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生還率九十九パーセントの最終配信

作者: 榮曖
掲載日:2026/09/10

 配信開始を知らせる青い輪が視界の端で回り始めると、ガレスは白い岩壁を背にして追従眼に向けて片手を上げた。三つの黒い撮影球が彼の周囲へ散り、正面と頭上と背後から装備の状態を映し出す。映像の隅には現在地と体力に加え、待機していた千八百四十二人の視聴者数が表示されていた。


「霊脈網の向こうにいる皆さんこんばんは。帰還屋ガレスの迷宮配信を始めます。今日は白縫い大迷宮の二十七階層から、失踪事件のあと沈黙した第六中継杭まで向かいます。危険を感じたら依頼の途中でも帰るので、命懸けの見世物を期待している人は別の配信へどうぞ」


 言い慣れた挨拶を終えると視界の右側へコメントが流れ始めた。「今日も帰る宣言」「その慎重さを見に来た」「どうせ中継杭を叩いて終わり」といった見慣れた書き込みが並んでいる。最後の一つには苦笑しか返せなかったが、危険な魔物を倒すより壊れた設備を調べる時間のほうが長いのは事実だった。


「開始三十秒で退屈扱いされているぞ。少しは面白い顔でもしてやればいい」


 耳元の通信石から聞こえたリアナの声には笑いが混じっていた。彼女は地上の管理室におり、六枚の映晶板にガレスの映像と周辺の魔力反応を表示している。コメントには弱いくせに彼女からの皮肉には慣れているため、ガレスは小盾の留め具を確認しながら鼻を鳴らした。


「俺が面白い顔をするときは大抵ろくなことが起きていない。そっちの計測に問題がないなら進むぞ」


「通信遅延は一秒未満で生命反応も正常。第六中継杭までは北の直進路でおよそ四十分だ。ただし周囲で確認できる冒険者はお前だけだ。妙な声を聞いても寄り道はするな」


 それが三日前に消えた探索隊を指していることは、説明されなくても分かっていた。新人配信者のマヤ・リードを含む三人組は二十七階層へ入ったあと救難信号さえ出さずに消息を絶った。最後に残された映像は仲間と雑談しながら通路を歩く平凡な場面であり、何に襲われたのかを示す音も影も記録されていない。


 ガレスが通路を進むにつれて白い壁を走る黒い鉱脈が太くなり、頭上で絡み合った線は巨大な蜘蛛の巣を思わせた。足元には戦闘の痕跡がなく、魔物の足跡も血の跡も見当たらない。それでも曲がり角ごとに照明弾を投げ、逃げ道に目印を刻んでから進む彼の手順は変わらなかった。


「視聴者が千五百まで落ちた。雑談で引き止めるなら話題を送るが、どうする」


「いらない。数字を見て足元が見えなくなる配信者だけにはなりたくないからな」


 言葉とは逆に視界の隅へ置かれた数字が気にかかっていた。半年前なら設備点検だけでも三千人は集まり、戦闘が始まれば一万人を超えたはずだった。安全第一を掲げる彼の配信は一度見れば先を読めるようになり、最近は常連からさえ同じことの繰り返しだと言われている。


 次の分岐へ差しかかったところで金色の投げ銭表示がコメントを押しのけた。送り主の名前は「縫い針」で、添えられた文章はたった三文字しかない。金額はガレスが一日の探索で稼ぐ報酬を上回っていた。


『うしろ』


 ガレスは振り返らずに盾を背後へ回し、そのまま前方へ身を投げ出した。直後に硬いものが擦れる音が走り、背嚢の上半分が床へ落ちる。断面は刃物で押し切ったように滑らかだったが、背後の通路には動くものが何も見えなかった。


「右上三十度に魔力反応。いや消えた。ガレスは動かず追従眼二号を先行させろ」


 リアナの指示に従って頭上の一球を前へ出すと、映像の中で一瞬だけ銀色の光が走った。次の瞬間には追従眼が上下へ分かれ、切断された外殻が石床を転がっている。ガレスは照明弾の栓を抜いて投げると、青白い火花の中に何十本もの細い糸が浮かぶのを見た。


