゃんの住む町の人間に聞いてようやく巫女ちゃんがおかしい事に気づいた。そしてその事を正面から聞いた結果巫女ちゃんは自分の性癖を暴露した。その時もう巫女ちゃんは両親から矯正不能と判断されていた。
そして現在、自分に近づく女性は巫女ちゃんがことごとく排除して自分に近づく人間は巫女ちゃんだけになり現在に至る。
そんな巫女ちゃんが自分の口の中で服を脱ごうとしたので、自分は慌てて巫女ちゃんを口の中から追い出した。
「ドラゴンさま私が服を脱ぐところを見たいのですね」
そう言って服を脱ごうとする巫女ちゃんに自分は妹ちゃんを見るように言った。妹ちゃんは自分の口の中にいたので唾液でベトベトだった。だから巫女ちゃんに妹ちゃんを綺麗にするように言って話題を変えるつもりだった。
しかしそれがいけなかった。
「本当に涎でベトベトですね。そうドラゴンさまの涎で……」
そう言うと巫女ちゃんは下を向いてフフフを笑った。それを見て逃げ出そうとする妹ちゃんをしっかりと抑えると巫女ちゃんは晴れやかな笑顔でこう言った。
「さあその涎をふきふきしましょうね」
そう言うと巫女ちゃんは妹ちゃんを町に連れて行った。巫女ちゃんが拭いた自分の涎で変な事をしないのを祈るばかりである。
……あと妹ちゃんは巫女ちゃんよりも体が小さいので大丈夫だと思う。最後にそう思うとその日は神殿に帰って不貞寝した。
ところでドラゴンは環境に適応する生き物である。巣に残り寿命を与えられた弟妹の事は分からないが巣を出た弟妹はそれぞれのパワースポットの環境に適応した。
雪山の白は寒さに強い体になり、海の蒼は泳ぐのに適した体になった。空を飛ぶのが好きな黒は早く飛ぶために体が流線型になり、穴掘りが好きな紫は羽根が小さくなって穴掘りがしやすくなった。
そして人間の町に下りた紅の妹ちゃんは翌日人間の姿になって自分の元にやって来た。街中で人と暮らすために体が変化したようである。
話を聞くと妹ちゃんは前世の人間としての意識が強く残っていた。その状態で人間の家に行き人間の食事を取り、人間のベッドで寝た。そして朝起きたら人間の姿になっていたという。
もっともドレスの下からは尻尾がのぞき、背中に開けられた穴から翼が出て、頭にはドラゴンの角が生えていたが……
そして変化した人間の部分は驚くほどの美少女だった。好みの違いは有るだろうが10人に聞けば10人とも美少女だと答えるだろう。輝くような金色の髪と青空のような澄んだ瞳、今まで見れきた誰よりも妹ちゃんは美人だった。
もっとも自分の好みではなかったが。自分はドラゴンなのだが人間としての意識は少し残っているので人間の女性の好みはある。ならどんな女性が好みかと聞かれれば、残念な事に……非常に残念な事に……見た目の好みは巫女ちゃんなのである。
巫女ちゃんの容姿は平均よりもちょっと美人というくらいだ。髪も目もごくごく普通の茶色みがかかった黒できらびやかではない。しかし何処と無く落ち着くのである。これで変態でなければもっと良かったのだが、逆に変態でなければ今頃は結婚して自分の側にはいなかったと思う。
まあ今の自分はドラゴンで寿命も違うので結婚しようとは思わないが……
さて話を戻そう。神々しいばかりの美少女になった妹ちゃんだが妹ちゃんが言うにはこの容姿は神様と瓜二つだという。ドラゴンの角や翼や尻尾が無ければまったく同じくらいに。
しかし自分はその話を信じなかった。女神なのは声(?)で分かったが、あんな喋り方をする女がこんな儚げな容姿をしているはずは無いからだ。
そう言うと妹ちゃんは微妙な顔をしたが何も言わなかった。その後その体では自分の神殿で暮らすのは不便ということで妹ちゃんは巫女ちゃんの家で暮らす事が決まった。これから一人前になるまで妹ちゃんは神殿と町を往復する生活を過ごす事になる。
妹ちゃんに修行をつけるという生活サイクルが加わって一月が過ぎた頃、突然神様から町に行けと言われた。巫女ちゃんと妹ちゃんの暮らす町で何か有ったのかと思い町の近くまで良くと、町の広場に像が作られているのが見えた。
まだ作りかけだがその像は妹ちゃんに似ていた。しかしその像には角も翼も尻尾も無かった。つまり神様の像である。
(ドラゴンくん、あの像を壊すんだ。人間はハアハアする生き物なんだ。今はまだいいけれども時が過ぎれば萌え~とか言い出してボクにハアハアして薄い本を出すに違いない。だからボクの姿をこの世界に残すわけにはいかないんだ)
あれが神様の姿の本当の姿なのかはどうでもいい。薄い本が何のことなのかは分からないが神様が困っても自分は困らない。しかいあの儚げな容姿の少女が神様の姿ということが世界中に広がるのは頂けなかった。
だから神様の言う事を聞いてあの像を破壊する事にした。しかしどうやって破壊するのかを考えて悩んだ。
自分の体は大きい。だから町に入れないのである。一応火を吐くことは出来るのだがピンポイントで像だけを溶かす事はできない。どうしようかと考えていい考えが浮かんだ。
まず手ごろな大きさの木を引き抜いて中をくりぬいた。そして以前回収した八首の大蛇の尾骨をその中に入れた。つまり即席の吹き矢である。
その後何度か練習して狙った場所に当てれるようになると、人がいない時を狙って吹き矢で像を破壊した。
(吹き矢で狙いを定めて像を破壊する巨大ドラゴン……。シュールだねー)
その後神様のお告げで偶像崇拝が禁止された事は言うまでも無い。
次回予告
神の神子その美しさを世界中に轟かせん。
神の神子多くの男の求婚されん。
黄金竜、神子を守るために奮闘せん
次回 悪役では無い!