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~北九州・境界観測録~  大根(短編)

作者: クローム
掲載日:2026/03/24

3作目

 ■「あったはず」

 

 冷蔵庫を開けて、少しだけ手が止まった。


 何を取ろうとしたのか、すぐには思い出せない。


 しばらくして、ああ、と気づく。


 大根だ。


 昨日、一本買ったはずだった。 半分に切って、ラップに包んで、下の段に入れた。


 そこを見る。


 ない。


 奥まで覗く。 引き出しも開ける。


 ない。


「親父、大根使った?」


 中に声をかけると、すぐに返ってくる。


「知らんぞ」


 いつも通りの声だ。


 もう一度、中を見る。


 やっぱり、ない。


 不思議なのは、なくなったことじゃない。


 あったときの感じだけが、やけにはっきりしている。


 手に持った重さとか、 切ったときの音とか。


 そこまで覚えているのに、 今、どこにもない。


 引き戸が開いて、九十九が入ってきた。


 勝手に冷蔵庫を覗いて、何も言わずにビールを取る。


「大根、見なかった?」


 聞くと、少しだけ考えるようにしてから、


「ああ」


 とだけ言った。


「そういうのはな」


 一口飲む。


「残り方が逆になることがある」


「逆?」


「物は消える」


 あっさり言う。


「触った方が残る」


 冷蔵庫の中を見る。


 空いているはずの場所に、 なんとなく“置いてあった感じ”だけがある。


 手を伸ばしかけて、やめる。


 そこに何かある気がして、触りたくなかった。


 そのまま扉を閉める。


 夜、もう一度だけ確認した。


 やっぱり、何もない。


 代わりに、まな板の上に水が残っていた。



雰囲気重視

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