7.「デートしてくれない?」
文章書く乗って難しいですね。
『お義姉様、今日も美しい……』
潤けるような声で独り言をつぶやく。
ココ最近のミラ様はとても楽しそうだ。
僕がそばにいなくても楽しそうなのは少し悲しいが、笑顔のミラ様を見られるなら悲しさが喜びに上書きされる気がする。
「ノア様〜いらっしゃいませんかー」
近くの広場からそんな声が聞こえてきた。
その声の主を辿ってみると、金色に輝く髪に真赭色の落ち着いた雰囲気のドレスに身を包んでいるロニセラ嬢だった。
あんなに大人びた服装なのに身長のせいか幼く見える。
『かわいいなぁ……』
遠目でロニセラ嬢を見ながら呟く。
彼女はキョロキョロと周りを見て私を探しているが一向に見つからない。
それもそのはずだ。
私が今いるのは広場の外れにある木の上だ。
一般的に考えて、令嬢が木の上に登るなどありえない話だ。
『やっぱり美しい令嬢を見るのは目にいいなぁ。』
そんなどうでもいいことを呟き、木の上に座り令嬢達を眺めている。
のびのびと昼休憩を満喫していると木の下から声をかけられた。
「御一緒しても?」
声をかけてきた主の方を見てみるとアルファスだった。
『いいですよ。』
僕はあたかも知っているような口調でそう答えたが、内心は心臓バクバクだった。
何故アルファスは僕がここにいるのに気がついたのか、その事で頭はいっぱいだった。
もしかしてアルファスは僕がここに登るようなお転婆令嬢だとでも思ったのか。
まぁ間違っては無いけど……
まぁ最近、アルファスと話機会はあまりなかった。
こうやって令嬢達を見て暇を潰すのもいいが、アルファスについて知ってみるのもたまにはありかもしれない……と思うがいかんせん話題がない。
どうしようかと思考をめぐらせていると、僕の心情を汲み取ったのか彼から話を降ってくれた。
「こんな木の上で何を?」
『少し休憩したくて。』
とそう話すと彼はニヤリと笑った。
何故か小馬鹿にしたような笑いに感じたのは気のせいだろうか。
「いやぁ、本当に面白いですね、ノア嬢は。」
『いや、そんなことありませんよ。』
「そんなことありますよ、木の上に登る令嬢など今まで聞いたこともないですから。」
「しかも気に昇っていたのがミラ嬢を見るためとは。」
僕は身を見開いた。
何故バレているのか、彼には休憩と言ったはずだ。
特におかしい点もないと思うがどうしてだろう。
その僕の心情を理解したように彼はいたずら好きの子供のような笑顔でくつくつと笑った。
そんな彼に少しイラッとして彼の顔を見ながら睨んだ。
「大丈夫ですよ、本人にはいいませんから。
だからそんなに睨まないでくださいよ。」
『貴方がいらないことを言うからです。』
そういうと彼は笑顔を向けてきた。
その彼の面白おかしいものを見るような笑顔に僕は言いようのない敗北感を覚えた。
そして今日は彼に振り回されてばっかりだったが次話す時は負けないと心に誓った。
『あとお義姉様には言わないでくださいね。』
そう念を押して確認すると、彼は少し悩んだ素振りをみせたが、すぐにこちらに向き直り、また意地悪い笑顔を見せてきた。
「ノア嬢が僕のお願いを聞いてくれるなら言わないでおきますよ。」
なんて意地悪なやつだ。
もしこいつがミラ様に仇なすやつならぼこぼこにしているところだった。
それからミラ様に怒られることとアルファスのおねがいをひとつ聞くことを天秤にかけて考えてみたが、ミラ様に怒られることが嫌すぎて天秤は考える間もなくアルファスのおねがいの方に傾いた。
『死ねとかお義姉様を裏切れ以外のことなら。』
そう呟くとアルファスは少し嬉しそうな顔になった。
『いやぁ嬉しいよ、もしかしたら断られるかもって思っていたからね。』
『そんなことはどうでもいいから、お願いって何。』
「いやぁ怖いね、最初はあんなに丁寧な口調だったのに。まぁいいか、じゃあお願いなんだけどね、この後デートしてくれない?」
『デート…ですか。』
デートなんてしたことが無いからよく分からないが男女が遊びに行くこと位は知っている。
何故僕を誘ったのかよく分からないが、おそらくアルファスも貴族だから息抜きしたいんだろう。
『いいですよ。』
そうすまし顔で言うノア嬢を尻目に隔靴掻痒な反応を見せない彼女にアルファスは少し悲しい気持ちになっていた。
それでもすぐに笑顔を作り彼はいつもの調子で喋り出す。
「ありがとう、じゃあ今日学校終わったらこの木の上で待ってるよ。」
「分かりました。じゃあ学校終わりにまた……」
そう言い残して僕は木の上から飛び降り、次の授業の準備をするためにその場を後にした。




