エレノア・フォン・アークライト
王都防衛シミュレーションでの俺、レナード・アルバートの活躍は、もはや伝説となっていた。
国王陛下からの信頼は絶大で、王都の貴族たちは俺を見るたびに深々と頭を下げる。
まるで、俺が『サーバー』の『管理者』にでもなったかのようだ。
だが、その一方で俺の急激な台頭を快く思わない貴族たちの嫉妬と反発も、水面下で渦巻いているのが分かった。
特に、ゼノス公爵は俺への敵意を隠そうともしない。
彼の目は、まるで『チート使用者』を睨みつける『アンチチートシステム』のようだ。
（ま、当然だよな。俺の『戦術』は、この世界の『常識』をぶっ壊してるんだから。でも、それが面白いんだよな、この『ゲーム』は）
リシアとセリナは、俺を巡って穏やかながらも火花を散らす関係が続いていた。
リシアは、俺の身の回りの世話を焼きたがり、セリナは、俺の訓練に付き合えとせがむ。まるで、俺の『パーティーメンバー』が、それぞれ『好感度』を上げようと必死になっているかのようだ。
そんな中、王都の社交界に新たな『プレイヤー』が参戦してきた。
「レナード様、初めまして。わたくし、王族の遠縁にあたります、エレノア・フォン・アークライトと申します。貴殿の戦術に、大変興味がございますの」
エレノア・フォン・アークライトは、その場に現れただけで、空気を一変させるような存在だった。
彼女の容姿は、単なる美しさだけではない、知性と品格が滲み出るようなオーラをまとっていた。ストレートの艶やかな黒髪は、まるで深い夜空を思わせる。その髪は、彼女の透き通るような白い肌を際立たせ、どこか神秘的な雰囲気を醸し出していた。
瞳は、ただの黒ではなく深い思慮を湛えた、知的なアメジスト色。それはまるで、彼女の頭の中にある膨大な知識とデータが可視化されたかのようだ。その視線は、人の感情の機微を読み取り、心の奥底を見透かしているかのように鋭い。
身につけているのは、派手な装飾のない、シンプルながらも上質な深紅のドレス。そのデザインは、彼女のシャープな魅力を引き立て、無駄な装飾を排したスタイルは、彼女が効率性を重んじる思考の持ち主であることを示唆していた。
彼女の顔には、常に柔らかな笑みが浮かんでいる。しかし、その表情からは一切の感情が読み取れない。それは、相手に心地よさを与えながらも、決して心の内を見せない、ポーカーフェイスを思わせる。
エレノアは、リシアのような庇護欲をかき立てるタイプでも、セリナのような情熱的なタイプでもない。彼女は、レンの知的な部分に惹かれ、彼と同じレベルで物事を語り合える唯一の相手として、彼に近づいてきた。
その容姿は、彼女の知的な魅力を際立たせ、レンにとって攻略しがいのある、新たな「強敵」として映っていた。
俺は、新たな『ミッション』の予感に、思わず身震いした。王都の社交界という『戦場』は、まだまだ奥が深い。
新たなヒロイン候補、エレノアの登場により、俺を巡る女性たちの『攻防戦』は、さらに激しさを増した。
リシアの純粋な好意、セリナのツンデレなアプローチ、そしてエレノアの知的な誘惑。まるで、俺という『ターゲット』を巡って、『三つ巴』の『チームデスマッチ』が繰り広げられているかのようだ。
「お兄様、今日の夕食は、お兄様の大好きなシチューにしました！ エレノア様も、セリナ様も、どうぞご一緒に！」
リシアは満面の笑みでそう言った。
その可愛らしい笑顔は、まるで『回復アイテム』のように俺の心を癒してくれる。だが、その隣で、セリナとエレノアの間に、目に見えない火花が散っているのが分かった。
セリナは、リシアの手料理に警戒心を抱き、エレノアは、リシアの純粋さに感心しつつも、その『潜在能力』を分析しているかのようだ。
「レナード、貴様、最近は訓練を怠っているのではないか？ 私との模擬戦も、最近は手抜きではないか？」
セリナは、俺の腕を掴み、訓練場へと引きずろうとする。その力強い手つきは、まるで『強制連行』だ。だが、その直後、エレノアが優雅な笑みを浮かべ、セリナの前に立ちはだかった。
「セリナ様、レナード様は、わたくしとの『戦略会議』がございますの。訓練は、また別の機会にされてはいかがでしょう？」
エレノアは、知的な言葉でセリナを牽制する。セリナは、エレノアの言葉に一瞬ひるむが、すぐに反論しようとする。
俺は、三人の間で揺れ動き、どう対応すべきか悩んだ。まるで、『マルチキル』どころじゃない、『エース』を狙うレベルの難易度だ。俺の『HP』が、どんどん削られていくような感覚に陥る。
俺は、三人の女性からのアプローチに戸惑いながらも、それぞれの好意を無下にしないよう、必死に『バランス』を取ろうとした。
時には、リシアの手料理を褒め、時には、セリナとの模擬戦で本気を出し、時には、エレノアとの『戦略会議』で真剣に議論する。
だが、それがまた、彼女たちの『競争心』を煽る結果になっているようだった。
そんなある日、俺が他の貴族から厄介な依頼を受けた際、三人がそれぞれの得意分野で俺をサポートしてくれるという、奇妙な『共闘』が実現した。
リシアは、光魔法で依頼主の体調を整え、セリナは、剣技で依頼主の護衛を務め、エレノアは、古代の文献を読み解き、依頼の解決策を見つけ出した。
俺は、彼女たちの『チームワーク』に感心しつつも、結果的に俺が『挟み撃ち（クロスファイア）』にされるような状況に陥り、自分の『HP』が削られていくような感覚に陥った。
（最高の『チームワーク』だ。だが、この『チーム』、俺の『精神力』を『削り』に来てるな。これは、もはや『サバイバルゲーム』だ）
