遠くの光
―秋穂中1・春―
春。
桜が綺麗に散っていく坂道を私は
傷だらけの足で歩いていた......。
『あの事件』から春休み中ずっと
お母さんから殴れ続けた。
それは今までと比べ物にならないくらい
痛くて苦しくて―。
時には殺されそうになったこともあったくらい。
これから通う中学校は4つの小学校の生徒が
集まって出来ている。
だから、これなら無視されても大丈夫。
他の学校の子と仲良くすればいいよね―?
そう想い、気合をいれて新しい教室へ。
そこには見たことのない顔がたくさん―。
冷たい視線も少ない。
そうか、同じ小学校の子は2人だけだ。
しかもその2人は
前野菜々(まえのなな)と藤井優実。
2人ともクラスの中ではあまり積極的じゃないほうで
いつも2人で行動している。
―なら大丈夫。中学では友達が出来る―!
安心した私は出席番号順の席に座った。
私の前の席は・・・・
「おはよう♪わたし、西山花音って言うんだ♪よろしく!」
久しぶりに誰かが私に笑顔を向けてくれた・・・・。
「あ、、、私は野村秋穂っていうんだっ////よ・・・よろしくね。」
少し照れる。こういう会話は本当に久しぶりだ。
そんな私を見て、西山さんは・・・・
「そうなんだ♪秋穂ちゃんはどこ小?私、本山小学校だったんだけど」
「あ・・・えっと。渚小学校だよ」
「へー!渚だったらあの斜め前とその前に座ってる前野さんと藤井さんと同じだね」
「え?知ってるの?2人の事・・・・」
「うん。塾が同じだったから」
「へーっ・・・そっか」
と、いうことは・・・?
もしかしたら無視されてたこと知ってるのかもしれない。
知ってて私に近づいた・・・?
それで裏切って私が苦しむところを見たいのかも・・・
どうしようかな・・・。
そんな事を考えていると、前野さんと藤井さんが来た。
そして、前野さんが西山さんの肩をたたいて言うのだ。
「のんっあのさ、先週塾で貸した漫画、今日の塾で返して欲しいんだけど」
―漫画って何だろう。
どんな漫画なのかな・・・。
「いいよー了解♪菜々さーあの展開予想できなくなかった!?」
西山さんはさっきと全然違う顔で
楽しそうに漫画の話をしていた。
藤井さんは中に入らないのかな・・・?
すると藤井さんが私に話しかけてくれた。
「あんたさ、花音に近づかないで」
「・・・・・え?」
「私ね、菜々の一番の親友なの。そしてその菜々が大切に思ってる友達が花音。私だって花音の事好きだよ。2人が一番仲良いけど。だから私はあんたみたいな嫌われ者が花音と喋ってるなんて考えられない。花音の評価まで落ちると思ったら―。だから花音と喋らないで」
―すごく久しぶりに人と会話するのがまさかこんな話題とは。
藤井さんがこんなにはっきり喋る人だと思わなかった。
そして、私は人と喋ると相手に迷惑をかけるということも今思い知った。
私が返事に戸惑っていると
藤井さんは前野さんを連れて席に戻った。
「ねねっ秋穂ちゃんっていじめ漫画とか読む?」
―喋らないでって言われたけどこのくらい良いよね?
「いやっ・・・あんまり読まない・・・かな。見てて辛いし」
「そっかあー・・・私大好きなんだよね♪あ、いじめがじゃないよ!?そういう・・・いじめ系の話?すっごい好き!」
「そうなんだー西山さんって漫画自体が好きなの?」
「うん♪あ、でもホラーは苦手かな(汗)それと、西山さんって呼ぶのやめようよ」
「・・・へ?」
「何かもうっ・・・・花音か、のんでいいよ!」
「いいの・・・・?」
「うん!何言ってんのよw私だって秋穂ちゃんって呼んじゃってるしね。あ、もう秋穂って呼んでもいいかな?」
「うっ・・・・うん」
「やったー!」
やったー!と同時にドアが開いて
担任が入って来た。
自己紹介開始・・・。
それにしても
人と会話するのってあんなに楽しいんだね。
裏切られ続けて簡単にはのんのこと信じれないけど
もしかしたら、もしかしたら―。
「では次・・・野村」
あ、自己紹介中だったっけ。
「えっと・・・野村秋穂です。3月16日生まれでうお座で血液型はA型・・・好きな食べ物は・・・基本なんでも。よろしくお願いします」
―なんてツッコミどころがない自己紹介。
周りも反応しずらそう。
でも、これでいい。
人と関わるのはまだ怖いから―。
そして次はのんの自己紹介。
「西山花音!なんと秋穂と同じ3月16日生まれ☆血液型はAB型で好きな食べ物はプリン!漫画とか歌とか大好き!趣味合うかも!って思ったら声かけちゃいます(笑)よろしく♪」
誕生日・・・同じなんだ。
同じなのにこんなに自己紹介の仕方違うんだ。
皆も反応しやすい自己紹介で
のんが人気になるのも時間の問題だった。
-1週間後-
中学生活にも慣れてきた頃。
「入学からしばらく経ったし、席替えしよっかあ~」
HRの時間に先生がそう言うと、皆が一斉に喜んだ。
「隣になれるかな!?」
「●●君となりたぃぃ~///」
「どうでもいいしー」
「私窓側がいい!絶対!」
・・・席替え、か。
のんと離れることになるのかー・・・
どうしよう。
「んじゃあ、このくじ引き引いて~」
私は順番になるとゆっくりと箱に手を入れた。
ドキンッドキンッ
鼓動が早くなる。
カサッ
「・・・・。」
「秋穂!どこだった?私窓側の一番前~」
のんが私の肩をたたいた。
一瞬、世界が止まる
「え・・・」
「?どうした?どこだった?」
「ろ・・・廊下側の一番・・・後ろ」
私はふるえた声で言った。
のんと・・・すごい離れた。
「えっ!うっそ~!まあ、どんまい☆」
・・・しかも軽く受け流すのんの態度にショック。
「あ・・・うん・・・」
すると、藤井さんが来た。
「花音!ちょっとこっち来て。」
藤井さんは花音を連れて前野さんのところへ行った。
―私はまた1人か。
ぼーっとしながら3人の様子を見ていた。
すると、こっちをチラッと見た後にクスッと3人が笑う。
そして、大声で言うのだ。
「ちょっと~私たち3人縦に並んでるじゃぁ~ん♪」
「本当だぁー♪やったねー♪」
「良かったね!のん!あんな奴と離れて!」
「うん♪ラッキーだよ、本当に」
3人は大声で笑う。
もしかして―私の事・・・?
また
一人ぼっちの暗闇に
私は消えていく
いつになったら
この暗闇から出れるのか
分からない
最終更新からまさかの2ヶ月...!申し訳ありません。
スランプでした~(汗)なので、すこし手直しをしてみました。