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第5話 幼女ペロペロ。でも変態ではありません。

 ドラゴンに食事はいらない。人間社会のようなしがらみも無ければ働く必要も無い。


 衣・食・住が満たされた自分は時々人間の相手をしながらマイホームでのんびりとした生活を過ごしていた。


 今日もお日様の光が気持ちよくて外で昼寝をしていると神様が話しかけて来た。


(起きろ!このニートドラゴン!)


 ニートと言うのは失敬な。これでもパワースポットの『マナ』はちゃんと管理している。与えられた仕事はこなしているのである。


(だからと言って今のドラゴンくんの姿は納得いかない……)


 そう言うと神様は変な質問をしてきた。


(本題に入るけどいいニュースと悪いニュースがあるんだけどどっちから聞きたい?)


 こういった聞き方をする質問はろくでもないと相場は決まっている。だから話の流れが分かるように教えて欲しいと答えた。


(じゃあ悪いニュースから。この前神殿を建てるのに協力したドラゴン以外に寿命を与える事にしたからそのつもりで)


 その話を聞いて自分は驚いた。ドラゴンには寿命は無い。肉体が滅べば死ぬとは言え、『マナ』が有る限り肉体は朽ちる事は無いのだ。


(ドラゴンくんとこの間の5体以外のドラゴンは役目を放棄した。そして巣に残ったドラゴンのうちの1体が自らを竜王『バハムート』と名乗ってドラゴンの国を建国した。だから罰として彼らの特権を剥奪して地上の生き物と同じにした)


 体はドラゴンでも魂は人間である事の弊害だろう。人間の欲望が支配欲を生み出してしまうとは。


 しかしそれでは各地のパワースポットの『マナ』は世界のバランスを崩してしまうのではないのだろうか?


(たしかにパワースポットの近くで凶暴で強力な力を持った生き物が生まれ始めている。僕はその生き物達の事を『魔物』と呼ぶことにしたよ。でもドラゴンくんが気にする事では無いよ。凶暴な生き物は生まれたけどそれとは別に知性と理性を兼ね備えた強力な獣達も生まれているんだ。こちらは『幻獣』と呼んでいるんだけど、彼らは役目を放棄したドラゴンの代わりにパワースポットを治めてくれているんだ。これからは『幻獣』と『魔物』の時代になるだろう)


 自分が寝ている間に世界はずいぶんと変わってしまったようだ。あと『幻獣』の誕生がいいニュースなのだろうか?


(違うよ。実は一箇所だけ『幻獣』では手に負えないパワースポットが有ってね。そこを治めるのに特化したドラゴンを一体創造したんだ。ドラゴン君にとって最後の妹になるドラゴンだよ。いいニュースはその子の誕生の知らせ。あとその子が大きくなるまで面倒を見てくれると嬉しいな)


 神様はそう言い終えると自分の返事を聞かずに気配を絶った。


 それから神様から教えられた事を考えていると、空から一条の光が差し込んできた。そしてその光の中から人間の子供くらいの大きさの綺麗な紅い色をしたドラゴンが出てきた。


 自分は新しい妹が生まれたのが嬉しくて妹ちゃんの額をペロリと舐めた。すると妹ちゃんは泣き出してしまった。さらに生まれたばかりとは思えないほどの速さで飛んで逃げようとした。


 それを見て自分は慌てて妹ちゃんを止めようとした。空を飛ぶにはかなりの『マナ』を消耗する。生まれたばかりの体で空を飛ぶのは体に負担が掛かるからだ。


 だから妹ちゃんを止めようとして事故は起こった。呼びかけようとして口を開け、追いかけようとして足を踏み出したら転んでしまったのだ。そして口が空いたまま妹ちゃんの方に倒れて、妹ちゃんをぱくっとやってしまったのだ。


 とは言え別に飲み込んでしまった訳ではない。妹ちゃんは自分の口の中にいて外に出ようと暴れている。


 自分は妹ちゃんを口に閉じ込めるつもりは無いので地面に寝そべり、顔を地に着けて口を開いた。


 自分が口を開いたので妹ちゃんは口から出ようとした。しかし慌てていたのか自分の歯と歯の間に足を挟んでしまい口から出れなくなってしまった。


 これには自分も困ってしまった。妹ちゃんは自分の歯の上にいるので口を閉じることが出来なくなってしまったのだ。


 仕方が無いので妹ちゃんを口から出すべく舌で押し出す事にした。妹ちゃんを傷つけないように慎重かつ丁寧に舌で挟まった妹ちゃんの足に触れた。すると妹ちゃんは甲高い声で悲鳴を上げた。


「ドラゴンさま、一体何をやっているんですか?」


 妹ちゃんが悲鳴を上げたので困っていると人間の女性が話しかけて来た。


 その女性はかつて八首の大蛇に生贄にされて自分に助けられ、その後自分に感謝して自らを自分の巫女だと名乗った少女が成長した者だった。


 巫女ちゃんに成長した彼女は自分達の様子を見て首をかしげた。


 それを見て自分もまた何をやっているのだろうと思ってしまった。



 次回は番外編です。

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