第5話〝こんなにも信頼はなくなりやすいのか!?〟
俺たちはいまだ逃走中。
「くっそ、何で俺がこんな目にっ」
「あたしを早く助けてくれてたらこんなことにはならなかったのよ!」
「俺のせいかよ!」
俺たち二人は、変な服装をした男三人組から逃げながらそんなやりとりを続けていた。
先ほどから男たちの声が聞こえなくなったような気がするが、一応安全だと思われるところまでは逃げるつもりだ。
となりにいる少女はすこし辛そうだが。
(そこを曲がれば!)
俺たちは今まで約15分は走ってきたであろう路地裏から出ると、そこは俺のよく知っている風景が広がっていた。
(ここまで来れば安全だろ)
そこは俺の住んでいるアパートの近くで、下校途中の生徒も何人かいた。
「はぁはぁ、もう追ってきてないみたいだな。よかった~~!」
少女は後ろを向き現状確認を済ませ、安心すると俺に抱きついてきた。
「おいっ、気持ち悪い」
「ひどいっ!?」
すこし涙目になっている。
…うん、たしかにあいつらはもう追ってきてないようだけどさ…。
(見てっ、可愛い娘!)
(ほんとだ~! でもなんか泣いてない?)
(となりの男が何かしたんじゃない!?)
(うっそ! 少女を狙う変質者だったりして!?)
(さっき抱きついてたようだし!)
(やばいよ、警察!警察よ!)
近くを通った俺と同じ高校の女子生徒らしき二人がヒソヒソと話しているのが聞こえる。
おいおい勘弁してくれよ。俺変質者扱いされてるしっ!だいたい抱きついてきたのはこいつだよ!俺は何もしてない。
「あの~、俺変質者なんかじゃないんですけど…」
ちゃんと誤解をといておこうと思いヒソヒソ話している女生徒に近付こうとすると、
「ひぃっ、こっちにくる」
「やばいよ、逃げよ!」
女子生徒二人は走ってどっかに行ってしまった。
(さよならっ、さっきの人たちの俺への信頼!)
まあ…はじめから信頼なんてない、あかの他人?なんだけどね。
「とにかく疲れてるようだし、俺ん家までもうすぐだからよってくか?」
「…そうする」
このままこの少女を帰したら、まだ近くにいるかもしれないであろうさっきの変な服の男たちに出くわす可能性も十分あるので、俺ん家で時間を潰させてやろうという俺の優しさスキルが発動。
「んじゃ行くか」
そう言って俺が歩きだすとその後ろをついてくる少女。さっきまでとは似合わず無言だった。
それから俺ん家に着くまでずっと会話はなかった。
(あれ? なんでこうなった?)