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第1話 生まれてから巣立つまで

 気がつくと暗闇の中にいた。いや正確には何か球体のようなものの中に閉じ込められていた。暗くて狭くて居心地が悪いので外に出たくて壁を叩いたら壁は簡単に割れた。そして壁の割れ目から光がさしてくるので外の光目掛けて飛び出した。


 ずっと暗闇の中にいたので最初外の世界はまぶしかった。少し時間が立ちようやく外の光になれたので周りを見回すと、そこらじゅう自分の体と同じ大きさの卵だらけだった。


 もしかしてと思い自分が閉じ込められていた物を見たら、それは割れた卵の殻だった。この時になってようやく自分は卵から生まれたのだと認識した。


(あー、テス、テス。この世界で最初のドラゴンくん、誕生おめでとう)


 自分が卵から生まれた事を認識してぼーっとしていると頭の中で声が聞こえた。何事かと思いまわりを見てもまだ卵しかなく誰も生まれてきてはいなかった。


(僕はこの世界を創った神様さ。きみは神が生み出した生き物の一つであるドラゴンの中で最初に生まれた個体なのさ。だから神である僕がドラゴンの役目を教えるべく声をかけたのさ)


 そう言われて自分が人間ではなくドラゴンとして生まれた事に気づいた。


 人間としてではなく……。自分がそう考えた事を疑問に感じ、そして自分が昔人間だった事を思い出した。


(あー、前世の記憶が少し残っているんだね。でも今の君はドラゴンだ。その事に拒否感はないのだろ?)


 そういえばそうである。前世が人間だった事を思い出したが今の自分の体に嫌悪感を抱いたりはしていない。


(うん、とりあえずこの世界の成り立ちや君達ドラドンの役目を説明するからよく聞いて欲しい)


 そう言って『自称』神様はこの世界の事について自分に説明を始めた。


 この世界を創った神様は最近になってようやく『創造主』の資格を手に入れたそうだ。それで世界を創造する事にした。そのとき神様の友達で他の世界を創造した神様達がお祝いとして自分の世界の生き物の魂を少し分けてくれたそうだ。魂を貰った神様は本来は綺麗に洗って無垢な魂にして生まれ変わらせるところをあえて適当に洗って魂を転生させた。そうする事で前世の記憶をわずかに残し、その記憶便りにこの世界の文明を発達させようと考えたそうだ。


 そして自分もそんな魂の一つらしい。どうりで前世人間だった事を思い出しても個人情報までは思い出せないわけだ。


 話を戻して何で人間の魂である自分をドラゴンに生まれ変わらせたのかと言うと、それは神様の力量不足だった。この世界を創る時神様はドラゴンを最強生物とし知恵を持つ生き物として創造しようとした。しかし知恵のあるドラゴンの魂は創るのが大変で、お祝いに貰った魂の中にもドラゴンの魂は無かった。だから神様は代案として人間の魂を自ら生み出したドラゴンの体にいれたそうだ。


 そんな事をするくらいなら自らの力量を上げてからドラゴンを創造すればいいのにと思ったのだが、神様が言うにはドラゴンはこの世界を維持するのに必要な存在なのだそうだ。


 世界にはパワースポットと呼ばれるポイントがいくつも存在する。パワースポットは名前の通り力が溜まる場所なのだがきちんと管理しないと自然災害を起こしたり近くに住む生き物を変異させてしまうそうだ。


 ドラゴンの役目はそのパワースポットを管理する事だと言われた。そうしなければドラゴンは生きていけないとも……。


 ドラゴンは能力の高さに比例して大量の食料を必要とする。もしこの世界に存在するドラゴンが食べて生きていこうとすると数年で世界の生き物を食べつくし、世界は滅んでしまう。だがドラゴンは普通の生き物が取る食事とは別にもう一つエネルギーを取り込む方法がある。それが世界に存在する『マナ』を取り込むことだ。そしてその『マナ』が無限に湧き出てくる場所こそがパワースポットなのだ。


 つまりドラゴンはパワースポットから『マナ』を取り込んでエネルギーとする代わりにパワースポットを管理して、その土地を栄えさせる事が役目と言うわけだ。


 そんな話を聞いているとだんだんとお腹が空いてきた。


(そろそろお腹が空いてきた頃だね。じゃあさっそく『マナ』を取り込んでみよう)


 どうやら自分が生まれたこの場所もパワースポットのひとつらしい。だから空腹を満たすべく『マナ』を取り込もうとした。


 そして『マナ』を取り込もうと考えると息をするかのように自然と『マナ』を取り込むことができ、腹は満たされた。『マナ』を取り込むことはドラゴンにとって当然の事らしい。そう考えると自分の体の羽と尻尾が気になった。羽も尻尾も人間だった時には無かった物だ。しかし今は自分の体についている。だから動かしてみようと思い意識すれば当たり前のように動かす事ができた。


 そして空を飛ぼうと思い飛び上がり……地面に落ちた。


 どうやら空を飛ぶには『マナ』が必要で生まれたばかりの体では空を飛ぶための『マナ』を蓄えておく事が出来ないようだ。体を成長させて蓄えておける『マナ』が多くなった時始めてドラゴンは大人と呼べる事になる。


 そう考えると体の小さな子供だからこそ一箇所のパワースポットに集める事ができたのだろう。そして体が大きくなればここのパワースポットの『マナ』は足りなくなる。その時がドラゴンの巣立ちの時となるのだろう。


(うんうん、のみ込みが速くて助かるね。僕は他の生き物の事も面倒を見なくてはいけないからもう行くよ、他のドラゴンの子達の事は頼んだよ)


 その言葉を最後に神様の声は聞こえなくなった。それから取り込める『マナ』を増やそうといろいろとやっていると他の卵が孵ってドラゴンが生まれた。残念ながらその子は自分の前世が人間だった事は覚えていなかった。


 それでも神様から聞いた事や自分で調べた事を生まれた子に教え、他の卵が孵るとその子と一緒に生まれた子の面倒を見た。


 そんな日々を過ごし、少しずつ体は大きくなって行った。やがてここのパワースポットの『マナ』が足りなくなってきたと感じると、一番大きく成長した自分は巣立つべきだと考えた。


 そして他の子達が見守る中、自分は他のパワースポットを探して飛び立った。



 次回予告


 八つの首を持つ蛇がいた。蛇は麓の村を遅い生贄を要求した。村人達は嘆き悲しみながらも要求を受け入れ一人の娘を差し出した。


 生贄の娘は蛇を前にし、神に祈った。祈りは神に届き、神は黄金の竜を使わした。


 竜は蛇を退治し、この地を守る守護者となった。



 次回、首がいっぱいある生き物の倒し方。

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