 糸は壁から壁へ張られており、先ほどまで何もなかった通路を塞いでいる。黒い鉱脈と重なるほど見分けにくく、一本でも触れれば鎧ごと肉を断たれるほど鋭い。ガレスは後退しながら盾で床を二度叩き、緊急時の合図を送った。


「依頼は中止して帰還する。二十七階層で未確認の糸状罠を発見した。魔物が張った可能性が高いので、同業者はこの配信を見ても確かめに来るな」


 撤退宣言と同時に視聴者数は三千を超えた。コメント欄には心配する声と戦闘を期待する声が同じ速さで流れ、金色の投げ銭が幾つも重なる。ガレスは表示を最小化したが、消える寸前に「もっと近くで糸を見せて」という縫い針の投稿が見えた。


 照明弾の光を頼りに張られた糸の隙間を抜けると、来たときにはなかった黄色い布切れが分岐の奥に落ちていた。鮮やかな色と銀糸の縫い目は、行方不明になったマヤの外套と同じものに見える。ガレスが足を止めた途端、リアナは彼の考えを読んだように警告した。


「生命反応はお前のものしかない。その外套がいつからあるのかも分からない。拾う必要はないから予定どおり南へ戻れ」


「分かっている。映像だけ記録して先へ進むつもりはない」


 そう答えた直後に分岐の奥から女の声が届いた。助けてくださいと繰り返す声は細く掠れており、途中で何度も咳き込んでいる。三日前の配信で聞いたマヤの声とよく似ていたが、地下通路に反響しているため本人だとは断定できなかった。


「リアナは反応なしと言ったが、この階層では測定がずれることもある。入口から二十歩だけ確認して何も見えなければ戻る」


「反対だ。声を記録した魔道具か擬態種の可能性がある。どうしても行くなら追従眼だけを飛ばせ」


 ガレスは反論せず残った二球のうち一球を通路へ送った。追従眼の映像はすぐに砂嵐へ変わり、七秒ほど遅れて黄色い外套を着た少女の背中が表示される。彼女は壁へ向かって座り込み、助けを求めながら両手で頭を抱えていた。


 コメント欄が一気に加速し、視聴者数は五千を超えた。「生きていた」「早く助けろ」という言葉の間に赤い文字が続けて現れる。送り主はどれも縫い針であり、ガレスがまだ起こしていない行動を言い当てていた。


『ガレスは右足から入る』


『剣を抜く』


『リアナの命令を無視する』


 ガレスは上げかけた右足を下ろさず、腰の剣から手を離した。最後の投稿から数秒が過ぎても新しい文章は届かない。背後の糸が照明弾の光を失って再び見えなくなり、助けを求める声だけが変わらない間隔で続いていた。


「リアナ。この縫い針という利用者を調べられるか。投げ銭の経路も含めて頼む」


「もう追っているが地上から送られた記録がない。コメントも金額も第六中継杭で突然発生している。そいつは霊脈網の向こう側にいない」


 ガレスは通路の奥に浮かぶ追従眼を手元へ戻した。映像の少女はまだ同じ姿勢で座っているが、助けを求める声と肩の動きが合っていない。音声だけが七秒前とまったく同じ咳を繰り返し、視聴者の反応に合わせて音量を上げていた。


「マヤではないな。追従眼の映像を保存して全端末を切断しろ。第六中継杭も遠隔で焼いて構わない」


「すでに停止命令を送った。だが受け付けない。お前の追従眼ではなく失踪した三人が残した端末群が配信権限を引き継いでいる」


 リアナが答えた瞬間に視界の映像が四分割され、見覚えのない角度から立ち尽くすガレスの姿が映った。一つは天井近くの鉱脈から見下ろし、もう一つは黄色い外套の足元から彼を捉えている。残る二つは背後と横の壁から撮影しており、どの映像にも持ち主だった探索者たちは映っていなかった。


