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実は転生した王太子が、魔女と呼ばれた私をずっと守っていた件  作者: 九葉


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最終話

結婚式の日。


王都の大聖堂は、氷の花で埋め尽くされていた。

私の魔力が、勝手に祝福を形にしている。


私は白いドレスを着て、父(公爵家当主)に腕を預かっていた。

父は泣きそうだった。


「……本当に、幸せになれるんだな?」


「ええ。お父様」


私は微笑んだ。


「世界で一番、幸せになります」


扉が開く。


通路の先に、セイルが立っていた。


黒の正装に銀の髪。

もう王太子じゃない。

でも、民衆が選んだ「新王」だ。


彼は私を見た瞬間、目を見開いて、涙をこぼした。


(綺麗すぎて、死にそう……)


心の声が、はっきり聞こえた。


そういえば、腕輪の魂が完全に融合してから、セイルの心が私に届くようになった。


私は歩き出す。


一歩ごとに、氷の花が足元で咲く。


祭壇の前で、セイルが私の手を取る。


「エリシア……」


声が震えている。


神父様が微笑みながら問う。


「セイラフィール王、誓いの言葉を」


セイルは深呼吸して、私の目を見つめた。


「僕は、君を一生守る。

王としてじゃなく、男として。

君が泣く日は二度と作らない。

君が笑うためだけに、この命を使う」


会場が静まり返る。


次は私の番。


「私も、誓います。

どんなときも、あなたのそばにいる。

あなたの騎士として、あなたの妻として、あなたのすべてとして」


そして、キス。


聖堂中に、氷の花火が上がった。


民衆の歓声が、外まで響く。


式が終わって、バルコニーに出たとき。


セイルが、小さな箱を差し出した。


「これ、最後のプレゼント」


開けると、そこには──


新しい腕輪。


でも、ひとつじゃなくて、ふたつ。


小さな、小さな子どもサイズのものと、私用の新しいもの。


「え……?」


セイルは照れくさそうに頬をかいた。


「実は、腕輪の魂は……子孫にも受け継がれるんだ」


私は目を丸くした。


「つまり……」


「うん。僕たちの子どもが生まれたら、この小さな腕輪を着けてあげる。

そうすれば、僕たちの愛は、永遠に続く」


涙が止まらなかった。


私はセイルの胸に飛び込んで、叫んだ。


「子ども、いっぱい産むね!」


会場がどっと沸いた。


セイルは真っ赤になって、でも最高の笑顔で頷いた。


「何人でも、歓迎だよ」


***


それから、七年後。


王宮の庭園。


春の陽射しが、氷の花を優しく溶かしていく。


私はベンチに座って、三人の子どもたちを見守っていた。


長女のリリア(6歳)は、すでに小さな氷の蝶を作って遊んでいる。

長男のセイル・ジュニア(4歳)は、妹の手を引いて走り回る。

次女のエリナ(2歳)は、私の膝の上で眠っている。


「ママ! 見て見て!」


リリアが駆け寄ってきて、私の腕に巻かれた新しい腕輪を触る。


「パパの声、聞こえる?」


私は微笑んで頷いた。


(エリシア、今日も綺麗だな)


セイルの心の声が、優しく響く。


庭の向こうから、本物のセイルが歩いてくる。


王の仕事が終わったらしい。


「ただいま」


彼は私の隣に座って、自然に肩を抱いた。


子どもたちが「パパ!」と飛びついていく。


私はセイルの耳元で囁いた。


「ねえ、今日も聞こえてるよ。

『世界で一番愛してる』って」


セイルは照れ笑いしながら、キスを落とす。


「バレてたか」


子どもたちが「えー!」と騒ぐ。


私は笑いながら、みんなを抱きしめた。


かつて「魔女」と呼ばれた私。


孤独だと思っていた私。


今は、世界で一番大きな家族に囲まれている。


石を投げられたあの日から、すべてが変わった。


あのとき、黒マントの少年が現れてくれなかったら。


あのとき、腕輪をくれなかったら。


でも、もう「もしも」はいらない。


だって、今が最高の現実だから。


セイルが私の手を握る。


温かくて、強くて、永遠の約束。


私は目を閉じて、心の中で呟いた。


(ありがとう、セイル。

あなたが、私をずっと守っててくれたから、私はここにいられる)


風が吹いて、氷の花が舞う。


子どもたちの笑い声が、王宮中に響く。


私たちの愛は、これからもずっと続く。


どんな姿でも、どんなときでも。


本当の愛は、絶対に見失わないから。

あなたも、きっと誰かに守られている。

どんなに辛くても、どんなに孤独でも。

その人は、黒マントを着てでも、腕輪を渡してでも、絶対にそばに来てくれる。


だから、もう怖くないよ。


あなたの物語も、必ずハッピーエンドになる。


約束する。


――エリシアより


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