第4話〝こんなにも変な展開になるのか!?〟
「なんでそうなるのよ~~!!」
目の端に涙を溜めながら少女は俺に抗議してくる。
「いや、自然な流れで」
「そんな流れなかった!」
「いやいや、あったあった!」
「なかった! ……イタイくせに」
少女の頭をわし掴み、力をいれる。
「いたっ、痛い痛い痛いっ!」
「まだ言うか!」
さらに力をいれる。
「いたっ、ちがうっ、この痛いはそのイタイじゃないから~!」
「じゃあどのイタイだ」
「痛みとかの痛いです!とにかくごめんなさいもう言いません~~っ!」
「はい、よろしい」
周囲の人の視線もいたかったので、ここらへんでやめておく。
「ううぅ~~~~っ」
少女は涙を溜めてこちらを睨み唸っている。そんなに痛かったのか?
「ごめん、強くしすぎたな」
「悪いと思ってるなら助けてよ!」
そうだったイタイというワードのせいで、最後の三つ目のワードのことをすっかり忘れてしまっていた。三つ目のワードは『助けて』。もう本当に全くもって意味分からん。何から助けて欲しいのか、何で俺なのかさえも。
「助けてってな~、いまどき見知らぬ少女に助けを求められるなんて…、マンガでもあるまい」
「本当なの、助けてよ~~」
「お前は『助けて』しか言えないのか?」
「そんなことないもん!」
「そうか?」
「……イタイ」
がしっ!!
「いたっ、ごめんなさいごめんなさい! だって『助けて』しか言えないのかって言われたから~~!!」
たしかにそうは言ったがその単語はないだろ!
「うう~~っ。と、とにかく助けて!追われてるの!」
「おっ、やっと青になったか」
ここの信号は変わるのが遅いんだよな。
「華麗にスルー!?」
俺が横断歩道を渡ろうとすると、向こう側からいまどきの変な服を着たチャラい男三人組みがものすごい勢いでこっちに走ってくる。
「待てやコラ~~~!」
「ざけんなやこのクソガキ~~!」
「ぜってーゆるさね~~!」
怒り狂っている男たちの視線の先には、やはりこの少女。
「逃げてっ!」
いきなり後ろから手を引かれ、少女は男たちとは逆のほうへ走る。手を引かれているのでもちろん俺は少女と走ってしまう。
「おい、あのにいちゃんガキの兄貴なんじゃねーのっ?」
「おそらくなっ!」
「いっしょにブチのめしてやろうぜヒャッハー!」
後ろから嫌な単語が聞こえる。たぶん今否定してもだめなんだろうな…。
これはつかまるとヤバイな。
俺は少女に引かれている手を握り返して、俺は走る速度を早め、少女を少し追い抜かしたところで、少女の手を引きながら質問する。
「お前、なにやらかしたんだよ!」
「さっきそこで、たまたまあの人たちが目に入って変な服着てたから、『変な服だね!』って正直に言ったらこうなったの!」
「いくら何でも正直すぎんだろ~~~~!」
変な服を着てるってところは否定しないけどもさ。
そしてまた走りながら質問。
「はぁはぁ、助けてっていうのはこのことだったのかっ?」
「そうだよっ」
そうか、そういうことだったら。
「勝手に俺を巻き込むな~~~~~~~~~~!!」