 視聴者数は八千を超え、縫い針以外のコメントにも同じ文章が混じり始めた。「右足から入る」「剣を抜く」「命令を無視する」という三つの言葉が異なる名前から何度も投稿されている。ガレスには本物の視聴者が面白がって真似しているのか、それとも全てが中継杭から送られているのか判断できなかった。


「あれはこっちを見て学んでいる。探索者を襲うだけなら声も配信も必要ない。俺たちがどこで驚いて何を期待したのかを拾って、次の餌に使っているんだ」


「分析は地上へ戻ってからにしろ。南の通路にある糸を魔力像に重ねた。こちらから安全な隙間を送る」


 視界に青い線で退路が示され、ガレスは照明弾をもう一つ投げた。浮かび上がった糸は先ほどより増えており、床から腰の高さまで複雑な網を作っている。それでもリアナが示した線には人一人が通れる隙間が残されていた。


 ガレスは小盾を胸に寄せて最初の糸をまたぎ、身体を横に向けて二本目の間を抜けた。足元に赤い線が走るたびに止まり、照明弾の残光と重ねて位置を確かめる。背後ではマヤの声が泣き声へ変わっていたが、決まった間隔で繰り返す咳が混じっている限り振り返るつもりはなかった。


「そのまま三歩前へ進んで右肩を下げろ。次は頭の高さに一本あるから、私が合図するまで立つな」


「了解した。帰ったら照明弾の追加費用を経費で落としてくれ。今日はもう四本も使わされた」


「申請書に魔物への苦情を書かなければ通してやる。だから余計なことは考えず戻ってこい」


 聞き慣れたやり取りがガレスの呼吸を整えてくれた。最後の糸をくぐれば来た道へ戻れるため、あとは目印を追って上層へ向かえばいい。彼が膝をついて合図を待っていると、耳元からリアナの声がもう一度聞こえた。


「今だ。立って左へ跳べ」


 ガレスは動かなかった。先ほどまで映像に引かれていた青い退路が消え、地上からの通信を示す印も灰色へ変わっている。それなのにリアナの声だけは途切れず、苛立った調子で同じ命令を繰り返していた。


「合言葉を確認する。初めて組んだ日にお前が夕食で残したものは何だ」


「そんな話をしている場合か。立って左へ跳べ」


 偽物だと分かった瞬間にガレスは伏せたまま盾を頭上にかざした。左側の暗がりから六本の白い腕が伸び、指先から放たれた黒い糸が盾の表面を走る。鋼板は音も立てずに九つへ分かれ、ばらばらになった破片がガレスの肩と背中に降りかかった。


 白い甲殻に覆われた魔物が壁から身体を剥がすように姿を現した。二本の脚は不釣り合いに長く、細い胴の左右から六本の腕が折り畳まれている。顔にあるのは縦に開いた穴だけで、その奥では切断された追従眼の青い光が瞬いていた。


 黄色い外套を着た少女も立ち上がり、こちらへゆっくり顔を向けた。外套の中に人間の身体はなく、白い骨片と壊れた装備が黒い糸で人の形に束ねられている。星形の髪留めだけが本物らしく額の位置で揺れ、その口に当たる隙間からマヤの声が流れていた。


「助けてください。助けてください。右足から入る。剣を抜く。リアナの命令を無視する」


 ガレスは粘着瓶を床に投げつけ、砕けた瓶から広がる樹脂で魔物の脚を固めた。続けて剣を抜き、照明弾の光に浮かぶ糸を斬り払う。剣先は二本を切ったところで欠けたが、人が通れるほどの穴を作ることには成功した。


 彼が穴へ踏み込むのと同時に本物の通信が一瞬だけ戻った。激しい雑音の向こうでリアナが何かを叫び、視界へ強制帰還用の術式が表示される。ガレスが腰の帰還札に手を伸ばすより早く細い光が走り、札を入れていた小革袋が帯ごと床へ落ちた。


