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異世界リロード 〜没落貴族ですが、現代FPS知識で戦場を無双します〜  作者: 雪消無
第1章:『異世界への転生と、FPS知識の覚醒』
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影の守護隊と狙撃弓(スナイパーライフル)』

 隣村との戦争ごっこでの圧勝は、俺たちの関係を決定的に変えた。カイは俺に全幅の信頼を寄せるようになり、ミアも俺の戦術を理解しようと熱心に質問してくるようになった。他の子供たちも、俺を「司令官」と呼び、その指示に忠実に従う。心地良い高揚感と、確かな手応え。俺は、この路地裏に確固たる居場所を築きつつあった。


そんなある日、カイが儲け話を思いついた。


「なあ、レン。俺たちで街の平和を守る『自警団』を作らねえか?」

「もう名前も考えてる。『影の守護隊ガーディアン』だ。カッコ良いだろう?」


 最近、領内の治安が悪化し、チンピラや小規模な盗賊がうろついているらしい。そいつらを捕まえて兵士に突き出せば、報奨金がもらえるというのだ。


「お前の指揮があれば、俺たちならやれる!」


 カイの目は本気だった。正直、危険すぎるとは思った。相手は遊び仲間の子供ではない。だが、俺の心の奥底で、くすぶっていた炎が再び燃え上がるのを感じた。自分の知識が、このリアルな世界でどこまで通用するのか試してみたい。そして何より、この仲間たちと共に、もっと大きな勝利を掴んでみたい。


 こうして、俺たち「影の守護隊」の活動が始まった。俺は司令官として、徹底的にFPSのセオリーを叩き込んだ。まずは「索敵」。町の子供たちのネットワークを使い、盗賊の出現ポイントや人数、装備といった情報を事前に収集する。


 次に「地の利」。戦う場所は、俺たちが知り尽くした路地裏に限定。罠を仕掛け、奇襲に最適なポイントを選定する。


 結果は、面白いように出た。俺の立てた作戦通りに動き、チンピラや二、三人組程度の盗賊なら、面白いように捕らえることができた。報奨金は山分けし、懐が温かくなるにつれて、仲間たちの士気も上がっていった。


 だが、そんな成功体験は、ある日の苦い敗北によって打ち砕かれる。その日の獲物は、五人組の盗賊だった。いつも通り、俺は入念な作戦を立てた。奇襲し、分断し、各個撃破する。完璧なプランのはずだった。しかし、俺たちの前に現れた盗賊は、今までの雑魚とは明らかにモノが違った。歴戦の傭兵のような、鋭い目つき。こちらの奇襲を読んでいたかのように、すぐさま陣形を立て直し、反撃してきたのだ。


「ぐあっ!」


先陣を切ったカイが、盗賊の振るう錆びた剣に腕を斬りつけられ、吹き飛ばされた。その瞬間、俺たちの連携は脆くも崩壊した。恐怖に駆られた仲間たちは散り散りになり、俺もなすすべなく、深手を負ったカイを抱えて命からがら逃げ出すのが精一杯だった。


 幸い、カイの傷は命に別状はなかったが、初めての失敗は自警団の士気の低下と自分の無力さを痛感させられた。戦術は完璧だった。だが、個々の戦闘能力、つまり「フィジカル」の圧倒的な差が、それを上回った。FPSで言えば、どんなに優れた戦術があっても、相手のエイムが神がかっていれば負けることがあるのと同じだ。


俺には、直接戦闘で仲間を守る力がない。近接戦闘では勝てない。ならば、どうしたらいい?


 答えは一つだ。戦術だけでなく、「装備ギア」で圧倒的な優位性を確保するしかない。


 屋敷に戻った俺は、書斎に籠り、古い書物を漁った。

実際に戦うには今一度この世界の武器や魔法について、もっと深く知る必要がある。そして俺にはイメージしている武器があった。


(あれと同じように使える武器があれば……)


 しばらくして、俺は一冊の挿絵が豊富な本を見つけた。そこに描かれていたのは、この世界では一般的な武器である「魔法弓」だった。魔法の力を借りて矢を加速させ、遠距離の敵を射抜く武器。だが、俺の目には、それが全く別のものに見えた。


(『スナイパーライフル』だ!!)


