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外伝 女子高生と創造神

 私は何処にでもいる普通の女子高校生だ。今日もいつも通り学校に向かって家を出た。しかし気がついたら神々しい雰囲気を持つ西洋風の神殿の中に居た。そして目の前にとても綺麗な少女が座っていた。


 好みの違いは有るだろうが10人に聞けば10人とも美少女だと答えるだろう。輝くような金色の髪と青空のような澄んだ瞳、彼女はテレビも含めて今までに見てきた誰よりも綺麗だった。


 私がここに居る理由は分からないが、自分がここにいる事は場違いなのは疑いなかった。


「こんにちは」


 私が現実逃避気味にそう考えていると少女は私に話しかけて来た。


「あ、あのこんにちは……です」


 少女と話をする事自体恐れ多いと思ってしまったのだが、話しかけられてきたので私は返事をした。


「そんなにかしこまらなくても良いわよ。同じ女子のですもの」


 少女は笑いながらそう言った。確かに私も女の子だ。けれども目の前の少女と同じだなんてとんでもない。そう思わせるだけの差が私と少女の間には有った。


「私は男の子とお話しするのが苦手なの。だから同じ女の子とは気兼ねなくお話したいの。だからお願い、ね?」


 そう言われて私は少しだけ緊張を解くことが出来た。そして少女の名前を知らない事に気づいて名前を聞こうとした。


「あの、私の名前は……。あれ?私の名前、思い出せない……」


 だからまず礼儀として自分の名前を言い、それから少女の名前を聞こうとして自分の名前を思い出せない事に気づいた。


「ごめんなさい、あなたの魂を洗う時にあなたの生前の名前を消してしまったの」


 混乱する自分に少女は済まなさそうに言った。


「え、洗う?」

「あなたはもう死んでしまったの。そしてこれから生まれ変わるために魂を洗って、その結果生前の記憶が消えたの」


 いきなりそんな事を言われても実感がわかない。自分はもう死んでいるだなんて。何しろ死んだ時の記憶が無い。しかし同時に具体的な記憶が無い事に気づいてしまった。


「大丈夫だから、落ち着いて」


 私の混乱に気づいたのだろう。少女は私の所までやって来て、私が慌てふためく前に私を抱きしめて落ち着かせようとしてくれた。そんな少女の暖かさに私は安心感を覚えて落ち着いた。


「自己紹介がまだだったね。私はあなたの住んでいた世界とは別の世界の創造神。あなたの世界の創造神にお願いして死亡した女の子の魂を送ってもらったの。それがあなたよ」


 そう言われて私はびくっとした。これは夢ではなくて現実で私を抱きしめてくれている少女は紛れも無く神様だと本能で理解してしまったからだ。


「私の世界は最近になって出来たばかりで……。それで世界を運営するために重要な役割を持つ生き物を作る必要があって。その生き物に入れる魂としてあなたに来てもらったの」


 よく分からないけれども私は彼女の作った世界で新たに生まれ変わるらしい。でもどうして私だったのだろう?


「私は女の子という事意外は何の条件もつけていないよ。あなたが選ばれたのは頼んだ時にちょうどあなたが命を落としたから。あ、どうして死んだのかは聞かないでね。私の世界の事では無いから私も知らないの」


 私の心が読めるのか、それとも顔に出てしまっていたのか少女は私にそう言った。どうやら私が死んでしまったのは神のいたずらではなく、私自身の運命だったみたいだ。


「それで私のお願いを聞いて生まれ変わってくれる。もし生まれ変わってくれたら役目を終えた後の次の人生はあなたの希望を叶えるわ。もし前の世界に戻りたいのなら戻す事も出来るわ」

「もし断ったのなら?」


 私は答えを決めていた。けれども確認のために私はそう聞いた。

 

「元の世界に返して生まれ変わって貰う事になるわ。ただしその場合はここでの記憶も消えて、真っ白な状態から新しい人生を始める事になるけど」

「あなたの世界で生まれ変わる事にするわ」

 

 神様の力なのか、この少女のもつカリスマなのか、私はこの少女の願いを聞き入れる事にした。


「ありがとう。じゃああなたの面相を見てくれる先輩に連絡を入れるね」


 そう言うと少女は私から離れて空中に手をかざした。すると空中に映像が映し出された。


 そこには金色に輝くドラゴンが神殿らしい建物の中で眠っているのが写っていた。この時私は建物の大きさを勘違いしてその所為でドラゴンの大きさも勘違いしていた。


「うん、頑張れ私」


 少女は寝ているドラゴンの映像を見てそう言い、深呼吸を始めた。そして覚悟を決めると映像に向かって話しかけた。


「起きろ!このニートドラゴン!」


 突然少女が言葉遣いを変えた事に驚いていると、少女はその見た目からは思えない喋り方でドラゴンと会話をしていた。


 そして会話を終えるとぐったりした。


「うう、緊張した……」


 私は唖然とした表情で少女を見た。するとその視線に気づいたのか少女は言い訳をするかのように説明しだした。


「私男の人が苦手で……。唯一会話が出来るのがあのドラゴンさんだけなんだけれども、最初にお話をする時に緊張して噛んじゃって……。それ以来あんな感じでしかお話出来ないの」


 そう聞かされて私はぷっと笑ってしまった。目の前に居るのは世界を創った神様のはずなのに、とても愛らしく見えたからだ。


 そんな私を見てすねてしまったのか少女は詳しい話はドラゴンさんから聞いてくださいと言って私を送り出した。


 こうして私は生まれ変わった。しかし生まれ変わった先が人間ではなくドラゴンだった事は生まれ変わるまで知らなかった。


 そして私の世話をしてくれる黄金のドラゴンの大きさがとてつもなく大きくて、その所為で最初大変な目にあってしまったのだけれども、それは少女のささやかな復讐だったのかも知れないと私は考えている。



 次回予告


 神が使わした神子、神の姿を真似ん。人々その姿を見て神の像を建てん。


 されど黄金竜、像をみて大いに嘆く。



 次回、偶像崇拝は禁止です

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