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第8話 やる事やって引きこもろう

 煩わしい俗世とのつながりを絶って引きこもる前に自分にはやる事があった。妹ちゃんのことである。


 自分は神様から妹ちゃんが一人前になるまで面倒を見て欲しいと言われた。たとえ神様に言われなくても未熟な妹ちゃんを一人で放り出すことは自分には出来ない。だから自分は妹ちゃんが一人前になれるように修行をつけた。


 そして時が流れ妹ちゃんは成長した。最近は人化した妹ちゃん目当てで男がやってくるほどだ。もっとも巫女ちゃんがいるので妹ちゃんが変な男に引っかかる心配はしてはいないが。


 それとは別に自分は心配していることが有る。妹ちゃんが人との暮らしを望んでいることだ。人化した妹ちゃんなら人間と結婚して子供を作ることも出来るだろう。それくらい妹ちゃんは人間社会の一員として生きようとしている。


 しかし妹ちゃんが治める予定のパワースポットは人が住む事が出来ない。何故なら妹ちゃんのパワースポットは活火山だからだ。今この時も火山は噴火して生き物の姿は無い。そんな場所に妹ちゃんを一人行かせる訳にはいかない。


 だから自分は無茶をした。妹ちゃん以外は治める事が出来ないだろうと言われた火山の『マナ』を押さえ込み火山を休止させようとしたのだ。


 そしてそれは成功した。だが自分に出来たのはそこまでだった。たとえ火山が噴火しなくなってもこの地が人が住むには適さない事に変わりは無いのだ。


 何とかしようにも自分は火山を押さえるのが精一杯で動く事もままならない。いっそこのまま自分はここに引きこもり、妹ちゃんに神殿を任せようと考えていた時、神様の声が聞こえた。


(がんばってるね。この場所を諦めないという事はいい事だよ)


 当然である。今はただ火山が噴火しているだけだが、将来危険な魔物が誕生しないとは限らない。これだけ荒々しく強大な『マナ』から魔物が生まれれば、自分でも勝てるかどうか分からないのである。


(だから助っ人を呼んだよ。それと妹ちゃんもこちらに向かっている)


 それだけ言うと神様は気配を消した。その代わり5色の影が見えた。各地のパワースポットを治める弟妹達である。


 何をするつもりだろうと考えているとまず白が雪を降らせた。降り注いだ雪は火山の熱で暑くなった大地を冷やし、雪は溶けて水になった。


 そこに紫が大地を耕し、蒼が水の流れを操作して河を作った。そこに黒が風を使って草木の種を運び、緑が木々を成長させた。


 そしてこの地は緑あふれる豊かな地になった。後は火山が噴火しないように抑えるだけでこの地は人が住めるようになる。その役目は紅の妹ちゃんの役目である。


 その妹ちゃんは人々を引き連れてやってきた。隣には恋人なのだろう、人間の男が寄り添っていた。その様子を見て自分の役目は終わったのだと感じた。だから妹ちゃんが『マナ』を治めるのを感じると黙って自分の神殿に帰った。


 正直に言うと自分の体はボロボロである。命に関わる事は無いであろうがかなりの休眠を必要としている。巫女ちゃんを始めとして今関わった人間が寿命で亡くなってもまだ眠りつつけないといけないほどの休眠を……


 ボロボロの体で神殿の前に降り立つと入り口に巫女ちゃんがいた。これが最後の別れになる。


 今思えば自分は巫女ちゃんのことが好きだった。だから巫女ちゃんが変態だと分かっても関係を変えようとは思わなかった。


 それと同時に巫女ちゃんが変態では無かったらと思う事が有った。もし巫女ちゃんが普通の嗜好の持ち主なら自分は変態期に人間の姿になっていたと思うからだ。


 でも巫女ちゃんは巨大生物が好みで人間には興味が無さそうだった。だから自分は巨大生物でなくなることで巫女ちゃんの興味が無くなることを恐れて人間になろうとは思わなかった。


 自分がそこまで思っていた相手はボロボロになった自分を見ると悲しそうな顔をした。


「ドラゴンさま、長い眠りにつかれるのですね。神様から聞きました」


 そう言うと巫女ちゃんは自分の足にすがり付いてきた。


「私も一緒にいさせてください!」


 しかし自分は巫女ちゃんの願いを受け入れる事は出来なかった。自分は眠りにつく前に神殿の入り口を閉じるつもりだった。つまり巫女ちゃんを連れて行くということは巫女ちゃんを生贄にするということと同じだからだ。


 目覚めた時目の前に巫女ちゃんの白骨が有ったらとてもじゃないが耐えられない。たとえもう会えなくても自分は巫女ちゃんに幸せになって欲しいのである。


 その気持ちを伝えると巫女ちゃんは静かに泣いた。そして自分に別れの言葉を告げた。


「いつの日かドラゴンさまが目覚める時、私はドラゴンさまに会いに行きます。神様にドラゴンさまの側にいられるように生まれ変わる事をお願いします。だから待っていてください」


 それが自分が最後に聞いた巫女ちゃんの言葉だった。その後巫女ちゃんは結婚せずに身寄りの無い子供達の面倒を見続けた。そして育てた子供達に囲まれて幸せに逝った事を後に神様から聞かされる事になる。


 巫女ちゃんの姿が見えなくなると自分は神殿の中に入り入り口を閉じた。『マナ』の制御は呼吸するかのように無意識で出来るので眠っていても問題ない。自分は傷付いた体を癒すべく眠りについた。


 時が流れ生まれか変わった巫女ちゃんが自分を起こしに来るまで……



 次回予告


 魔の力強くなり、魔の王生まれる。


 魔の王、配下を従えて世界に戦いを挑む。


 教国に魔の王の手が伸びし時、少女は黄金竜に祈りを捧げる。


 そして伝説は蘇る。


 次回 勇者編、幼女は好物ではありません。

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