 FPSの世界では、スナイパーライフルは遠距離から敵を排除し、戦況を有利に進めるための重要な武器だった。この魔法弓も、その特性を活かせば、同じような運用が可能なのではないか。

さらに、魔法の力を応用すれば、弾道計算や風の影響を無視することもできるかもしれない。


 俺の頭の中で、現代知識と異世界技術が融合し、新たな戦術が次々と構築されていく。それは、まるで新しいゲームの攻略法を見つけたかのような、興奮に満ちた感覚だった。


(これだ……この『魔法弓』を、スナイパーライフルに改造するんだ!)


俺はすぐに行動に移した。屋敷で「レナード」として、


「ガロウ、頼みがあるんだ。僕に合う、特注の剣を作ってくれる職人を紹介してくれないか?」


 父の覚えもめでたいガロウに接触する。ガロウ・ハンマー。アルバート家に代々仕える古参の兵士で、俺の記憶の中では、剣術の稽古でいつも俺を打ちのめしていた無骨な男だ。顔にはいくつもの傷跡があり、その体は岩のように鍛え上げられている。だが、その眼差しには、主への深い忠義が宿っていた。


「でも才能ないのに剣なんて恥ずかしいから、お父様には内緒にして欲しいんだけど…」


もちろん、嘘だ。だが、今まで武芸に一切の興味を示さなかった俺からの申し出に、ガロウは目を丸くした後、顔を喜色で満たした。


「坊っちゃん! やっとその気になってくれましたか! お任せください、領内で最高の腕を持つ職人を紹介いたしましょう!」


 ガロウの期待に満ちた顔に少し罪悪感を覚えつつも、俺は彼の紹介で鍛冶工房を訪れた。そこで俺は、唖然とする職人を前に、一枚の設計図を広げてみせた。


「剣じゃない。俺が欲しいのは、これだ」


 そこに描かれていたのは、既存の魔法弓とは似ても似つかぬ代物だった。遠くの的を正確に狙うための「照準器スコープ」。矢のブレを極限まで抑えるための「安定機構」。そして、少ない魔力で高い威力を生み出すための、複雑な「魔法回路」。


「坊ちゃん、いくらなんでも冗談が過ぎますぜ。ガロウ様の紹介だから話を聞いてますが、こんなもん、何に使うんですかい?それに、こんな複雑な魔法回路、組めるわけが…」


「できる。この回路なら、魔力の指向性を極限まで高め、一点に収束させることが可能だ。結果、少ない力で矢を絶大な威力で射出できる」


 俺は、前世でかじった物理学の知識と、この世界の魔法理論を組み合わせ、職人に熱弁をふるった。最初は俺をただの世間知らずの貴族の坊ちゃんだと思っていた職人も、俺のあまりに具体的で論理的な説明に、次第に引き込まれていった。


試行錯誤の末、ついにプロトタイプの「狙撃用魔法弓」が完成した。ずっしりと重く、無骨で、もはや弓とは呼べないそれは、まさしく俺が夢見た「スナイパーライフル」だった。


 工房の裏にある試射場で、俺はその性能を試す。職人が「あんな遠く、当たるわけがねえ」と笑う、遥か先の的に狙いを定める。スコープを覗き、風を読み、弾道を計算する。


FPSで何百万回と繰り返した動作だ。


集中し、魔力を込め、引き金を引く。


放たれた矢は、風を切り裂くような音を立てて一直線に飛び、乾いた音を立てて的のど真ん中に突き刺さった。


「……ば、馬鹿な…」


作った職人本人が絶句している状況。俺は、その光景を冷静に受け止めていた。当然の結果だ。だが、それ以上に、自分の知識がこの世界で「形」になったという事実に、体の芯が震えるほどの興奮を覚えていた。


 俺はこの革命的な武器の量産を決意した。盗賊退治で稼いだ金と、奴らがため込んでた金は全てこの「未来」へ投資する。この力があれば、仲間を守れる。そして、もっと大きな獲物を狩ることができる。この世界が急に魅力的に思えてきた。

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