満月と雲と変なやつ。
満月を見ながら書きました。
《RRRRR…》
「今日ってさ、中秋の名月なんだって、一番きれいにみえるんだって。」
「…なんだ。お前か。それなら確か、朝食のときニュースで見た。俺、詳しく知らないけど。」
「月、見てる?」
「見えてる。今部活終わって帰り道。」
「そう。私はベランダから見てる。」
「うん。…で?何で俺に電話してきたの?」
「理由なんてないけど。」
「理由なしに電話してくるなよ…。切るぞ。」
「まぁまぁ、いいじゃない。学校から家、近いんだし。歩いてゆっくり帰ったら?月、綺麗だよ。」
「お前、今何時だと思ってんだ。もう8時…。」
俺の言葉を遮って、聞きなれた女声は話し出す。
「私ね、月と雲見るたびに思うの。地べたから見える二つはまるで一緒にいるように見えるけど、実際は『地球の雲』と『宇宙の月』だから、何万メートルも離れている。」
「は?お前はまた訳のわからないことを…昔から変わってないぞ、その癖みたいなの。」
「人から見た『雲』は『月』を取り囲んだように見えるけど、本当は、月に届いてすらいないんだよね。まったく人々の妄想も、勘違い甚だしいよね。なーんもわかっちゃいない。」
「……急にロマンティックだな。もう切るぞ。アイス食べたいからな。じゃぁな。」
幼馴染からの電話がこわくなって、別れの返事も聞かないまま電話を切った。いつもと違う。いつもいっつも俺に対して変なやつだけど、今回はもっと変だ。
満月だからな。きっとそうだ。
残暑が厳しい夜に冷や汗をかきながら、月の光を背中に受けて俺は自転車にまたがった。
お月見いいですよ。鈴虫と合わさって最高です。