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第2話〝こんなにも優しい方々!?〟

 


 今はまさしく授業中。


 今日最後の授業は日本史だったらしい。最後の授業が日本史だなんて、俺たちを眠らせるためにやっているような悪意を感じなくもない。

 しかも俺たちのクラス担任をしている篠岡先生が担当だったりする。


 いつもの篠岡先生なら寝ていても多めに見てもらえるのだが、今日はダメらしい。というか〝この頃〟はダメと言うほうが合っているのかもしれない。

 篠岡先生(下の名前忘れた)は、まだ二五才のピチピチ(自称)の新任女教師だ。それなりに美人で男子からは結構人気があったりする。

 しかしそんな篠岡先生(ニックネームは篠T。TはTeacherのT)はゲームが大好きないわゆるゲームオタクだ。この頃機嫌が悪いのは夜遅くまでずっとゲームをしているからだとか。

 篠Tがそんなにハマるゲームが何なのか気になるな。

 篠Tおすすめのゲーム機は「TS3」ちょうサイヤ人3の略じゃないからな。「Try station 3」の略だ。

 

 とにかく今は怒らせないほうがいいとあらためて思う。


 しかし俺は今頃教科書を忘れていることに気が付く。嘘はいけないからな。


「先生っ、教科書忘れました!」

「今更かよ、もう授業始まってから三十分も経ってるんだぞ!」

「寝ていたので気付きませんでした!」

「ああ、そうだよな。寝てたから気付かないよな。教科書を忘れているなんて分かるはずもないよな」


 篠Tが邪悪な笑顔で近づいてくる。


「お、おっしゃるとおりでゴザイマス」


 内心ビビリながらもつとめて笑顔を絶やさずに俺は言う。


「隣のやつにでも見せてもらえ!」

 

 篠Tは俺の頭におもいっきり頭突きをおみまいすると、再び教卓のほうへ戻っていく。

 チョップが得意技かと思っていたが、頭突きもお手の物とみた。

 まわりの奴らは笑うのを必死で堪えている。

 

 そんな中、右となりの女子がこちらのほうへ机を近づけてくる。


「八坂君、よかったら私の一緒に見よ」

 

 笑顔で俺のほうへ教科書を寄せてきてくれる。


 ああ、なんと優しい子なんだ。そして可愛い!

 大事なことかもしれないので二回言っておこう、そして可愛い!


「ありが「いいよいいよっ、このバカには私が見せてあげるからさ! 白川しらかわさんみたいに成績優秀で優しい子が、こんなバカに教科書見せてあげるなんてもったいないよ!」…とう」


 白川さんとは逆、俺の左となりの席にいる女子がとてつもない言葉の暴力を間接的に浴びせかけてくる。

 せっかく優しくて、そして可愛い白川さんは親切心で俺に教科書を見せてくれると言っているのに、なぜ俺にいきなり言葉の暴力をあびせかけてきて、なおかつ白川さんの好意を無碍むげにしようとするのか。まったくもって分からん。


「それは自分が成績優秀じゃなくて、優しくない子だと言っているのと同じだぞ」

 

 反撃してやったり。


「教科書を忘れて、見せてもらう立場のやつは黙ってろ!」


 すみませんでした。


「だからさ、私がこのバカに教科書見せてあげるからさ、白川さんはしっかり集中して勉強してたほうがいいと思うのよ!」

「そ、そう?それならいいんだけど…」


 白川さんはなぜか、名残惜しそうな目で俺のほうをちらっ見て机をゆっくりと元の場所へと戻していく。


 なんでそんな悲しそうな顔でこっちを見るんだ? 勘違いしちゃいそうになるだろ!


 そして左隣の見馴れたというか見飽きた顔のやつがこちらに机を寄せてくる。望んでもいないのにやってくる。

 俺の頭の中ではさながらあのサメの映画「○ョーズ」のまさにサメが近づいてくる時の音楽が鳴っていた。


 とうとう机と机がドッキングしてしまう。


「べ、別に優の為に見せてあげるんじゃないんだからねっ!」

「じゃあ、誰の為だよ」

 

 ちなみに優とは俺の名前だ。…うん、よく可愛いって言われる。


「冷静につっこまないでよ! わざとよ、わざと。ツンデレよ! 可愛いでしょ!?」

「美弥さんや、何のためにわざわざツンデレの真似をしてみたかは俺にはわからないけども、少々気味が悪かったぞい」


 アベシッ!!


 

「うっさい! (男はツンデレに萌えるもんなんじゃなかったの!?)」


 あとのほうが聞き取れなかったが、そんなこと今はどうでもいい。

 あごをグーで殴られた。本日三度目の暴力。これもまたかなり強烈。だんだん頭がボーっとしてくる。こいつボクサーかよ。


 (パト○ッシュ、僕もう疲れたよ)


 俺は薄れ行く意識のなかでこいつの自己紹介を何となくしてみる。


 こいつの名前は『深咲みさき 美耶みや』。幼馴染みというほど付き合いがあるわけでもないと思う。小学校三年の頃、俺が新しい家に越して来たときに美耶の家が近所で、美耶が時々家に遊びに来ていたくらいだ。

 そして学年が変わるごとに時々同じクラスになったりして、話す機会が特別そんなに多かったわけでもない。でも、中学三年と高校一年(同じ学校に進学した)と二年(現在)でまさかの三年連続で同じクラスだったのは何かの縁かもしれない。

 性格は見てのとおりの元気ハツラツなアホだ。特に目立つところはないが、強いてあげるならばやはりアホだというところだろう。

 皆が言うには顔は結構可愛いほうらしい。俺も、まあ言われてみれば少し可愛いかなと思ってみたりみなかったり。でも見飽きた顔だ。


 一通りこいつの簡単な自己紹介を終えたので、そろそろ安らかに眠らせていただきましょう…。


(本当はこいつ、俺を殴るためだけに近づいてきたんじゃないだろうな?)


 あっ、裸の天使がお迎えにやってきた~。

 

 …、このネタはもうやめよう。


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