同じ
席替えの日からしばらく経ったある日。
完璧にのんとも、他の人とも関わる事がなくなった私。
どうしてなのかなあ?
何がいけないの?私は何か、しましたか?
ずっと問いかけてきたけど、答えは見つからない。
誰も私に関わらない。
どうしてもこの暗闇から出れない
どうすればいいのだろうか
いじめられてるわけでもない
無視されてるわけでもない
小学校の頃みたいに存在も消されてない
だけど
一人。
「はあ・・・」
そんな時だったのだ。
君と出会ったのは。
キーンコーンカーンコーン....
「昼休みだあー!のんっ!行こうよぉっ」
「そうだねっ!どこで食べるー?」
「屋上行こうよー」
「おおー!いいね!行こう」
のん達の楽しそうな声が私の頭の中を
駆け巡る。
―・・・やっぱり話かけてくれないよね。
私は弁当箱を持ってゆっくりと廊下へ出た。
タッ....
廊下には、楽しそうな生徒達の笑い声が聞こえる。
好きな人と一緒にお弁当を食べようとする人
昨日のテレビの話で盛り上がる人
好きなアイドルの話で盛り上がる人
お弁当のおかずを交換してる人
私にとってそれは、やっかいな人でしかない。
小学生の、まだ幸せだった頃を思い出してしまう。
作り笑いに見えるみんなの笑顔がすごく怖い。
「・・・どこに行こうかな」
とりあえず私は、5階建ての西校舎の3階から降りて、
東校舎に続く渡り廊下へと向かった。
「ここ・・・懐かしいな」
渡り廊下はすごく懐かしかった。
小学5年生の頃に一度、中学校見学で通ったところ。
あの頃に楽しそうにここを歩いたのが、記憶に残っている。
―ああ、もう懐かしく思えるんだ
自然とこぼれた涙が、手に持ったお弁当に落ちた。
「はあ...まだ涙って残ってるんだ」
もうとっくにあのときに消えてなくなったと思った涙。
涙っていつでも出てくるのか。
「何してんの?」
そんなときに声をかけてきたのは
安藤佳奈。
同じクラスだけど、出席番号も遠いし違う学校出身。
だけど、人一倍存在感があって美人で
頭がよくて元気で運動神経もいい。
そんな安藤さんが、何でここに・・・?
「ねえ、聞いてる?何してんの?泣いてるの?」
「え・・・と・・・」
安藤さんは、不思議そうに大きなキラキラした瞳で私を見た
「安藤さんこそ・・・何してるんですか」
少しドキッとしてしまった私は思わず敬語になる。
「何て・・・w西校舎の3年生に呼び出されたからさ」
「・・・なんで?」
「いや、告白ってやつ?一目惚れだってさ、嬉しいけど困るよね」
あー
モテて自信がある人の発言だな。
って思った。
「それで、野村さんは?花音ちゃんとかと一緒じゃないんだね」
安藤さんは長い髪の毛を耳にかけ
不思議そうに私を見つめる。
「あ・・・うん。友達とかじゃ・・・・ないから」
・・・友達じゃない。
それはとっさに出た言葉。
私はのんと友達じゃないの?
そうだよね。
のんとはもう友達でも何でもないか。
むしろ、最初から友達じゃなかったのかも。
のんにしたら私は、ただ暇つぶしに喋るだけの相手。
そんな風に絶対思ってる。
「友達じゃないの?意外だねー・・・。野村さんと喋ってる時花音ちゃんはいつもよりすごく楽しそうだったけど」
―え?
「それ、どういう意味なの?」
「あ・・・言っていいのかなぁこれ。」
安藤さんは少し迷いながら食いついた私に
喋ったくれた。
「花音ちゃんってうちのクラスじゃすごい人気じゃん?それは、本山小学校出身の人が私と花音ちゃんしかいないからなの。
―実は花音ちゃん、小学校の頃はものすごく暗くて漫画とか本しか読まないし眼鏡だしすこしふっくらしてて、誰とも喋らないしオタクっぽくてさ・・・・陰口とかもなかったんだけど、いわば
存在を消されてる
状態だったの。」
え・・・・?
嘘でしょ?
のんが・・・私と同じだったの?
開いた口が閉まらなかった。
「嘘でしょ!?のんって明るくてハキハキしてて皆の人気者じゃんっ!!!!そんなのんが私と同じだったなんて―有り得ないよ!!!!」
「・・・信じられないよね、全く。花音ちゃんがあんな自己紹介するなんて思わなかった。たぶん、すごく『変わろう』と努力したんだと思う」
安藤さんはそこまで話すと今度は私に
質問をぶつけてきた。
「『私と同じだった』って言ったよね?それどういう意味なの?」
「あ、えと・・・・何でもないよ。さよなら」
ダッ
そのまま私は屋上へと飛び込んだ。
「はぁっ・・・はぁっ・・・」
息がしっかりすえない状態。
安藤さんに問いかけられたとき
ものすごく怖かった。
『あの時』
あの、お母さんの目。
思い出しただけですごくふるえて。
周りが見えないくらい。
キーンコーンカーンコーン......
チャイムが鳴って5時間目が始まった。
「はぁっ・・・・はっ・・・・」
バタッ
足が震えて
目の前が真っ暗になって
私はそのまま倒れこんだ。