第2話 首がいっぱいある生き物の倒し方
神話、伝承、ファンタジー……、複数の首を待つ生き物の話は様々な物語の中に存在する。
ヒュドラ、八岐大蛇、九頭龍、ケルベロスのような同じ頭を持つ物のいれば、キメラのように違う生き物の頭を複数持つ者もいる。
今自分は8つの頭を持つ大蛇と対峙している……
時を少しさかのぼる。巣立ちをした自分はパワースポットを渡り歩いていた。年長者で一番力を持つ自分は他の弟妹のために出来るだけ遠くの、治めるのが大変そうなパワースポットを縄張りにしようと考えたからだ。
そしてパワースポットを渡り歩いていくうちにいくつかの事に気づいた。
まず『マナ』には属性が有った。それぞれのパワースポットの環境に合わせて『マナ』の属性が決まり、ドラゴンはその吸収した『マナ』によって特性が変わるみたいなのだ。いくつものパワースポットを巡り多くの属性の『マナ』を取り込んだ自分はいつの間にか万能型に育っていた。それに伴い鱗も金ぴかである。
またパワースポットに集まる『マナ』の量もまちまちだった。基本的に『マナ』の量が少ないほど治めやすい。その反面手に入る『マナ』の量も少なくなるが……。また同じ量の『マナ』でもパワースポットの特性で治めやすさも変わる。具体的に言えば湖と河では『マナ』の量が同じでも、水が流れている分河の方が治めるのが大変だということだ。
そういう訳で出来るだけ治めるのが面倒なパワースポットを探していると、神様の声が聞こえた。
(ハロハロー、ドラゴン君元気?)
神様のくせに威厳ゼロの声を聞いて自分は飛ぶのを止めた。
(威厳ゼロだなんて酷いな。これでもドラゴン君のために優良物件を紹介しようと思っているんだよ)
人の考えを読んでそんな事を言う神様。優良物件なら他の弟妹に与えて欲しいと考えると返事が来た。
(ノンノン、ドラゴン君が求めている治めるのが大変なパワースポットの事だよ。ぶっちゃけると膨大な『マナ』の所為でそこの生き物が悪性変異してしまってね。早急にその場を治めるドラゴンが必要なのだよ。でもそこの『マナ』の量は膨大でね、複数のドラゴンが必要だと思うんだけど今それだけのドラゴンはいないからね。だから最も『マナ』の容量が多いドラゴン君に治めて貰いたいのさ)
そう言われては仕方が無い。そのパワースポットに向かう事にした。
(それとね、さっき言った悪性変異の生き物が近くの人間の村を襲っね。それを見たバカがそいつを神の使いだなんて言いだし始めたんだ。だから本物の神の使いとしてモンスター退治もお願いするね)
そう言われて自分は神の使いでは無いと思ったのだが神様は否定した。
(僕の声を聞いて僕の代わりに働くのだからドラゴン君は神の使いだよ。僕はこの世界を創った時に自分ルールで直接の手出しはしないと決めたんだ。だから僕の声を聞いて僕の代わりに働く者は皆神の使いなんだよ)
そう言われるといいように使われているような気がするが、自分にもメリットは有るので今回は大人しく従う事にした。
(あ、それとバカどもがモンスターに生贄を捧げようとしているから。早く行かないと女の子がモンスターに食べられちゃうよ)
それを早く言え!そう考えると自分は神様が教えてくれたパワースポットに急行した。
パワースポットに着くと、祭壇に捧げれた少女とそれを食べようとする八首の大蛇を見つけた。大蛇に体当たりをして突き飛ばし少女を庇うように大蛇と対峙した。
そして今に至るわけである。
話を最初に戻そう八首の大蛇は同じ頭が8つある大蛇だ。これは同じ能力の頭が8つあって胴体に頭を統率する第2の脳が有るか、本物は1つだけで後は偽物かのどちらかである。
そこまで考えると自分は大蛇に接近し大蛇が自分に噛み付くのを無視して(と言うよりも自分の鱗は大蛇の牙を通さなかった)自らの爪を大蛇の体に突き刺し、心臓を抉り出した。
ぶちゃけ頭の数は関係なかった。頭がいくつ有ろうとも、心臓は1つなのでそっちを潰せばいいだけの話である。
心臓を抉り出された大蛇はその場で息絶えた。すると天から光が差し、自分の鱗は光輝いた。その光景を見た少女は自分の事を崇め始めた。
それはとても神々しい姿なのだろう。
(演出~、演出~)
神様が演出していたと知らなければ……
こうして自分は大量の『マナ』が手に入る縄張りを手に入れた。
おまけ
八首の大蛇に生贄……、ふと八岐大蛇の伝承を思い出した自分は大蛇の尾を調べてみた。しかし尾からは骨が出てくるだけで草薙の剣が出てくる事はなかった。とりあえず取り出した尾の骨は今後何かの役に立つかもと思い取っておくとして、大蛇の死骸はこのままにしておくと病気の元になると考え焼却処分した。
ブレスで死骸を焼いていると神様が話しかけて来た。
(ねえねえ、ブレスで焼けるのなら、あれこれ考えずに最初から焼き殺せば良かったんじゃない?)
それを聞いた自分は神様を無視してパワースポットを治めにかかった。
次回予告
天にも届く大樹が有った。大樹は太陽の光と水と大地の養分を独り占めして周りの命を奪っていった。
森の民が神に祈りし時、黄金の竜が降臨し大樹を引き抜いた。
次回 文化竜なら家を建てよう! ~建築資材調達編~