「ガレス聞こえるか。第六中継杭を地上側から切り離した。それでも配信が止まらない。そいつは迷宮の鉱脈そのものへ信号を流している」


「聞こえている。二十七階層を封鎖しろ。中継杭を撤去するだけでは足りないから、追従眼を持ち込ませるな。こいつは人間を食う前に反応を食っている」


「北へ十二歩の壁が薄い。破砕瓶が残っているなら隣の通路へ抜けられる。お前の右側に二本来るから先に伏せろ」


 ガレスが身を沈めると頭上を二本の糸が通り、背後にあったマヤの人形が幾つもの塊に崩れた。魔物は仲間の遺体で作った餌を壊しても気にせず、六本の腕を異なる方向へ伸ばして新しい糸を張る。コメント欄には悲鳴を表す記号が溢れ、視聴者数は一万五千を超えていた。


 破砕瓶は腰から落ちた小革袋の中にあり、手元へ残るのは欠けた剣と最後の照明弾だけだった。薄い壁まで十二歩なら走り抜けられる距離だが、目に見えない糸が何本あるのか分からない。ガレスは照明弾を壁へ向けて転がし、火花が広がるより先に駆け出した。


 青白い光の中で無数の黒い線が浮かび上がった。リアナの警告に合わせて一歩目で身を沈め、二歩目で右へずれたまでは予定どおりだった。三歩目を踏み込んだとき魔物はガレスではなく、彼を撮影していた追従眼の一球を狙って糸を放った。


 撮影球は切断されず糸に絡め取られ、魔物の頭上へ運ばれていく。映像の角度が変わるとガレスの位置と糸の隙間が配信画面へはっきり映った。直後にコメント欄に縫い針の赤い文字が現れた。


『つぎは左腕』


 ガレスは左腕を胸に引いたが間に合わず、肘当ての下に焼けるような痛みが走った。腕そのものは残っているものの筋肉を深く裂かれ、庇った拍子に右手から剣を取り落とす。生命反応の表示が黄色から赤へ変わると視聴者数は二万人に届いた。


「配信を見るな。そいつは画面の反応だけでなく、俺がどちらへ避けるかまでコメントを使って試している。記録も残すな」


「こちらでは止められない。だが中央管理局に迷宮側の霊脈を切断するよう要請した。三分だけ持ちこたえれば全部落とせる」


「三分か。お前は昔から無茶な予定を平気な声で言うな」


「その無茶を何度も通したのはお前だ。今度も戻ってきたら申請書は全部書いてやる」


 先ほど偽物が答えを濁した合言葉の答えは、焦げた豆だった。五年前の彼女は焦げ臭い皿へ一度も手を付けず、ガレスの肉と勝手に交換した。そんなことを思い出せるうちはまだ恐怖に呑まれていないと確かめ、ガレスは左腕に残った盾の革紐を傷の上で締め直した。


 魔物はすぐに襲わず、彼が次に何をするのか待っていた。縦に開いた顔から流れる声はマヤからリアナへ変わり、今度は帰ってこいと繰り返している。コメント欄にも「三分なら耐えられる」「帰還屋を信じろ」という言葉が増え、その期待に応えるように綴り喰らいは糸を緩めた。


 ガレスは薄い壁に背を向け、残った右手で切断された追従眼の半球を拾った。視聴者には逃げ道を諦めたように見える角度を選び、足元に転がっていた照明弾の金属筒を踏みつける。筒の中には使い切れなかった発光剤が残っており、外殻を割れば一度だけ激しく燃え上がるはずだった。


「リアナ。こいつに名前を付けるなら綴り喰らいにしろ。人間と映像をつなぎ合わせて狩りを続ける。次に来る連中が検索しやすい名前を記録に残せ」


「自分で報告書へ書け。勝手に仕事を増やすな」


「焦げた豆はもう出すなよ」


 ガレスは答えを待たず追従眼の残骸を魔物へ投げ、同時に金属筒を踏み砕いた。白い閃光が通路を埋め、壁から伸びた糸が一斉に黒く浮かぶ。魔物が撮影球を守るため二本の腕を上げた隙に、ガレスは糸の薄い場所へ肩から飛び込んだ。


