第9話〝こんなにもを使うのが難しくなってきたが役割分担!?〟
~前回までのあらすじ~
「くそぅ、こんなにも実力差があるとはっ!」
「ここは一先ず退いたほうがよろしいかとっ」
「そうだなっ…、皆~撤退だ~!」
俺たちは魔王城の最奥地、魔王の部屋で最後の戦いに挑んでいた。
しかし、俺たちの力では到底及ばないほどの魔王のパワーに圧倒され、悔しくも退くことを選択せざるをおえなかった。
「撤退だーー、今すぐ退けーーー!」
仲間の一人が全員に呼びかける。
「くそっ! しかたないわね!」
「やはり今の我々ではまだ魔王を倒せないのか!」
「撤退するというのはいい判断だ!」
仲間が次々と退いて行く。
「逃がさんぞ! 勇者御一行よ~~っ」
魔王はそういうと、手から何かすごい黒いもやもやしたものを飛ばしてくる。
それは仲間の一人の方へ飛んでいく。
「う、うわぁあーーーーーーー!!」
「「マッコ~~~~~~イ!!」」
マッコイがもやもやしたものにやられる。一撃でマッコイはやられてしまった。
皆はそれを見て足を止めてしまう。逃げられないと悟ったのだろう。
(ここは…)
「皆!俺が奴の相手をして時間を稼ぐ!その間に逃げろ!!」
「そんなっ、そんなことをすれば勇者様あなたの身が!」
「俺のことは気にするな」
「だめよ! 勇者プリペイドも一緒に逃げてよ!」
「俺はお前らのほうが大切だっ。…大丈夫だ、俺は負けないよ!」
「そんなボロボロになっておいて何言ってるのよ!」
そんなことを話している間に魔王はまた黒いもやもや玉を作り始めている。
「時間が無い!早く行け!!」
「くっ、行くぞ!」
「いや、離して! いやぁ~~!」
皆は覚悟を決めて逃げ始めた。
(それでいい…。よしっ!)
「魔王!この俺っ、勇者がお前を倒ブボルファッ!」
「「プリペイドーーーーーー!!」」
「ふははは! こんなにも地球は狭いのか!」
っと、ここまでがあらすじ。
では本編へ!
「優ちゃん…」
「はい…」
「私は帰るけど、絶っっっっっっっ対に間違いだけは起こさないでねっ!」
「はいっ」
夕食を食べ終え、食器を一緒に洗った後のいつもの弥生さんの帰る時間。
間違いを起こす気はさらさらない。だいたい9才の子に間違いを起こすって何をするんだよいったい。
「じゃあ…、お邪魔しました」
まだ納得しかねるといった表情のまま、弥生さんは玄関へ歩いていく。
「おう」
「またきてね~~」
雛が笑顔で手を振っている。
「言われなくても来ますよ~。今日の夜中にでも」
不気味な笑顔でそんなことを囁いてくる。
「怖いよ!」
「ふふっ、冗談ですよ!」
「そ、そうですよね! はは…」
今日の戸締りは念入りにしておこう。
「それではっ!」
笑顔でそう言うと弥生さんはドアを閉めて出て行った。
送っていきましょうか? くらい言うべきなんだろうが、弥生さんは前に「家はすぐ目の前ですから大丈夫ですよ」と言っていたので、大丈夫ということだろう。
「はあぁ~~~」
「どうしたの?」
きょとんと首をかしげて雛が聞いてくる。
「なんかどっと疲れたなぁ」
「おつかれ~」
「誰のせいだよ」
「誰?」
「お前だよ!」
「ええ? あたしなんにもしてないよ~」
本当にわけがわからないといった表情をしている。なんか腹立つ。
「いるだけで疲れる」
「あたしの存在全否定!?」
「まあとにかく」
「そしてスルー」
俺のスルーにはもう慣れたようだな。
「ここに住むんだったらルールがある」
「ルール?」
「そうルール」
「どんな?」
「まず、役割分担だ」
「そっか役割分担か」
「掃除、洗濯、炊事、風呂掃除、買い出し、俺の肩揉み、靴磨き、俺の身の回りのお世話を雛にはしてもらう」
「うん、それこの家のことほとんど全部しろってことだよね!? しかも最後のほう自分の欲望丸出しだしっ!」
「まあ、冗談はこのくらいにして」
「よかった、冗談か」
「俺の専属メイドになってもらう」
「悪化した!?」
「まあ、冗談はこのくらいにして」
「ほんとだよね? 今度は信じてもいいんだよね?」
「なにできる?」
「なにって?」
「家の仕事」
「ああ! うーんと…、自宅警備!」
「ニートじゃねーか!」
「ニートか。えへへ// それほどでも//」
「ほめてないから」
「まあ、冗談はこのくらいにして~」
ニヤニヤ顔の雛が俺を見てくる。
俺か? それは俺のものまねなのか? 俺そんな腹立つ顔してたのか?
「簡単な料理なら作れます!」
「へえ、例えば?」
「カップ焼きそばとか」
「誰でも作れるよ! しかもカップラーメンではなくそのチョイスゥ!」
「UF○」
あのレディーのポーズをとりながら言う。
「やめろ。伏字も効果をなしていない!」
「三平ちゃん」
「二を足してくれてありがとう!」
「マイナス一平ちゃん」
「やめろ! あと一足して! 平ちゃんにしろ」
「それだと西の高校生探偵を仲のいい刑事さんが呼んでるみたいじゃん!」
「これ以上はやめろ!」
「まあ、冗談はこのくらいにして~」
腹立つなこいつ。
「大丈夫、なんだかんだいってカップラーメンも作れるから」
ドヤ顔でそんなことを言ってくる雛。
だめだこいつ。思ったより使えねぇ。
「…もういいよ料理は俺が作るから」
「作れるの?」
「これでも立派な一人暮らしだぞ?」
「あのきれいな姉ちゃんに作ってもらってるくせに~」
オヤジみたいないやらしい顔で俺の脇を肘でつついてくる。
「弥生さんはときどきだよ! ときどき!」
「ドキドキ?」
俺は雛の頭を鷲掴み!
「と・き・ど・き、だ!」
「いたいいたいっ!はいときどきです~」
「よし」
「うぅ~」
「とにかく普段から自炊してたから任せとけ」
「心配だな~」
「あん?」
「な、なんでもないです。はい!」
このあともこんな調子がずっと続いた。
まだ何一つ決まっていない。
あっ、料理は俺か。