 最初の三本は肩当てと背嚢を切っただけで身体まで届かなかった。四本目は脇腹を浅く裂き、五本目が右腿の外側に食い込む。それでも倒れずに薄い壁まで進んだガレスは右肩を岩に打ちつけ、亀裂が走った場所へ何度も体当たりした。


 壁の向こうから冷たい風が漏れ、隣の通路まで拳二つ分の穴が開いた。ガレスが右腕を差し込んで岩を崩そうとしたところで、足首に絡んだ糸が強く引かれる。身体が仰向けに倒れ、届きかけた穴が視界の上方へ遠ざかった。


「あと二分だ。右手の先に固定具がある。糸を切れなくても壁に縫い付ければ引き戻されずに済む」


 リアナの指示を聞きながらガレスは床を探ったが、指先に触れるのは細かな岩と自分の血だけだった。魔物は黒い糸を巻き取りながら近づき、四本の腕で彼の両手と両足を一本ずつ押さえて残る二本で胴を押さえ込む。甲殻の隙間では三つの追従眼が青く光り、どれも傷一つないレンズをガレスへ向けていた。


「リアナ。もう俺の生命反応ではなく配信の接続先を追え。中央管理局が霊脈を切ったあと別の迷宮で同じ映像が流れたら、こいつは外へ出ている」


「黙って固定具を探せ。お前の脈はまだ――」


 声は途中で途切れ、地上との通信を示す印が完全に消えた。中央管理局が予定より早く霊脈を切ったのか、魔物が先に通信だけを奪ったのかは分からない。しかしコメント欄と視聴者数は消えず、二万七千人を示す数字が赤く明滅していた。


 綴り喰らいは一本の腕を持ち上げ、人の指に似た先端を左右へ振った。配信を終えるときにガレスが使う別れの仕草を覚えたらしく、他の五本も少し遅れて同じ動きを始める。縦に開いた顔から聞こえたのはガレス自身の声だった。


「危険を感じたら依頼の途中でも帰るので、命懸けの見世物を期待している人は別の配信へどうぞ」


 黒い糸が張り詰めた瞬間に右手の感覚が消え、遅れて石床へ何かが落ちる音がした。痛みより先に生命反応の表示が一段ずつ欠けていき、赤い警告が視界を埋め尽くす。ガレスはせめて顔を撮影球から背けようとしたが、首へ巻きついた糸に顎を持ち上げられた。


     ◇


 地上の管理室ではリアナが停止命令を打ち込み続けていた。六枚の映晶板のうち五枚は霊脈の切断と同時に暗くなったが、中央の一枚だけは二十七階層からの映像を流している。接続先も送信者も空欄のままなのに視聴者数は増え続け、コメントを閉じる操作さえ受け付けなかった。


「ガレスの追従眼は全て登録を解除した。第六中継杭も霊脈も止まっている。それなら誰がこの映像を送っているの」


 誰に尋ねたわけでもない声に答えるように映像が揺れ、石床だけを映していた撮影球がゆっくり持ち上がった。画面の奥では綴り喰らいが六本の腕を動かし、黒い糸で掴んだものを白い岩壁の前へ並べている。黄色い外套と砕けた盾に続き、焦げ茶色の髪が付いた頭部が画面の中央へ置かれた。


 リアナは文字盤から両手を離せず、削除命令を同じ欄へ何度も打ち込んだ。配信終了を示す確認窓は開かず、代わりに過去最高視聴者数を知らせる金色の表示が重なる。三万一千四百八十八人が見守る配信画面の中で、ガレスの身体は黒い糸に吊られたまま幾つもの肉片へ切り分けられていた。

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